ジャズピアニストの林祐市さんが新しいトリオでアルバムを発表されました。メンバーは出宮寛之さん(Bass)、木村紘(Drums)さんです。
最近ではドラマーの山下佳孝さんとのユニット「loopfactor」でも活動中の林さん。
今回のアルバム『Song For Tomorrow』は、なんといっても美しいメロディーが印象的で、その時の気持ちに寄り添ってくれる様々な曲が収録されています。
林さんへのインタビュー、そして木村紘さんからもアルバムリリースに際してのコメントを頂きました。2023年7月にはこのトリオでアルバム発売記念ツアーを行うとのこと!ぜひお近くの方は足を運んで頂きたいです。(2023年6月)

---林祐市トリオは2019年に結成されたそうですね。
このメンバーで集まった経緯について教えて頂けますか?


林:長く活動していた自身のピアノトリオ「TRISPCAE」を解散して、新しい事に挑戦しようと試行錯誤していた時期に、「QUIN’ KRANTZ」のリズムセクションとして一緒に活動している2人と、ピアノトリオをやってみたらどうなるか?というアイデアが浮かんできました。
それで、2019年の10月に初ライブを行いました。この3人だけで演奏した時に、今まで自分が経験した事のない新たな音楽の拡がりを感じましたので、そのままレギュラートリオとして活動していく事にしました。

---今回アルバムを作ることになったいきさつはいかがですか?
レコーディングには何日かかったのでしょう。


林:活動当初はTRISPACEでやっていたオリジナル曲を演奏していたんですが、このメンバーと一緒にライブを重ねる中で、新しいオリジナル曲がどんどんできてきました。2022年に単独でホールコンサートを行ったんですが、全曲新しいオリジナル曲でセットリストを組むことができました。このトリオならではの音楽が完成された事を感じ、今が作品に残す絶好のタイミングだと思いました。
それに加え、トリオでいろいろなところに演奏に行くのに、名刺代わりになる作品が欲しいと思っていた事も動機になってます。

レコーディングは迷いなく本当にスムーズに進みました。2日間の予定でしたが、ほぼ1日で録り終わりました。

---レコ―ディングはどんな雰囲気でしたか?

林:とてもリラックスして、楽しくポジティブな雰囲気だったと思います。
エンジニアの長江さん、調律の三方さんとも長く一緒にやっていて信頼していますので、なんの障害もなく美しい音に包まれる様な充実した時間でした。
トリオは、誰かが出過ぎるわけでもなく引っ込むわけでもなく、わきあいあいとしていて、結果、気持ちの良い音が録れたと思っています。




---林さんからみて、出宮さん、木村さんはどのようなお人柄かご紹介をお願いいたします。

林:2人とも僕より随分若いですが、自らリーダーとしても活動し、自分の考えをしっかり持って行動していて尊敬しています。
出宮くんは、天性のコミュニケーション能力の持ち主で、その場にいるだけで周りを明るくする力のある人だと思います。
木村くんは、素直でまっすぐな人柄で、音楽にも人間にも情熱を持って接する人だと感じています。






---ここからは、曲ごとにお伺いいたします。

1 Song for Tomorrow
---明るく爽やかで、なんという美しいメロディ!気持ちが洗われるようでした。一気にアルバムの世界にひきこまれました。
タイトなドラム、ベースソロのかっこ良さ、林祐市トリオの魅力の凝縮された曲ですね。
こういうメロディはいったい、どういうときに思いつくんだろうと思いました。


林:ありがとうございます。この曲を作った経緯は忘れてしまいましたが、僕の場合、曲を作るぞと思ってピアノに向かってもなかなか良いメロディーが出てこない事が多いんです。関係のない練習をしていたらふと出てきたり、散歩していたり車を運転していたら思いつくとか、日常的に生活してる中で自然と溢れてくるメロディーの方がしっくりくると感じてます。
あと、素晴らしい音楽や芸術に触れた時に、その刺激で曲ができる時もたまにありますね。

2 睡蓮
---一曲の中でさまざまな表情を見せるような…。ライナーによると「泥の中でも凛と美しく咲く睡蓮の花の様に強く生きていこうという思いを曲にした」とのこと。
インプロビゼーションがスリリングですよね!高揚感が味わえて、ライブでも聴いてみたいです。


林:この曲は、シンプルなメロディーのモチーフが展開していくんですが、コード進行は不思議な感じでちょっとふわっとしているんです。それを各々が意思を持った即興演奏で拡げていく感じが、ライナーにも書かせていただいた様に、泥の中でも凛と美しく咲く睡蓮の花の様に感じました。ライブでは盛り上がる曲ですね!

