日本を代表するジャズトランペッターの一人として活躍を続ける原朋直さん。演奏活動の傍ら長年、洗足学園音楽大学で教鞭をとる教育者でもあります。 今回は洗足学園音楽大学にお邪魔して、原さんの最近の音楽活動や深く関わっていらっしゃるジャズフェスティバル「Jazz EMP」のお話、洗足学園音楽大学で教えていらっしゃる内容について詳しくお伺いしました。 原さんのお話は、これから音楽大学で学びたいと考えている学生さんのみならず、目指すものがある方や将来が見えずもがいている方にも心に響く内容が詰まっていて、生き方のヒントにもなるのではないかなと感じます。ぜひ多くの方にお読み頂ければと思います。(2020年1月) ---まずは最近の音楽活動について教えて頂けますか? 原:原朋直グループの新作を、前作『Time In Delight』と同じメンバーで2020年3月に録音します。 コンセプトや曲目についてもかなり固まってきているので、あとはライブで練ったりディスカッションしたりしてレコーディング当日を迎える感じですね。 音楽活動は現在、そちらにフォーカスしていると言ったところです。 ---リリースがとても楽しみです! 次に、2019年11月に東京証券取引所で行われた「Jazz EMP」という、原さんが大きく関わったジャズフェスティバルが大好評だったと伺いました。 この「Jazz EMP」について教えて頂けますか? 原:Jazz EMPはまだ2018年にスタートしたばかりの東京証券取引所で行われるジャズ・フェスティバルです。 日本の金融界で活躍している方々とジャズ界、音楽大学などが協力して「ジャズの本質を極めようとしている素晴らしい才能たちを応援する」というコンセプトが中心となったイベントです。 世界の金融都市、例えばニューヨーク、パリ、ベルリンなどの金融街では、ジャズや絵画のようなアートに容易に触れることができるといった話をよく聞きます。経済活動と同時に文化活動も盛んにする空気を持っているという感じなのかな。 東京の経済の中心地でもある兜町や茅場町にも同じ様な「風を起こそう」という目標の下にこの企画が立ち上がったというわけです。 2回目を終えて、徐々に世の中の関心が集まってきていると感じています。 入場無料(要申し込み)で、スポンサーは主に銀行や証券会社などの大企業です。 このイベントの大きな目的のひとつでもある、大企業がベンチャー企業や新興の起業家のプレゼンテーションを聞いて出資を決めるというように、若い才能を資金面で応援していきましょう、という感じ。そしてお互いに色々な意味で成長していけたら最高ですね、ということなんです。 ---2回目となる2019年のJazz EMPにも原さんが深く関わったのですか? 原:そうですね。2019年も引き続き企画の段階から参加しています。 2回目のコンサートを計画するにあたり、第1回目コンサートのアンケートを見ながら今後の方針なども話し合ったのですが、中には「難し過ぎる」とか「よく分からない」というアンケート回答もありました。 出演者の皆さんには、「自分のアルバムに入れるような本気のジャズをやって下さい。自分たちの今一番真剣に取り組んでいる音楽を演奏して下さい」とお願いをしていたので当然ですよね。 会議では、次回はもうちょっと分かりやすい音楽とか多くのお客さんの好む曲を入れたらどうか?という案も出ましたが、沢山話し合ってやはり前年の方針は変えずにいこう、ということになりました。 そのかわり自分たちの音楽のコンセプトや楽曲について、バンド編成について、などを聴いていただいている皆さんに詳しく分かり易く説明をすることを各バンドにお願いしました。 音楽、バンド、楽曲についてのプレゼンテーションをしてもらったのです。 当日配布するプログラムにも同じ様な内容を書いてもらいました。 全体の進行もプロフェッショナルの司会の方にお願いして、観客目線で質問をしてもらったり、ミュージシャンの良いところを引き出してもらったりしてお陰様で大好評をいただきましたし、さらに未来に繋がるコンサートになったと思います。 ---素晴らしい趣旨のコンサート、今後も是非続けていってほしいと思いました。 さて、今回お邪魔している洗足学園音楽大学、きれいなキャンパスに数多くの練習室が連なっていて、学生さんたちも生き生きとして活気にあふれていますね。