1999年にデビューし、話題を呼んだユニットSuitcase Rhodes (スーツケースローズ)。 高見優子さん(Vocal)、現在レコーディングエンジニアとして大活躍中の山根アツシさんの二人組。 高見さんのキュートな歌声、ジャンルに拘らない凝ったサウンドが20年ぶりに帰ってきた。 アナログレコード『quelque part』だ。既に各種配信サイトにて配信も開始されている。 「当時のファンに新作を届けたい」と語る山根さんに、本作について伺った。(2023年11月) 今なぜ新作を出そうと思ったのだろうか? 山根:2004年に活動を終えたのですが、後半はイベントとライブが中心で作品の制作という感じでは無く。なんとなく、自分のしたい事とは違う形で終えたんですよね、最後はあんまり良い感じの終了ではなくて。 それが気がかりではずっとあったのですが、なかなかタイミングがあわず。その間に曲の断片も書いたりしてもしていたのですが。 今回、実は自分のアナログレコードの仕事の関係でアビーロードスタジオに行って現場をみたいというのがありまして。 普通にブックキングしてもなかなか厳しい。実は20年前にリリースした楽曲がイギリスの放送局でずっと使われ続けているので、そのユニットの新曲をビートルズのエンジニアのマイルスに仕上げてもらおうというのが、そもそもの動機でした。20年ぶりに当時の楽曲を聴き直すと拙いなりにもよく出来てるなと思い。 当時のテイストも残しつつ、今の自分がしたい楽曲を作ろう。方法も当時の方法でやるという拘りでほとんどのパートを生楽器で作りそれらを加工してオケをつくり、歌も録音していきました。 仕事ではきちんとしたスタジオがありますが、録音も自宅中心にあえてして海外のインディーぽく。 録音自体は1週間くらいで終えていました。ほんと限られた時間で制作し、トラックダウンはロンドンへ旅立つ前日くらいで DropBoxで送ってアビーロードスタジオでゆっくり聴いたくらい。 本作はDolby Atmosでのリリースとのこと。音響に明るくない筆者にも理解できるよう、山根さんにかみ砕いて教えて頂いた。 山根:Dolby Atmosは今、配信音源の新しい形で Appleや Amazonなどで聴ける立体音響のフォーマットです。 追加でお金を払わなくてもリスナーは没入感のある音場で楽しめるので、対応音源は増えてきています。 映画とかでは一般的な北半球型の円形のドームの中で音がなっている状態です。音が後ろにも上からも聞こえてくる感じです。 例えば、日本ではユーザーの多い iPhoneと AirPodの環境で配信で聴いていると対応音源は自動的にステレオでなくAtmos音源で聴いています。 今回の楽曲は Atmos前提でアレンジや録音をした、日本ではまだ少ない作品ですね。 海外では実は Atmos音源でのリリースはスタンダードになってきています。 配信音源は登録されると何年も残りますし、何年か後にその時の最新の音楽と並んで聴かれた時に古びて聞こえないようにしないとなとは思います。今回はそこでAtmosにしています。 今の流行の音楽と違い、今回のは楽曲的にボーカルのエコーとか、アコギの響きが大事だったりするので、その意味でもフォーマットとして合っていると思います。奥行きがある音になっています。 因みに Mac Bookなどのパソコンの内蔵スピーカーでも立体感は楽しめますので是非聴いていただければと思います。生の弦の感じも奥行きがあると思います。 音楽は今後はパッケージはアナログレコード、配信は Atmosの形が一般的になると思います。 今回、Suitcase Rhodesの1stアルバム『pop music for pop people.』(2000年)も2023年リマスター版として配信が始まった。 そもそもSuitcase Rhodesの2人の出会いはどのようなものだったのだろうか? 山根:そもそもは大学生の友人の紹介で、 「suitcae rhodes」の前身のガールズバンド「Marbles」という形で神戸で活動していました。 そのバンドのベーシストが抜けたので私が加入する形で色々とプロデュース的な事をしたのがきっかけです。 色々とメーカーからも注目されだして東京に出ても活動したいとう高見と僕とその他のメンバーに分かれた形ですね。 僕だけが先に東京に来てて色々と地盤を作った後に合流してユニットとしてスタートしました。 Suitcase Rhodesのサウンドは、フレンチエレクトロかと思えば、日本語のネオアコテイストもあったり、とにかく聴いていて心地良いのが大きな魅力。どのように方向性を決めていったのだろうか。 