今回は趣向を変えて、打楽器奏者・會田瑞樹さんとのやり取りを書簡形式でお届けします。ぜひ動画で會田さんの演奏を味わいつつお楽しみください。(2021年2月) 會田瑞樹さま 音楽WEBマガジンCheer Up!編集長・三嶋です。すっかりご無沙汰しております。 仙台で會田さんにインタビューさせて頂いたのは2017年のことでした。 あれから4年が過ぎ、仙台でも東日本大震災から十年を迎えます。つい先日は最大震度6強の大地震があり、震災の日のことをまざまざと思い出しました。十年は一区切りではなく、ずっと頭から離れることはなく、自分の根底にいつもあるのだと思い知らされました。 さて、會田さんは2020年、世界中が新型コロナウイルスの影響を受ける中にあっても、変化に柔軟に対応しながら、様々な活動をされて大きな話題を呼びました。 新作アルバム『いつか聞いたうた』は、日本の叙情歌「さくら」「荒城の月」「赤とんぼ」など名曲の数々を日本の作曲家たちが編曲し、會田さんがヴィブラフォンで奏でるという趣旨。 いつ聴いても心に響き、癒されます。老若男女問わず多くの方が楽しめる名盤の誕生ですね。 そして、大人気ライブストリーミング番組「SUPER DOMMUNE」にて、なんと5時間にわたり番組を配信。さらにリトアニアの杉浦千畝記念演奏会では、なんと地元オーケストラとのリモート映像共演。素晴らしいご活躍の数々に胸が熱くなります。 2021年はどんな活動を予定されていますか? いろいろお聞かせいただけると嬉しいです。 これからのますますのご活躍を楽しみにしております。 Cheer Up!編集長 より Cheer Up!編集長 三嶋様 打楽器の會田瑞樹です。いつもお世話になっております。 まずは、先ごろの地震は本当に大変だったと思います。思えば震災十年という今年。 あの日のことはいつも常に頭の片隅にあり、そしてそれにどう向き合うのかを十年考え続け、そして今もなお、剥ぎ取られてしまった断片を探っているような、そんな気持ちが去来しました。 1.「いつか聞いたうた」について 四枚目となるアルバム「いつか聞いたうた」は現在に立つ自分たち、そして過去、未来を見つめ直すアルバムを目指しました。 2020年春、もう一度再出発するためのアルバムを作りたいと思いました。 細川俊夫先生が小さなプレゼントとしてくださった《Sakura》からはじまり、長年親交のある西耕一さんをプロデューサーに迎え、合議を重ねました。 選曲は僕が選んだもの、作曲者自らが選んだものと様々ですが、楽譜が出来上がってくる中、多様な個性とともに、ある一つの方向性が不思議と保たれているように感じました。 今回、宮城県出身の山本菜摘さん、大畑眞さんに作曲を、そしてジャケットのデザインを きむらめぐみさんにお願いできたことも、今まで宮城県について考えてきたことを表明できたように思っています。 宮城県、そして仙台という場所を、僕は生まれてから18年間、過ごしてきたのですが、離れたことで、街の様々な色合いや趣を、心から受け入れることができるようになったと思っています。 是非山本さんや大畑さんの作品、きむらさんのアートワークを通してその点も感じていただけたらと思います。 発表以来、レコード芸術特選盤、河北新報、日本経済新聞推薦、mostly classics副編集長が選ぶ年間ベスト3、サライ2021年3月号推薦盤などなど、多くの方々に手にとっていただき、心から感謝の思いでいっぱいです。 『いつか聞いたうた ヴィブラフォンで奏でる日本の叙情』會田瑞樹 2.2020年の活動について アルバム発売を記念したドミューンでの五時間生放送は初めてのことで緊張しましたが、多くの方々に観て頂けてとても光栄に思っています。 SUPER DOMMUNE 2020/10/27|Three Shells Presents「打楽器百花繚乱 會田瑞樹の世界」 またリトアニア公演では、會田瑞樹作曲《Sutartinés》佐原詩音作曲《Chiune》を映像共演で実現できたことも大きな収穫でした。