原さんは具体的にどのようなことを教えていらっしゃるのでしょうか? 原:僕はジャズトランペットのプライベートレッスンとアンサンブルのクラスをいくつか持っていますが、それに加えてジャズコース全体の運営にも関わっています。 また、大学教授会の仕事で委員会というものがあります。僕もいくつかの委員会に所属をしているのですが、特に学生規律委員会では委員長をやっています(笑)。 高校なんかでよくある生徒指導の恐ろしい先生の役ですけど(笑)、とはいえ対象が大学生ですから…本当の目的は、学生一人ひとりが自分の研究や制作に専念できるよう、大学のムードや環境を良くすることなんですけどね。 ---学生さんの悩み相談などにも応じていらっしゃるのですか? 原:はい。自分で勝手によく相談される方なんじゃないかなと思っています(笑)。LINEやFacebookで「ちょっと部屋行ってもいいですか?」って感じでいろいろな学生が来ますよ。 僕は口下手だし、悩みの解決は得意ではないんですけど、喋ってると「まぁいいか」ってなるみたいで(笑)。だからいろんな人が来るんだと思いますよ。 ---洗足学園音楽大学にはクラシック、ミュージカル、電子オルガン、バレエ、音楽教育、ロック&ポップスなど実に様々なコースがあるのですね。 その中で、ジャズコースではどのようなことを学ぶのでしょうか? 原:まず、全員の学生が必修のプライベートレッスンがあります。楽器の奏法とジャズを演奏するために必要なこと、大切なことをここで研究します。主科実技というものですね。 このレッスンの中でジャズのアドリブを勉強するのですが、ジャズのアドリブとは即興で作曲をするということです。 作曲とはメロディを作っていくということです。「メロディ」つまり「うた」を作っていくということなのですが、僕のレッスンの場合は、その「うた」を作る最初の段階をまず調性のある楽曲の中でしっかりと作るところから始めます。「調性のある楽曲」とはキーがあって、ハーモニーの流れを機能的に説明できる曲のことです。スタンダードナンバーにその素材をたくさん見つけることができます。それらを題材にその曲のハーモニーの流れ(コード進行)を理解し感じながら、うたを作っていくための勉強をします。 また、過去の偉大なミュージシャンのアドリブソロの研究や、音楽理論を基にしたメロディ作りなど、普段学生が個人で進めている研究についての検証や考証、さらにジャズに関する様々なことを掘り下げたり考察したり自由な意見交換をするのもこのプライベートレッスンの中で行われています。 学生はその中で自分のうたの表現に必要な課題を見つけ、更に勉強を発展させていきます。 楽器の奏法の勉強なども、唄いたい「うた」があってその表現に必要な技術を身につける、ということになれば、俄然伸び方が違ってくると思いますよ。 ---私は学生時代クラシックの音大に近い環境にいましたが、想像していたプライベートレッスンとはかなり違っていて驚きました。 原:ジャズコースの柱となる授業はプライベートレッスンの他にもジャズハーモニーとアレンジ、それにアンサンブル/ラボ、さらにジャズソルフェージュがあります。 ジャズハーモニーは和声の面からジャズを音楽的に掘り下げていきます。 ジャズを理論的に理解し、優れた作品の分析をしたり、実験的な制作をする中で学生たちはそれぞれ独自の世界を広げていきます。 音楽を構造的に理解しそれが自分のアートの制作につながっていく感じです。 単にアドリブの方法論を学ぶ、というわけではありません。 ---それは納得ですね。 原:アレンジは音楽をどの様に展開させていくか、を学びます。 これも単に音符の積み重ね方や様々なスタイルを知って、活用するということではなく、楽曲をデザインして全体としての音楽、トータルコーディネートされた曲の作り方を勉強します。 作曲やアドリブと同じ様に、アレンジングもアレンジャーの閃きが基になると思うので、やはり方法論プラス過去の偉大な作品研究プラス実践、ですね。 ---確かに、優れたアレンジが曲の良さをいっそう引き出しますものね。 原:それから、アンサンブル/ラボです。この授業は勉強して得た様々なアイデアを試しながら、音楽を実際にバンドで作る実験室の様なものです。 ストレートアヘッドなジャズからファンクやボサノバ、ラテンジャズやビッグバンド・・・種類豊富なラインナップです(笑)。 