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唯一無二の世界を創り出し、長きにわたり人気のシンガーソングライター青木孝明さん。このたび10年ぶり7作目のアルバム『声』を発表されました。
インスト、カバー、セルフカバーを含む充実の11曲は美しいサウンドと、これまた唯一無二の存在感を持つ歌声とでたちまちアルバムの世界に惹き込まれます。そして、「コロナ禍で不安な気持ちのこの時期だからこそ、このアルバムに出会えて良かった」と何度も味わいたくなる歌の数々。
このアルバム、そして青木孝明というアーティストの魅力に迫りたくて沢山の質問にお答えいただきました。また今回のアルバムに参加されているコーノカオルさん、西村哲也さんからコメントを頂きました。(2022年1月)

インタビュー コメント


---今回は10年ぶり7作目のソロアルバムになりますね。
このアルバムを作ろうということになったきっかけなど教えて頂けますか?


青木:2012年に前作『さようなら、夢』を作った後、セルフカバーや新曲を含むベスト『タイムトラベラー』を作りました。
自分の中では結構区切りがついた感じになり、その後のリリースはBAND EXPOやZABAKARAQUJILAOKINOXなどのバンドでの作品になりました。
それらの作品や最近のザバダックでの活動が刺激になり、今までとは違う感じのソロアルバムが作りたいと思ったのがきっかけです。

---制作にはどのぐらいかかったのでしょうか?

青木:約2年間に渡って空いてる時間を見つけては作りました。 5作目の『One Day』以降のソロアルバムは短期間で集中的に作るのではなく、こういうやり方で作っています。
楽器はこれまでの作品より少なめなので、歌を録音するのに時間をかけた感じですね。

---今回のアルバムにはセルフカバー、ザバダックやコーノカオルさんのカバーも収録されています。その経緯についてはいかがですか?

青木:ここ5年間位、ザバダックにギターとボーカルで参加しています。
最初の頃はいっぱいいっぱいでしたが、最近はだいぶいい感じで歌えるようになってきたように思います。
それでも難しい曲が多いので今でもいっぱいいっぱいに変わりはありませんが。
そんな経緯もあり、これまで歌ってきた中でもお気に入りの曲を今回のアルバムに収録しようと心に決めていました。

BAND EXPOは元セロファン、タマゴウォルズのコーノカオル君、グランドファザーズ、ソロで活動している西村哲也さんと2013年から5年間位やっていたバンドです。
ここではコーノ君の曲を歌うことがあり、やはり大きな刺激になったので、彼の曲も新作には収録することにしたのです。

---ここからはアルバムの曲ごとにお伺いします。
◆1.Bruno
---アルバムの冒頭はインスト。哀愁漂う美しい曲ですね。旋律の音色がまた美しくて心惹かれます。


青木:これは尊敬する1960〜70年代に活躍したイタリアの映画音楽家、ブルーノ・ニコライへのオマージュです。
旋律は一部音源ですが、ハープシコード、ピアノ、アナログシンセ、12弦ギターなどで弾いています。

◆2.僕は待っている
---このコロナ禍にぴったりなイメージで、今だからこそ余計沁みてきます。
西村哲也さんが演奏されている Pedal SteelやElectric Sitarが効果的ですね。西村さんはどのようなお人柄ですか?


青木:そうかもしれませんね。実際はコロナ禍以前に作った歌ですが、今の世情には合っていますね。闇の中にいるけれど薄日が射してくるようなイメージですね。
西村さんは根っからのアーティストでとてもピュアな人です。

◆3.休まない翼
---青木さんの歌声は、目の前に鮮やかな景色や歌の場面がパッと浮かんできます。しなやかな力強さというか…。
この曲はZABADAKのカバーとのこと。とてもいい歌ですね。


青木:「休まない翼」は生命の強さと儚さが歌われていると思います。
25年位前、初めて演奏した時はベースを弾いていたと思いますが、凄くいい曲だなと思いました。
原曲のキーで録音したのですが、ちょっと苦し気に聴こえたので1音下げて録音し直しました。

◆4.僕は何も惜しまない
---何かと不安な日々の続くなか、普遍的な思いを感じてなんだかホッと気持ちが落ち着きます。ベースの音色もいいですよね。
後半の篠原太郎さんのコーラスが素敵ですね!篠原さんはどのような方ですか?