デジタルを駆使した表現も一つの可能性を見出した思いです。 同時に、いかにライヴが素晴らしいか、それを改めて確信しました。リトアニアには必ず、また訪問し、一緒に音楽をしようと、指揮者のモデスタスや楽団の方々と話しています。 いつか彼らを日本に招くこともできたらと考えています。 4月より延期となっていた東京オペラシティ文化財団B→C會田瑞樹パーカッションリサイタルも、多くの方々のお力に支えられ、仙台、東京で公演を行うことができました。 3.2021年に思う 今年は年明け早々から騒がしい日々が続き、今もなお、気が休まらない方もたくさんいらっしゃると思います。 僕自身も公演が配信に切り替わったケースもありましたが、昨年12月からはじまった、かなっくホールpresents「テアトル図書館へようこそ!」は予定どおり公演を重ね、2月末に千秋楽を迎えます。 劇団ハイリンドの皆様と、僕の作曲と演奏で絵本「あらしのよるに」を芝居仕立てにし、ご来場いただいたお客様もお芝居の音楽に参加する場面を取り入れた試みです。コンサートホールでの演奏と違って、お客様と直にふれあい、終演後はヴィブラフォンに集まってもらい、実際に弾いて体験することもできます。 この活動を通して、音楽がいつも身近にあると感じてもらえたらと心から願っています。 そして音楽家の使命こそ、そのことを伝え続けることにあるのではないかと感じています。 今年は夏に京都と山形でのリサイタル、そして秋にも、かなっくホールでのリサイタルを計画しています。 没後25年を迎える武満徹の傑作《雨の樹》に1年をかけて向き合おうと思っています。 また11月9日には、仙台市宮城野区文化センター室内楽シリーズ Music from Patonaでバルトーク《二台のピアノと打楽器のためのソナタ》を竹内将也さん、ピアノデュオリブラのお二方とご一緒致します。大好きな作品なので今からとても楽しみにしているところです。 僕たちには考え続けることのできる自由があると思っています。 絶えず思考し続けること、そして直面する課題に対して、柔軟でしなやかな精神で向き合っていきたい。そんなことを思っています。 會田瑞樹 『いつか聞いたうた ヴィブラフォンで奏でる日本の叙情』會田瑞樹 Disc 1 春 1.Sakura/細川俊夫(日本古謡) 2.お菓子と娘/森ミドリ(西條八十作詞・橋本国彦作曲) 3.花/水野修孝(武島羽衣作詞・滝廉太郎作曲) 4.荒城の月/山本菜摘(土井晩翠作詞・滝廉太郎作曲) 5.この道/佐原詩音(北原白秋作詞・山田耕筰作曲) 夏 6.ほたるこい/今堀拓也(わらべ歌) 7.われは海の子/佐原詩音(文部省唱歌) 8.てぃんさぐぬ花/吉原一憲(沖縄県民謡) 9.どどさい節/白藤淳一(岩手県雫石町民謡) 10.はないちもんめ-ひらいたひらいた-あんたがたどこさ/国枝春恵(わらべ歌) 11.長谷観世音火伏の虎舞/大畑眞(宮城県登米市民俗芸能) ボーナストラック 12.浜辺の歌1943 /會田瑞樹(林古渓作詞・成田為三作曲) Disc 2 秋 1.残芯の汽車ぽっぽ/山本純ノ介改編(本居長世作詞作曲) 2.無名の歌/木下正道(文部省唱歌) 3.琵琶湖就航の歌/會田瑞樹(小口太郎作詞・吉田千秋作曲) 4.赤とんぼ/薮田翔一(三木露風作詞・山田耕筰作曲) 5.紅葉/會田瑞樹(高野辰之作詞・岡野貞一作曲) 6.揺籠の歌〜夕焼け小焼け/福嶋頼秀(北原白秋作詞・草川信作曲) 冬 7.五木の子守唄/徳永洋明(熊本県球磨郡五木村民謡) 8.ペチカ/清道洋一(北原白秋作詞・山田耕筰作曲) 9.星めぐりの記憶/羽根玲夢(宮沢賢治作詞作曲) 10.ふるさと/権代敦彦(高野辰之作詞・岡野貞一作曲) ※曲名/編曲者(原作) 発売日:2020年11月3日 企画・発売元:スリーシェルズ 規格品番:3SCD-0058 定価:3,056円(税込) 作品サイト https://3scdjrl.shopselect.net/items/34658776 ◆プロフィール 會田瑞樹(打楽器奏者) 1988年宮城県仙台市生まれ。