学生たちはそれぞれがバンドを持っていたり、人のユニットに参加していたり既に外部で活動する人も少なくありません。 この授業はバンドの練習や発表会での演奏を目的にはせず、音楽という個人個人の独自の世界を協働作業によって作り上げるための研究や実験をするというものです。 大変苦労しますが協働制作の過程で起こる「ぶつかり」や矛盾と対峙しながら「どうしたら音楽を発展させられるかを研究します。 さらに洗足ジャズコースの特色ともいえる授業「ジャズソルフェージュ」という授業があって、これは説明するのが大変難しいので、是非!洗足ジャズコースの学生になって体験してほしいと思います(笑)。 物凄く大雑把に言うと、音楽を目ではなく耳で捉え、その仕組みや構造を感覚で理解する授業です。想像するのはとても難しいと思いますが・・・ジャズコースの誇る素晴らしい授業だと自負しています。 アートはその人の内側(他人軸ではないという意味)で制作をすることが大切だと思うのですが、その際に極めて重要なのが「その人の感覚」ですよね。 音の世界の「その人の感覚」を養い、成長させるのがジャズソルフェージュなんです。 ---実際に授業を見学させて頂きたいぐらい興味深いです! 一般大学における卒業論文のようなものはありますか? 原:大学生活の締めくくりともいえる卒業研究があります。 卒業研究は各々が15分ほどのリーダーアルバムを制作します。 時間をかけて自分の力で総合的な音楽制作をするというプロジェクトです。 この他にもまだたくさんの授業がありますが、これからも学生ひとりひとりの芸術が成長できる環境を作り続ける努力をしたいと思っています。 ---原さんはいつからこの音大にいらっしゃるのですか? 原:1996年4月に日本で初めてのジャズコースの短期大学としてスタートしました。僕は最初からのメンバーです。その当時は29歳。一番年下でしたね。 ---本当に長くいらっしゃるのですね。 原:もうすぐ24年ですね。最近の新任の先生の中には教え子もいますし、現在日本のジャズシーンの中心で活躍するミュージシャンもいます。 ---この音大ではクラシックのコースもいろいろあるんですよね。 原:あります。元々はクラシックの音大でしたから。 いまは大体半分ぐらいがクラシックかな。 ---クラシックのコースを選ぶとジャズは学べないのでしょうか。 原:副科レッスンというものがあります。実際に僕もクラシックのトランペットの学生にアドリブを教えていますよ。僕の主科の生徒も希望すればクラシックのトランペットの副科をとることができます。 コース間の交流も盛んに行われています。 コラボレーションライブをしたり、一緒に運動会をやったり(笑)。 洗足学園ならでは、という感じです。 大学としてまだこれから整えていく面ももちろんありますが、誠実に作っていく雰囲気が学校全体にあると僕は思っています。 ジャズの音楽大学って何の勉強をするの?って言う人もいると思うんですね。ジャズの簡単な理論が分かって、沢山コピーをして演奏すれば出来るようになっちゃうと思う人がいっぱいいて、それがジャズなのにそんなものに高いお金を払って大学で何勉強するんだよ?みたいな… だけれども、このような内容のカリキュラムは大学じゃないと無理だと思うのです。 ---学ぶ内容と量について伺うと、これはもうかなり集中しないと難しいでしょうね。 原:そう。音楽に限らず、美術や経済や科学など様々な分野において同じ様なことが言えると思うのですが、大学というのは習い事をするところではなく、専門分野を掘り下げる場所だと思うんですよね。 掘り下げるということは、先生の技を倣って習得するのではなく、自分の世界を掘り下げることだと思うんですよ。 先生は学生と同じ研究者であり、前を歩いている先輩なんだと思います。先生も同じく自分の世界を掘り下げていて、学生の研究者とお互いの研究成果について考察したり広げていったりするのが授業なのかなと思います。 僕ら大学教員は免許が要らないんですよ。学歴も関係ありません。国籍も関係ないし。専門家として学校側が認め、研究者として招かれた人が先生になるんです。 ・・・僕はこんな風に大学というものを考えているのですが、もちろんこれは僕が思いついたことではなく、たくさんの学びから得た考え方なんですけど・・・ 洗足は同じ様に考える人たちが多くいる大学だなと思っています。 ---自分もこのような環境で学んでみたかったなと思います・・・。 今日はせっかく原さんにお会いできたので、私もふくめ、独学でアドリブを学ぼうとしつつも、なかなかその入口に立てず悩んでいるような人に具体的なアドバイスなど頂けないか?と思うのですが。 原:これに関しては簡単に説明することは不可能なので、是非是非これを読んで頂ければと思います。 noteというクリエイターのためのウェブサイトでいろいろと書いているのですが、ここに僕が一生懸命書いた(笑笑)文章が載っています。 是非、お読みください! 僕の話はまどろっこしいので!(笑笑) 「トランペットが難し過ぎたから勉強できたこと」 https://note.com/hararappa/n/nae6b126ad1e9 「ジャズのアドリブとはその瞬間に作曲をすることだが鼻唄によく似ている」 https://note.com/hararappa/n/nd38fcddefa2c 「私がアンサンブルで大切にしていること」 https://note.com/hararappa/n/n86e88111e516 「ハーモニーを感じる、ということ」 https://note.com/hararappa/n/n093221aa6c04 ・・・僕は50歳をすぎて、アートと音楽とジャズとトランペットがやっと結び付き始めました。やっと楽しくなった!ほんとうに! 昔はほとんどいつも苦しくてしょうがなかったですけどね・・・。 ---原さんにもそんな時期があったとは信じられないです。 原:一生かけて積み上げていくものだと思いますよ。アートって。 例えば、音楽大学とは「こういうやり方で道を究めていく方法もありますよ」っていうのを学びながら自分の畑を耕し始める最初のスタートラインなんだと思います。 大学で色々やってみて、いよいよ自分の制作活動に入っていって、その中で音楽とは?とか楽器とは?とか音楽理論とは?とかソルフェージュ能力とかバンドとかアンサンブルとか、アートとは?とか・・・っていうのがだんだん明らかになってくるんだと思います。 僕は音楽大学がスタートラインではなかったけど、人生のどこかの時点で同じ様なスタートを切ったんだと思います。 そのあとは大変苦労しましたね。音楽も人間も何もかもが難しくて。まあ、アートの階段を上るための苦しみだったのかもしれません。 いまは音楽的なとか芸術的なという意味では、とても幸せです。 自分の環境や立場がという意味ではなく、精神的に幸せなんです。 音楽がほんとうに楽しいんです。絵を描く人が「絵を描くこと」がすごく楽しい、みたいな。 やっとそうなったって感じです。 元々僕は社会福祉の大学に行って、サークル活動の延長線上でプロになったんです。プロといっても、もうめちゃくちゃ吹いて、めちゃくちゃだからアドリブといえばアドリブなんだけど(笑)。結構グチャグチャなソロを吹いてお金もらってましたからね。申し訳ないです。 ---社会福祉を学ばれて今のご自身にどのような影響がありますか? 原:大学でいろいろな友達と知り合えたというのも財産なんですが、最も大きかったことは素晴らしい先生に出会えたことです。 柴田嘉彦先生という、社会保障論の世界では大変な権威の方で、僕はその先生のゼミに入りました。ゼミに入らないと卒論を一人で書かなきゃならないっていう(笑)ことから、それはちょっと無理だと思って流れに任せて選んだゼミでした。 全体的に、社会福祉の大学として実践的だったり、臨床的な研究をするとか、将来に繋がる福祉施設などと連携したゼミが大人気だったのですが、柴田先生のゼミは理論を研究する研究室で、僕を入れて5人ぐらいしかいなかったんじゃないかなあ・・・。そのゼミに二年間在籍していたのですが、恥ずかしながらほとんど何も勉強はしませんでした。 僕は大学生の時には既にライブハウスで演奏していましたから、それを先生も知ってらっしゃって、それについてはいつもニコニコと優しく温厚な面持ちで、「大変だね、頑張ってね」って感じだったんです。 三年生の夏にゼミの合宿があって、僕は何も勉強することがないのでぶらぶらしていたんですが、先生が「蕎麦でも食べに行きましょうか」って長野・善光寺の前にあるお蕎麦屋さんに連れていってくださったんです。 その時に「自分はいまジャズを一生懸命やっていて、将来これを自分の仕事にするか、社会福祉の道に進むか・・・どうするか迷っています」って相談したんですね。