山根:ボーカルの高見の声を活かそうというのが大前提にあり、そこから楽曲の方向性は考えます。 高見が日本語、英語、フランス語で歌詞が書けるのも活かしていこうというのもあります。 バックボーンにある音楽が雑多なので、その中でメロに合いそうな方向で最初は作っていたのですが後半は僕の方向性ありきで楽曲は考えていってます。普通のようで普通でない、少しひねた所に着地させようとは考えて作っています。上手い演奏やこなれた感じでは無いところで良い感じのヘタウマ感の上でという。 気になるのは、今後もSuitcase Rhodesの新作は聴けるのか?ということ。 そして当時のファンへのメッセージも聞かせていただいた。 山根:今回、凄く久しぶりに曲を書いて、最初は正直、勘を取り戻せ得てなかったのですが、やっていくうちに非常に楽しくなったので、定期的にまたリリースしていきたいですね。凝り性なので色々と大変ですが。 実は20年間、「新作を待っていました」とか、当時のファンの方からの嬉しいDMを貰えたりしています。かなり、ブランクが空いてしまったのですが、当時のファンには是非、今回の作品が届いてほしいです。 活動最後の方で今回の作品のような楽曲を作り届けたかったですから。また未だに好きで当時の作品を聴いて頂いている方にはホントに感謝しています。 どうやって新作を出した事を伝えたら良いかは悩ましいですが、今回のこのようなインタビューは非常に嬉しいです。 また、今の J-POPなどとは違う所にいる楽曲ですので、今の世代の新しい方にも是非聴いて、好きになって頂ければと思います。 『quelque part』Suitcase Rhodes A面 quelque part B面 fancy you 発売日:2023年10月29日 レーベル:Altphonic Record 規格品番:ALT1107 価格:1,760円(税込) ディスクユニオンにて発売中。 取扱い店舗一覧 ROCK in TOKYO(渋谷)/お茶の水駅前店/下北沢店 神保町店/吉祥寺店/中野店/立川店/町田店 池袋店/高田馬場店/千葉店/柏店/北浦和店 大宮店/横浜西口店/横浜関内店/大阪店/名古屋店 ディスクユニオン(オンライン) https://diskunion.net/jp/ct/detail/1008746924 大手CDショップは11月29日〜 個人店舗は随時販売開始 ◆SuitcaeRhodes プロフィール 1999年 ボーカル高見優子とコンポーザーアレンジャーで近年は多数のメジャーアーティストを手がけるエンジニアでもある山根アツシのユニットとしてデビュー。ファーストシングル「日々の泡」は当時の外資系レコードショップを中心に売り上げチャート 1 位を獲得。その後、渋谷公会堂等のホールクラスのライブツアーを敢行。フランス語歌詞のエキゾチックな楽曲のセカンシングル「異邦人」を続けてリリースすると、前作に引き続きレコードショップのチャートを独占、当時のアフター渋谷系の流れにのり、各社 FM局、TV局などにも登場。京都 α-STATION(FM 京都)で レギュラー番組をスタートさせ、 2年間パーソナリティーを務める。 2000年、ファーストアルバム 「pop music for pop people.」をリリース。高円寺にこの楽曲をテーマにした自身のデザインしたグッズを売るショップをオープンする。また様々異業種とのコラボしたイベントを行う。2002 年には、セカンドアルバム 「carrefour」をリリース。英語、日本語、 フランス語を巧みに歌詞に盛り込み、また、ジャパニーズフレンチエレクトロの先駆け的アルバムとして高評価を得る。併せて、渋谷「青い部屋」(現ロフトヘブン)を中心に毎月第三金曜にレギュラーイベント「娘達にかまわないで」をパール兄弟のサエキケンゾウ氏 と共同で主催、フレンチというテーマで様々メディアミックスを行う。 また、このイベントから産まれたピーナッツの「恋のバカンス」フレンチカバーは好評を得て、後にリリースされる。2004年の活動停止後もリリースした作品の評価は海外含め高く、英 BBC 放送では 23 年間に及び今も尚、2000 年に発売した楽曲が使用され続けている。2023年待望の新作をリリースし、活動を再開。 SuitcaeRhodes facebookページ https://www.facebook.com/SuitcaseRhodes/?locale=ja_JP 山根アツシ X(旧Twitter) https://twitter.com/altphonic Altphonic studio https://www.altphonic.com/ |