青木:「僕は何も惜しまない」は25年位前の曲で、通常のアルバムに収録しませんでした。
ライブでは以前、篠原太郎君に掛け合いの部分を歌ってもらっていたのを思い出して、今回は歌ってもらいました。
彼の声が大好きです。
篠原君は才能豊かな人であるのは勿論ですが、集中力が半端ではないです。
あんなに集中力が凄い人を他に知りません。
ベースはフェンダーのプレシジョンベースのフレットレスでずっと気に入っていてもう40年近く弾いています。

◆5.旅立ち
◆6.声
---この2曲は続けて聴いて喪失感を強く感じて、聴いていて悲しくなって…。でも青木さんの歌声で救いを感じるのが不思議だなと感じています。アルバムタイトル『声』に込めた思いについても伺えますでしょうか。


青木:そうですね。
この2曲は喪失感、悲しみを歌っていますね。
「旅立ち」は先立たれた人の気持ちを歌っています。
「声」は踏み留まらせたい気持ちのような感じでしょうか。

タイトルの「声」は心の中に聞こえる声です。
僕には浅い夢やデジャヴなどの際に聞こえてくるような声があります。
それは自分の心の声であるのは勿論ですが、自分以外の人の声も聞こえてくるような気がするのです。
それはもしかしたらみず知らぬ時代の人の声かもしれないし、もしかしたらご先祖様の声かもしれない。
絶望感に苛まれる時に、そんな声に思いを馳せて、自分は自分一人の存在ではなく、いろんな時代からずっと繋がっている存在だと考えられたら、何かしら救いがあるような気がして、この歌を作り、アルバムのタイトル曲にしました。

◆7.ライラ
---哀しい曲のあとになんだかほっこりします。悩んでいる女性を思いやるような?優しい歌ですよね。
ピアノが軽やかで素敵です。ピアノで参加の伊藤隆博さんはどのような方ですか?ご紹介お願いいたします。


青木:暗い曲が続きましたが(笑)、ここから少し気持ちが上がってくればいいなと思います。
ライラは女性の名前ですが、女性に限らず、今、学校などで苦しんでいる若者のことを思って作りました。
今、苦しくてもそれは一時的なものだと言いたいですね。

伊藤隆博君は天才だと思います。
毎回アルバムに参加してもらって、いつも素敵な彩りを付けてもらっています。

◆8.邂逅
---ここまでアルバムを聴いて、アルバム全体にストーリーを感じましたがいかがですか。ドラマティックなアルバムだなと思っております。
コーラスは篠原太郎さん、若林マリ子さん。若林さんのご紹介もお願いいたします。


青木:ありがとうございます。
凄く流れを気にして作ったので嬉しいです。
自分で言うのもなんですが、大団円って感じですかね(笑)。
自分が楽器を弾かない曲は初めてで新鮮でした。

若林マリ子さんは1980年代初頭にデビューされている、シンガーソングライターで、大先輩です。
今、彼女の新しいソロアルバムにサウンドプロデュースという形で関わっています。
春には配信で新しい曲が聴けるようになると思います。
機会がありましたら聴いてください。

◆9.流星塵
---コーノカオルさんが作詞作曲の壮大な歌。青木さんから見て、コーノさんはどんな方ですか?