そうしたら先生が「君は社会福祉を生涯の仕事にするためにトランペットをやめることはできますか?」って言われて、「あ、ちょっと無理だなあ、趣味ででもやりたいです」って言ったら、「そうか。じゃあ君はトランペットやるために社会福祉をやめることはできますか?」「できます」ってなったんです。 「じゃあ君はトランペットしかないじゃないですか」と仰ってくださったんです。 柴田先生は私に「人間は自分がやりたいと思うことを一生懸命やるのが素晴らしいのだ」って教えてくださいました。「だから、努力を続けましょう!」と言われて、「はい!分かりました!」と答えて音楽家になることを決めたんです・・・だから社会福祉は全然勉強してないんです、ごめんなさい(笑)。 先生はご自身の背中で僕たちに学びの素晴らしさを教えてくださいました。自分の為に自分の学問をしている姿や、他人のことや外側のことは全く気にせず、一生懸命研究を続けるあの姿勢に僕は物凄く影響を受けたと思います。 ---素敵な恩師の先生ですね。 原:人生には様々なターニングポイントがあって、そこにいる素敵な人や環境が自分を導いてくれるんだと思います。そういう人や環境って、その後も自分の心の中で育つと思うんですよ。 僕を導いてくれた言葉が僕の中で育って、やがて人に話す時に出てくるのかなって思います。 ---私の恩師は「ウルトラマンタロウ」「シルバー仮面」などの劇伴を手掛けた作曲家の日暮雅信先生です。私が社会人になって仕事が忙しく音楽の勉強をあまり出来ない時期にお手紙を下さって、「音楽は一生の仕事と心得て焦らずに」と書かれていたのは宝物で、今も大事に持っている言葉です。 原:本当の芸術を知っている人のお言葉ですね。 ---なので、自分の心の中に先生がいるという考え方、とても響きました。 原:そうですね。 僕の生徒の中にも、将来が不安だったり、親に何か言われたりとかいろいろと悩んでいる人もいます。 実際ジャズだけでご飯を食べられる人なんてなかなかいないと思いますし、マーケットも小さいので大変だとは思います。 でも僕は一番大切なのは、音楽でお金が稼げるか?じゃないと思うんですね。 我慢をして自分が嫌だと感じる音楽をやったり、納得しないものでもとにかく「音楽でお金を得る」のが大事なんじゃなくて・・・。もしそれをやるくらいならバイトや他の仕事をしてお金を稼いで、それで自分のやりたい音楽をやればいいじゃん、って。 肩書きというのは全然大事ではなくて、制作したものの中身が大事なんだから。 自分が何を作って、それがどうやって出来上がっていくかっていうのがとても大切だから。 そういうことを大切に出来る人をアーティストと呼ぶのだと僕は思っています。 プロフェッショナルとかアマチュアというのは全然関係ないと思いますね。僕はそういうの全然気にしない。 たまにちょっと勘違いしている人が僕に「ねえ、一緒にやろうよ」なんて言われて嫌な時には、「俺はアマチュアとはやらない」と言い訳に使うんだけどね(笑笑)。 プロフェッショナルの中にもアーティストじゃない人もいるし、アマチュアの中にもアーティストがいるし。僕にとっての大切なことは、アーティスティックかどうか?ということなんです。 ---「アーティスティックかどうか?」ですか。 原:自分の想像力で、自分のデザインでクリエイティブに制作をし、常に前進する努力を続けている人たち・・・。そういう人たちと今後も交流していきたいと思ってます。 ---今日はものすごく濃いお話ばかりで感激しました。 インタビューも終盤ですし、原さんの最近のCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか? The Upstate Project (feat. Larry Grenadier & Jeff Ballard) /レベッカ・マーティン Rebecca Martin Apple Music 女性シンガーの作品ですが僕には男性的な力強さを感じます。 何度も繰り返し聴きたくなる、心に染み入るアルバムです。 Little Big/アーロン・パークス Aaron Parks Apple Music ヒーリングというかお祈りを聞いている様な感じになります。僕の個人的な意見ですが…。 「これのどこがお祈りなの?」