3 Warm Snow
---優しくてあったかいワルツ。ピアノとベースのユニゾンのところは林さんからの提案なのですか?
このアルバムや、このトリオのアレンジについてはどうやって決めていますか?レコーディング時にその場で話し合うのでしょうか。


林:ピアノとベースのユニゾンは僕がお願いしました。曲やアレンジは基本的に僕が持っていき、それに対してメンバーのセンスで応えてもらうといった作り方です。いつも要望以上のものが返ってきますので、感謝しています。時にはどうしたら良いか相談もしますよ。レコーディングに向けたリハーサルはそういった話し合いを中心に進めました。

4 Human Origins
---いままで林さんの様々な音源を聴かせていただき、ちょっと珍しい曲調なのではと思いました。

林:そうですね、珍しいかもしれません。メンバーには猿になった様に野性的に演奏しようと言いました(笑)。個人的に結構気に入ってます。

5 Shine
---いろんな方に言われると思うのですが、林さんの曲は景色、風景、色彩が思い浮かびますよね。
このアルバム全体に希望を感じさせる曲が多くて、癒されると同時に元気が出ます。
キラキラしたピアノの音色が心に沁みます。


林:ありがとうございます。キラキラした曲に、一部ドロドロした暗いパートが入ってるんですが、暗闇があるからこそ光が引き立つ、そんな意識で演奏してます。

6 Flash
---アップテンポのサンバのリズムの曲。キメの部分面白いですね。
これもライブで聴いてみたくなります。とても気持ちがアガる曲!


林:これもライブ映えしますね。キメがなかなかトリッキーで引っ掛かりそうになるところがポイントですね。
その後の解放感が演奏していて楽しいです。

7 Prayer
---ライナーによると「人はなぜ争うのか?祈りを捧げる思いを表現」なさったとのこと。敬虔な気持ちになります。北欧ジャズスタイルの曲とのことですが、いまひとつ「北欧ジャズスタイル」とはどういうものか分かっていなくて。教えて頂いてもよろしいですか?

林:北欧ジャズは、アメリカのブルースではなく、北欧の民謡をルーツにする哀愁あるシンプルなメロディー、透明感あるハーモニー、クラシカルな要素などが特徴としてあげられると思いますね。

8 Next Step
---アップテンポで、うねるようなウォーキングベースが印象的。前進していくような・・・ほんとにこのアルバム通して前向きですよね。元気が届きます。

林:ありがとうございます。この曲は、ストレートアヘッドなジャズですね。突き進んで、自分の道を切り開いて行きたいものです。


---林さんの活動として、ドラマー山下佳孝さんとのユニット「loopfactor」の近況はいかがですか。

林:6月に6曲入りのEPをストリーミング配信しました。最近は、ライブ活動も始めて世の中に提示する段階に来た感じがしてます。新しい事を始めるのは労力が入りますが楽しいです。これからですね。

『loopfactor EP』
https://big-up.style/OqWfC0qAIS

---2023年のご予定、今後の目標等教えて頂けますか?

林祐市トリオは、7月からアルバム発売ツアーに入り、9月末まで続きます。まずはそれを成功させたいですね。
今後も今まで同様、良い音楽を作り、良い仲間と、良いファンの皆さんと、良い空間が作れる様に精進したいと思います。

---どうもありがとうございました。本当に心に沁みるこのアルバム、ぜひ多くの方に聴いていただきたいです。


◆木村紘 コメント

このトリオは2019年の暮れに始動して、まさにコロナ禍と共に歩んできました。林さんの音楽を3人で丁寧に紡いできて、それをコロナ禍の終わりがようやく見えてきたタイミングで音源として送り出せることはとても嬉しいです。
ライブではまた違ったトリオの表情がありますのでそれにもいつか触れて欲しいなと思います。




Song For Tomorrow / 林祐市トリオ

1 Song for Tomorrow
2 睡蓮
3 Warm Snow
4 Human Origins
5 Shine
6 Flash
7 Prayer
8 Next Step

発売日:2023年6月10日
価格:¥3,300(税込)
規格品番:ffpj-0005
レーベル: feel free products

林祐市(Piano)
出宮寛之(Bass)
木村紘(Drums)





【作品情報】
ビル・エバンス、キース・ジャレット、ブラッド・メルドーらによって培われてきた叙情派ジャズピアノトリオの流れを受け継ぎながらも、新たな世界を開拓する林祐市トリオ。待望のアルバム完成!

北欧系ピアノトリオTRISPACEのリーダーとして長きに渡り活動してきたピアニストで作曲家の林祐市を中心に、ベーシスト出宮寛之、ドラマー木村紘といった若手実力派メンバーと共に、2019年に結成。これまで4年間の活動の中で積み重ねられて来た信頼関係が、このトリオ独自のオリジナリティーとして結実した。全曲オリジナルで彩られた今作は、透明感溢れるロマンティックなメロディーと豊潤なハーモニーの中、随所に散りばめられたエッジの効いたリズムを起爆剤として、高揚感の渦を生み出している。
全国ツアーの他、2022年には単独ホールコンサートを成功させる等、活躍の幅を拡大しているトリオの最新の音をお見逃しなく!