青木:この曲はコーノ君の傑作ですね。
初めて聴いた時、なんていい曲を作る人なんだろうと感激しました。
嫉妬するくらいの才能の持ち主です。

◆10.明日(Instrumental)
---青木さん作曲のインスト。あったかいですね。曲を作るのには時間はかかるほうですか?タイトルはあとで付けることが多いのでしょうか。


青木:これは「明日」という曲を弾き語りでやろうとして間奏を色々考えながら弾いているうちに色々アイデアが浮かび、発展して出来てしまった曲なので、明日(Instrumental)というタイトルにしました。

曲を作るのにあまり時間はかけませんね。
一番大事なのは思いついた時にすぐ録音できるかどうかだと思います。
今はスマホがあるので、そういう意味で楽になりました。
インストは歌詞がないから、タイトル後回しになることは多いかも知れません。

◆11.All Around The World in A Day
---高音の声が美しい曲。本当にあったかくて優しい歌ばかり。こういう時期だから尚のこと、多くの方に届けたいアルバムだと感じています。


青木:これも古い曲のセルフカバーです。
作った当初は付き合い始めた相手が自分の知らない時間を過ごしていること、その時間に対して嫉妬するような歌でした。
相手の事を理解するのは世界一周する位果気が遠くなることだみたいな...。

今回は自分自身を含めて人の心の内面を知ろうとする歌が多かったので、人の内面を理解しようとする事は、同様に世界一周する位果てのいないことだなと考えると今回のアルバムのラストに相応しいかなと思っています。

---青木さんはソロ活動のほか、長年様々なバンドやアーティストのライブや録音に参加されたり幅広くご活躍されています。最近はソロのほかどんな活動をされているかご紹介いただけますか?

青木:ここ2年、コロナの影響も有り、ライブの本数自体は減っていますが。
ここ5年間位、ザバダックにギターとボーカルで参加しています。
その繋がりでZABAKARAQUJILAOKINOXというバンドでも活動しています。
サポートは、綿内克幸君や若林マリ子さんのライブ、レコーディングなどをしています。


---ここからは青木さんの音楽キャリアについてお伺いします。
子供のころ、音楽を意識したきっかけや、よく聴いていた音楽などありますか?


青木:昨年、父が亡くなったのですが、父は音楽が好きで幼少の頃、彼の好きな洋楽をよく聴かされていました。
セルジオメンデス&ブラジル66やフィフスディメンション(あとクラシックではワグナーとかも)とか聴くと今でも幼年期にフラッシュバックします。

---楽器はいつ頃から始めたのですか?

青木:3歳から9歳までバイオリンを習ってました。
バイオリンは難しくて、最後まで上手く弾けなかった。
ギターを13歳で始めましたが、1日ですぐ弾けるようになり、なんて簡単な楽器なんだと思って感激しました。

---学生時代、よく聴いたジャンルやアーティスト、影響を受けたと思うアーティストについて教えていただけますか?

青木:ギターを始めるきっかけは井上陽水で、初めて弾いた曲は「Good Good Bye」でした。
後にこの曲でリードギターを弾いている徳武弘文さんと共演した時は感激しました。

その後はビートルズから洋楽へ導かれましたが、自分でも曲を作り始めるきっかけはイギリスのパンク、ニューウェーブの影響ですね。
これなら自分でも作れるかも知れないと思いました。

---バンド活動はいつ頃から始められたのでしょうか。

青木:高校生くらいからやっていましたが、どちらかというと部屋で曲やデモテープを作るのに夢中になっていましたね。
大学生くらいからは色々な人とやりましたが、なかなか上手くいかず、20代も後半になり、このままでは駄目だと思い、一人でやる事に決めました。

---プロになったきっかけについて教えて頂けますか?

青木:一人でやる事に決めて、自主制作盤のCDを作って、そのデモをムーンライダーズの鈴木博文さんが主催しているメトロトロン・レコードに送りました。
その後、博文さんがライブを見に来てくださって、次のアルバムを作らせていただく事になりました。
そのアルバムを出してからは主にメトロトロン関係のアーティストのライブや録音に呼ばれるようになりました。
きっかけはそんな感じです。

---青木さんのプライベートについても少々お伺いしたいです。ご趣味、好きな映画や本などあれば教えて頂けますか?