と言われそうですが、僕が感じるということでご理解ください(笑笑)。 Yarrow/キム・アンダーソン Kim Anderson Apple Music 音楽的センスが今の僕にピタリとマッチしました。 Weightless/ベッカ・スティーヴンス Becca Stevens Apple Music 最近ウクレレ を弾きながら歌う練習をしているんですが(笑)、この人はいろんな弦楽器を弾くんですね。聴いているうちに大好きになっちゃいました。 Here’s to Life/シャーリー・ホーン Shirley Horn Apple Music 何も言うことはありません。すべての人に聴いてほしいアルバムです。 ---インタビューの最後に、今後の展望や夢についてお願い致します。 原:直近では3月の録音にむけていろいろと準備をしています。 前作のインタビューをしていただいた時に「次は歌いたい」と言っていたのを覚えていますか? 実は歌詞を書いてしまいました(笑)。一曲、自作の曲を歌います。全員の合唱パートもあります!(笑笑)! アルバムのクオリティーを優先したいので採用されるかは保証できませんが(笑)。 あとは最近、小編成の演奏も楽しくなってきたのでデュオやトリオもちょこちょことやっています。 ---デュオ、2人で会話しているような感じですか? 原:そうそうそう、親密な会話。コミュニケーションがとても取りやすい。 逆に人数が増えれば増えるほどコミュニケーションは難しくなると思うんだけど、素材が増えるので多彩になるんですよね。 だから結局、大人数も少人数もどちらも楽しいですね!(笑) ドラムのデニス・フレーゼが一緒にデュオをやろうと言ってくれてるんだけど、ドラムとトランペットって相当変わってるから(笑)。お客さん来るのかな…なんて楽しく妄想したりね。 まあ今回のレコーディングが終わって、どう気分が変わるか分からないですけど、いつもいろんなこと考えています。 あとは、大学やJazz EMPなどを足掛かりに、やがては音楽芸術の世界がいい感じの雰囲気になったら素敵だなと思っています。 音楽家が自分のアートを自分に正直に掘り下げていく、それを応援する人たちがいて、みんなで文化を発展させる。非常に健全な環境作り。 これが大きな夢です。 ---貴重なお話を濃密に伺えて、本当に嬉しい時間でした。どうもありがとうございました。 ◆原朋直 プロフィール ジャズ・トランペット奏者、作曲家、洗足学園音楽大学教授 1966年生まれ。 1990年代、日本ジャズ界に巻き起こった若手ミュージシャンによる一大ムーブメントの先頭に立ち活躍。 初単独リーダー作は『Evidence for My Music』(キングレコード 1996年)。現在までCo-leader作品も含め19枚のリーダー・アルバムを発表する。 国内外のジャズ・シーンで活躍中。 近年の主な作品は、『Vol.One』原朋直 & ユキ・アリマサ(Forest-Music 2012年)。『The Days Of Wine And Roses』原朋直 & ユキ・アリマサ(Forest-Music 2014年)。『Color As It Is』原朋直カルテット(Gaumy Jam Records 2015年)。『Time In Delight』原朋直グループ(Gaumy Jam Records 2017年)。『Dear J.C. ~ Dedicate to John Coltrane ~』原朋直 & 池尻洋史(Gaumy Jam Records 2018年)。 また2019年7月には、佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2019 ミュージカル「オン・ザ・タウン/On the Town」(レナード・バーンスタイン作曲)に兵庫芸術文化センター管弦楽団1stトランペット(ゲスト・トップ・プレイヤー)として参加。クラシックのオーケストラに初めて挑戦した。 