幼少よりヴァイオリンを照井勢子氏に師事し音楽の基礎を学ぶ。 宮城県仙台第二高等学校を経て武蔵野音楽大学大学院修士課程修了。佐々木祥、星律子、吉原すみれ、神谷百子、有賀誠門、藤本隆文の各氏に師事。 2010年、日本現代音楽協会主催:第九回現代音楽演奏コンクール「競楽\」第二位入賞しデビュー。以降独自の企画力を生かしヴィブラフォンリサイタルを重ねる。 ソリストとして東京交響楽団、中国国家交響楽団、リトアニア・聖クリストファー室内合奏団との共演をはじめ、NHK-BSプレミアム「クラシック倶楽部-打楽器百花繚乱-」全国放送、4枚のアルバムは朝日新聞推薦盤、レコード芸術特選盤などを獲得し高い評価を得ている。 2019年には第10回JFC作曲賞入選を得て、作曲家としてもその頭角を現している。 「強い集中力と自己投入、極めて俊敏な身体能力。(國土潤一氏/音楽の友掲載)」 「鮮やかに、本当に鮮やかに音色が疾駆する。(長木誠司氏/レコード芸術掲載)」 「バチさばきが鮮やか。バチを持って生まれてきたのか驚異的。(宮沢昭男氏/しんぶん赤旗掲載)」等々、数多くの音楽評論家からも絶賛を受け続ける會田瑞樹の演奏はヴィブラフォンを中心に自らの身体をも自由自在に使いこなし、「初演魔の異名をとる」(小原篤氏/朝日新聞掲載)新世代の打楽器奏者として常に熱い注目を浴び続けている。 2020年4月より郡山女子大学短期大学部非常勤講師に着任するなど、後進の指導も意欲的に行なっている。 また2020年4月10日より自らのYoutube上で「50日間連続《Portraits in Rhythm》全曲攻略」配信を開始し、5月29日完結。 さらには山形県酒田市土門拳記念館とのコラボレーション事業として写真家土門拳に触発された音楽作品《Ken 〜ヴィブラフォンのあるところ〜》の配信を開始。 10月にはリトアニア:聖クリストファー室内合奏団特別演奏会「杉原千畝への道」において映像によるソリスト主演、並びに自らが作曲を手掛けた《Sutartinés》佐原詩音作曲《Chiune》世界初演の模様がリトアニア国営放送をはじめ全世界に中継され絶賛を博した。 その縦横無尽に渡る活動をSUPER DOMMUNE/Three Shells Presents「打楽器百花繚乱 會田瑞樹の世界」と題し五時間に渡る生放送が行われ、多くの反響を得た。 11月、自身4枚目となるニューアルバム「いつか聞いたうた ヴィブラフォンで奏でる日本の叙情」をリリース。2度目となるレコード芸術特選盤を獲得。 東京オペラシティ文化財団主催B→C會田瑞樹パーカッションリサイタルは仙台/東京二都市で開催され大絶賛を博した。 その模様はNHK-FM「現代の音楽」において二週に渡り放送された。 2020年末、初演作品は300作品に到達した。 新時代に向けた意欲的な活動を継続して行なっている。 會田瑞樹 Official Website https://mizukiaita.tabigeinin.com/ https://twitter.com/marimperc https://www.instagram.com/mizuki_aita/ YouTube https://www.youtube.com/c/%E6%9C%83%E7%94%B0%E7%91%9E%E6%A8%B9 <Cheer Up!関連リンク> 特集:Cheer Up! CHRISTMAS クリスマスコラム寄稿(2019年) http://www.cheerup777.com/xmas2019/xmas2019-1.html 會田瑞樹インタビュー(2017年) http://www.cheerup777.com/aitamizuki1.html |