第六回 「バンドブームのこと」その2


僕が小学生のころ、「ザ・ベストテン」という歌番組が流行ってました。僕はそれを見て、まずジュリーが大好きになりました。「一等賞を取りたい」といつも言うとおり、シングルを出すたびに1位。かっこよかった。

ある日、ジュリーのことを追ったドキュメンタリー番組を見ました。1位になるために、ものすごい努力をしてると知って、あらためて尊敬しました。しかし、ジュリーの舞台裏を見られて嬉しい反面、なにかが変わっていくような、見てはいけないものを見てしまったような、気持ちが一つシフトしたような感覚がありました。

ちょうどそのころ、ベストテンに注目の新人として登場したのがサザンオールスターズ。「勝手にシンドバッド」には、シフトした気持ちを一気に持っていかれました。なにを歌っているか聞き取れないぐらい早口だけど、聞いてると楽しく、なにか良い気分にさせられる。

僕にとって、バンドというのを意識したのは、サザンオールスターズからなんだと思います。メンバーが楽器を演奏してそれが一つの音楽になってゆく。エレキギターってどうなってるのか、ベースってギターとは違うんだ、ドラムは無理そう、ピアノはやっぱり女子か、パーカッションってなに? みたいな。

中学生になってもベストテンを楽しみに見てました。するとそこに、世良公則とツイスト、ゴダイゴ、シャネルズ、ジューシーフルーツ、甲斐バンド、オフコース、チューリップなど、バンドが次々出てくるんですね(テレビに出ないバンドもありましたが)。それぞれ、カラーがあって、とっても面白かったです。

僕がはじめて自分で買ったレコードはサザンの「気分しだいで責めないで」。このバンドのファンになろうと決めました。初めて行ったコンサートもサザン。大きい音が気持ちよくて楽しかった。

ゴダイゴが大好きだった友達が、ある日「オレは今日から甲斐バンドファンになった。ゴダイゴは、子供っぽいんだよ」と。ちょうど国際児童年のテーマソング「ビューティフル・ネーム」をゴダイゴが歌ってて、余計にそう思ったのかもしれませんね。ゴダイゴがいい曲を歌ってるとサザン・ファンの僕もちょっと嫉妬に似た気持ちを抱いたものでした。

甲斐バンド、オフコース、チューリップなどは、ちょっと年上のお兄さんたちが好きなフォークの流れがあるような気がして、僕などには、敷居の高い感じがしました。歌詞もストレートに刺さって、思春期なのか僕には痛過ぎた。

僕がギターをはじめたのは中1で、その甲斐バンドファンの友達の家に遊びに行ったとき、その友達が「アニキのだけど」と言いながらそこにあったギターを弾いて見せてくれたのがきっかけです。友達がギターを弾けるなんて感動でした。弾いてくれたのは、たどたどしく「ドレミファソラシド」と「禁じられた遊び」のテーマの冒頭を単音で。これなら、僕も出来そう、と思ったんでしょうね。

家に帰ってすぐ、押入れにあった父のクラシックギターを出して、わからないながら弾いてみました。すると、すぐ父が「どれどれ、貸してみろ」と、古賀メロディー。僕が最初に教わって弾けるようになったのは「酒は涙か溜息か」ですよ。まさかそれで、The東南西北のデビュー曲が「ため息のマイナーコード」になったわけではないと思いますが。

ま、そんなことで、だんだんギターを覚えました。そのころ、好きなレコードに合わせて大声で歌う、ということを毎日していた僕でしたが、そろそろ、あきてきてたんですね。つまり、レコードと一緒だと、ご本人の歌が邪魔な感じがするわけです。自分だけのための伴奏がほしくて、ギターをジャカジャカ弾くようになりました。

で、サザンの桑田さんが弾いてるようなギターがほしくなる。あれは、クラシックでもフォークでもない、違うギターだと、薄々勘付いていたことが、現実的になってくる。あんなギターを弾いてみたい。

たまたま、友達の真似をしてはじめてた新聞配達で貯めたお金で、中2のとき、エレキギターを買いました。徐々に、ギターアンプやマイクなども買いそろえて、もう、毎日、学校から帰ってくるとワン・マン・コンサート。日に日にアンプのボリュームも上がっていき、ご近所迷惑な中学生になってゆくのでした。

サザンの人たちが、ビートルズが好き、と言ってるのをラジオで聞き、それで僕もビートルズを聞くようになります。あとはもう、ビートルズ大好きになり、その後、ベストテンで見るバンドには、それほど気持ちをもっていかれませんでした。

RCサクセション、イエローマジックオーケストラ、もんた&ブラザーズ、横浜銀蝿、アラジン、クリスタルキング、クリエーション、思えば、僕が中学のころは、けっこうなバンドブームだったのかもしれませんね。(当時のバンドの登場時期など、記憶によっているため、間違っているところもあると思います。ご容赦ください)



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