青木:趣味は読書ですね。日本史が好きです。違う時代に生きていた人達が何を考え、暮らしていたかを想像するのが好きです。
映画は昔ほど観ませんが、1960〜70年代のヨーロッパの映画や日本のホームドラマなどが好きです。

---このWEBマガジンでは、ご登場下さる方の「Cheer Up!ミュージック」を伺っております。青木さんはいかがですか?

青木:ぱっと思い浮かんだ元気になる曲はSly & The Family Stoneの「I Want To Take You Higher」ですね。
勿論、昔から好きですが、今思い浮かぶのはこないだ、サマーオブソウルを観たからですね。
訳もなく、泣けてきて、力が湧いてくる。

---今後の夢や2022年の活動予定など教えて頂けますか?

青木:もっといい曲作りたい。もっと歌も演奏も上手くなりたい。
もっと沢山の人に聴いてもらいたい。
2022年は3月にワンマンがありますが、もう一回くらいワンマンやりたい。
といったところです。

♪Live情報(変更の可能性があるためご予約の際はサイトをご確認下さい)
2022年3月26日(土)東京 中目黒 Cafe & Live spot FJ's ワンマン
open 18:00 start 18:30
前売¥3000+ドリンク、当日¥3500+ドリンク
青木孝明 Vocal,Guitar & Piano 伊藤隆博 Piano & Trombone
Cafe & Live spot FJ's
東京都目黒区中目黒5-1-20
03-6303-1214
http://fjslive.com/

---どうもありがとうございました。今後の作品もとても楽しみにしております。




『声』青木孝明

1.Bruno
2.僕は待っている
3.休まない翼
4.僕は何も惜しまない
5.旅立ち
6.声
7.ライラ
8.邂逅
9.流星塵/BAND EXPO
10.明日(Instrumental)
11.All Around The World in A Day

発売日:2022年1月26日
レーベル:TOKYO MOR
規格番号:MOR6956

Produced & Mixed by 篠原太郎、青木孝明

Masterd by 中村宗一郎(Peace Music)
Designed by オオシマカナ
Recorded at Studio Wednesday,Heron Studio,Alternative Cafe (2019年6月〜2021年10月)
A&R by 田中啓和(TOKYO MOR)

青木孝明 Vocal,Guitar,Bass Guitar,Percussion & Keyboads

Musicians
西村哲也 Pedal Steel(2),Electric Sitar(2,9),Mandolin(7),Harmonica(7),Electric Guitar(9)
伊藤隆博 Piano(3,7,8,9,11)
篠原太郎 Chorus(4,7,8)
若林マリ子 Chorus(8)
コーノカオル Bass(9)










◆青木孝明プロフィール:

1963年4月5日、東京都生まれ。1980年代中頃より自作曲の宅録やライブハウスでの音楽活動を始める。
1992年、それまでの作品をまとめた最初の自主制作盤“L/C”を発表する(2000年、メトロトロン・レコードより再発)。
このアルバムがきっかけになり、1993年、ムーンライダーズの鈴木博文が主催するメトロトロン・レコードより2ndアルバム“My Friend In The Sky”を発表。
その後ギター、ベース、ヴォーカルなどでThe Suzuki、あがた森魚、青山陽一、Zabadak、綿内克幸、若林マリ子などのライヴ、レコーディングに参加。
サウンドプロデュースや楽曲提供なども続けながら1996年、メトロトロンより3rdアルバム“Melody Circle”、2000年には4thアルバム“Phase Four”を発表。
2004年には5th アルバム“ONE DAY”(円盤)、2012年には6th アルバム"さようなら、夢"(ギター・エキスポ)を発表。
2014年にはレーベルの枠を超え、それまでの22年間の作品より選ばれたベスト盤“アンソロジー 1992〜2014 タイムトラベラー”を発表。
2013年には西村哲也(グランドファーザーズ)、河野薫(セロファン)らとBAND EXPOを結成。2016年アルバム発売。
最初の自主製作盤から数えて30年目の2022年、7枚目の“声”を発表する。


青木孝明 Melody Circle
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