『Song For Tomorrow』特設サイト
販売サイト



【最新Live Information】

林祐市トリオ アルバム発売記念ツアー

2023/7/14 名古屋 The Wiz
2023/7/15 三重 Bran
2023/7/16 東京 Velera
2023/8/30 岡山 Cafe SOHO
2023/8/31 大阪 Jazz On Top ActV
2023/9/1 名古屋 jazz inn LOVELY
2023/9/29 岐阜 SAKURA
2023/9/30 TBA

詳細はこちらを随時ご確認下さい。




◆林祐市 プロフィール

5歳からピアノを始め、大学在学中から演奏活動を開始。
2008年に自身のピアノトリオTRISPACEを結成し、11年間の活動の中で、スウェーデン録音を含むアルバム4作品をリリース。日本国内のみならずイタリアでもツアーを行う。
2019年には新たなトリオを結成し、林祐市Trioとして精力的に活動し、2023年にはオリジナルアルバムをリリースした。
その他、QUIN’ KRANTZ、loopfactor等、様々なバンドに所属し、全国ツアーやアルバムリリースをしている。
2016年からは、名古屋芸術大学で教壇に立ち、後進の育成にも注力している。
叙情派と評され、透明感のある美しい音色と、繊細かつ力強い演奏は聴く者の心に響き渡る。

林祐市 Official Web Site
http://yuichihayashi.com/
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https://twitter.com/yuichi_piano/
Instagram
https://instagram.com/yuichi_piano/
YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/user/feelfreeproducts




◆木村紘 プロフィール

木村紘(きむらひろ) Drums 1988年 兵庫県明石市生まれ。12歳のときドラムを始め、中学、高校では吹奏楽部で打楽器を担当する。2007年洗足学園音楽大学に入学し上京、東京、横浜周辺でジャズを演奏し始める。ドラムを大坂昌彦氏に師事する。2011年洗足音楽大学を主席で卒業し、アメリカのバークリー音楽大学の奨学金を得て留学。DrumsをRalph Peterson、アンサンブルをHal Crookに師事。2014年3月にはワシントンDCの全米桜祭りに小林香織バンド、曽根麻央バンドとして出演。2014年5月に帰国し、東京、関西 の両方で活動を開始した。ピアニスト栗林すみれのアルバム3作、トランペッター、ピアニストの曽根麻央のメジャーデビューアルバム、名古屋のバンドQuin’ Krantzをはじめ多数のレコーディングに参加。 現在は自身のリーダーバンドをはじめ、曽根麻央バンド、駒野逸美カルテット、Quin’ Krantz、山本玲子Square Pyramid、藤川幸恵Trioなど様々なバンドに所属。 2021年にファーストアルバム“TREES”を発表した。

木村紘 Official Web Site
https://ameblo.jp/pasokimura/
Twitter
https://twitter.com/kimpaso
Instagram
https://www.instagram.com/hirokimuradrum/
YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC12qKXA_jWVo3BghkfbiDlw




◆出宮寛之 プロフィール

1985年神戸市生まれ。
13歳からエレキベースを始め、19歳の時ウッドベースに転向する。
大阪音楽大学JAZZ科卒業。 在学中は木村知之氏に師事。
20歳より本格的にジャズベーシストとしての活動を日本全国を初め海外では韓国、スペイン、またTVなどでも出演を果たす。
2012年に金沢ジャズコンペティションで優勝、平光広太郎トリオ、クインクランツなど様々なバンドでCDをリリースし全国ツアーも行なっている。黒田卓也、広瀬未来、竹下清、グレンザレスキー、宮川純、大坂昌彦、など海外、日本国内の大勢のミュージシャンとの共演を果たし活躍中。

出宮寛之 Official Web Site
https://demiyahiroyuki.wordpress.com/
Instagram
https://www.instagram.com/hiroyukidemiya/
Facebook
https://www.facebook.com/hiroyuki.demiya/


<Cheer Up!関連リンク>

loopfactor「duality」インタビュー(2022年)
http://www.cheerup777.com/2022loopfactor.html
特集:Cheer Up!MUSIC 2020(2020年)
http://www.cheerup777.com/2020cheerup.html
特集:Selim Slive Elementz 私の好きなマイルス(2019年)
http://www.cheerup777.com/sse2019/selim2019-6.html
TRISPACE『The Circle』インタビュー(2018年)
http://www.cheerup777.com/trispace1.html
QUIN' KRANTZ(クインクランツ)インタビュー(2018年)
http://www.cheerup777.com/quinkrantz.html
特集「あなたにとってのCheer Up!な音楽教えて下さい」(2014年)
http://www.cheerup777.com/cheer/hayashi.html



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