原朋直 Official Site https://tomonaohara.com/ https://twitter.com/tomonaohara Facebook Page https://www.facebook.com/tomonaoharamusic Gaumy Jam Records(ゴミ・ジャム・レコード) https://gaumyjamrecords.tumblr.com Gaumy Jam Records Twitter https://twitter.com/gaumyjamrecords Gaumy Jam Records Facebook Page https://www.facebook.com/gaumyjamrecords ♪最新Live情報 予約などの詳細は原さんのサイトのスケジュールページからご確認下さいますようお願い致します。 ★2020/1/23 (木) 新宿 ピットイン “Tomonao Hara Group LIVE at PIT INN” Open19:30 Start20:00 Music charge \3,000+税(1DRINK付) 原朋直/tp, 鈴木央紹/ts, 宮川純/p, 朝田拓馬/g, 池尻洋史/b, デニス・フレーゼ(Dennis Frehse)/ds ★2020/1/29 (水) 埼玉県蕨市 Our Delight “原朋直&朝田拓馬DUO” Open19:00 Start19:45 Music charge\3,100+order(学割、わかもの割あり) 原朋直/tp, 朝田拓馬/g ★2020/2/7 (金) 新宿 ピットイン “鈴木 CHIN 良雄Quartet" Open19:30 Start20:00 Music charge \3,000+税(1DRINK付) 鈴木良雄/b, 原朋直/tp, 片倉真由子/p, 大村亘/ds ★2020/2/26 (水) お茶の水 ナル “Tomonao Hara Group LIVE!” Open18:00 Start19:30 Music charge\2,500+order 原朋直/tp, 鈴木央紹/ts, 宮川純/p, 朝田拓馬/g, 池尻洋史/b, デニス・フレーゼ(Dennis Frehse)/ds ★2020/3/2(月) 新宿 ピットイン "THE J. MASTERS" Open19:30 Start20:00 Music charge\3,000+税(1DRINK付) 峰厚介/ts, 向井滋春/tb, 原朋直/tp, 野力奏一/p, 鈴木良雄/b, 奥平真吾/ds ★2020/3/3(火) 千葉県柏市 ナーディス “Tomonao Hara Group LIVE!” Open19:00 Start20:30 Music charge\3,300+order 原朋直/tp, 鈴木央紹/ts, 宮川純/p, 朝田拓馬/g, 池尻洋史/b, デニス・フレーゼ(Dennis Frehse)/ds ★2020/3/8(土) 和歌山県紀の川市 粉川ふるさとセンター 大ホール “スーパーJAZZコンサート Rodney Green Trio with Tomonao Hara" Open18:30 Start19:00 入場料\500(全席自由) Rodney Green/ds, Nicole Glover/ts, Tyrone Allen/b, 原朋直/tp ★2020/3/9(月) 吉祥寺 サムタイム “辛島文雄トリビュート ライブ” 池田篤/as, 原朋直/tp, 板垣光弘/p, 楠井五月/b, 小松伸之/ds Start19:30 ★2020/3/20(金) 世田谷 経堂 バー・ペンタ “bar PENTAセッション” Open19:00 Start19:30 原朋直/tp, 鈴木宏紀/ds, 高橋陸/b, 末永尚史/key ★2020/3/28(土) 成城 カフェ・ブールマン “Trumpet-Guitar-Piano trio” Open14:30 Start15:00 Music charge\3,700+2drinks order 原朋直/tp, 朝田拓馬/g, 宮川純/p <Cheer Up!関連リンク> 特別企画:私の好きなマイルス(2019年) http://www.cheerup777.com/sse2019/selim2019-6.html#section16 私の吹部時代(2017年) http://www.cheerup777.com/miyagi/suibujidai_hara.html 原朋直『Time In Delight』インタビュー(2017年) http://www.cheerup777.com/hara2017.html |