長年プロミュージシャンとして第一線で活躍しているベーシストの平石カツミさんが、初のリーダーアルバム『Pleasure』を発表した。
収録曲は全て自身のオリジナル。ジャンルの枠にとらわれない楽曲たちは、シンプルなタイトルと共にイマジネーションをかきたてられる。
ベースプレイはもちろん、平石さん自身によるトランペットもまた聴きどころのひとつ。
平石さんと数多く共演してきたアーティストたちと共に奏でられる音楽は、時にエネルギッシュ、時にホッとリラックスできるような温かさもあり、あっという間に時間が過ぎるような・・・ジャズファン、ポップスファンという垣根も年齢も関係なく楽しめるアルバムで、生活の中で一緒に過ごしたくなるようなアルバムでもある。
今回は平石さんに、この『Pleasure』についての想いと、これまでの音楽キャリアについてお話を伺った。
また、『Pleasure』参加アーティストと、平石さんに縁の深いアーティストの皆様からお祝いのコメントを頂いた。
(2016年2月)


<平石カツミインタビュー> <『Pleasure』リリースに寄せてコメント>





---平石さんのキャリアを考えると、初のリーダーアルバムというのが意外に感じました。
今回このアルバムを発表することになった経緯を教えて下さい。



平石:そうですね、リーダーアルバム制作の構想はもうずっと以前から有りました。
3、4年前からアルバム制作も念頭に置いた自分リーダーでのライブ活動を再開させていて、旧友であり今回のアルバムのレーベルオーナーの平井景君がプロデュースする"信州ジャズ"に2013年から関わらせて頂いたのをきっかけに、平井君の会社「ブライトサンズレコード」との制作であれば自分の理想に近い形でのアルバム制作が可能かもしれないという考えに至り、その流れで今回のアルバム発表となりました。



---タイトル『Pleasure』はシンプルながらも、きっと平石さんの様々な想いが込められているのではないか?と思います。
このタイトルに決めた理由を教えて下さい。



平石:このアルバムは、まずは1997年頃から書き溜めていた楽曲の中から今も気に入って演奏している思い入れのある楽曲をとにかく発表しましょう、という事が根本的な目的にありました。
何かのコンセプトに基づいてという類いの物でも有りませんし、音源制作後にこの音楽全体の看板となってしまうアルバムタイトルというものをどうするか悩んでいたところ、今回エグゼクティブプロデューサーを勤めて頂いた平井景君から、この『Pleasure』というタイトルの提案を受けました。
「このアルバムには喜びが詰っているのだ」という平井君の解釈に感動し、即この『Pleasure』というタイトルに決定となりました。



---ご自身がメインで演奏されているベースをフィーチャーするのではなく、ご自身でトランペットでメロディーを奏でたり、参加アーティストの見せ場も多い作品ばかりなんですね。


平石:これは自分の作った楽曲をどのようにすれば最も良い音楽として人に伝える事が出来るのかという事を主眼に置いた結果、こういう形となりました。



---多くのアーティストが参加しており、ピアノについては4人のアーティストが演奏なさっています。
曲ごとに「こんなイメージだから、ぜひこの人に依頼したい!」というイメージがあったのでしょうか。



平石:そうですね、これはピアノだけではなくオルガン、ウーリッツァー、アコーディオン、鍵盤ハーモニカ等、色々な鍵盤楽器を演奏して頂いたという事もありますし、それぞれ皆さんの個性をイメージしてお願いしましたが、具体的にこんなイメージだからというのはちょっと言葉で表現するのは難しいですね。



---タイトルがシンプルで、曲の主題が分かりやすいですが、その分聴き手の想像も膨らんで楽しいなぁと思いつつ聴かせて頂きました。
アレンジについては、プレイヤーに任せる部分も多かったのですか?



平石:演奏をお願いする側としても、この人だったらたぶんこうやるよね、というのはわかっている人に来て頂いていますので、こちらからの細かいアレンジ指定というのはほとんど無かったと思います。
皆さん予想を超える素晴らしい演奏をされていて、本当に嬉しかったです。


---録音はどのように進められたのですか?


平石:全体に太く深く、耳障りでは無い音を目指していました。
スタジオの機材のタイプも大体把握していましたし、録り音に関しては芹澤君にお任せしていましたが、もう最初からから素晴らしい音でした。
わかっていた事ですが、メンバーの皆との一発録りの時の仕上がりのスピードとそのクオリティーの高さは素晴らしいの一言で、本当に凄い人達だなと改めて思いました。



---ここからは曲をピックアップして伺わせて下さい。

◆1. Friends
---平石さん自ら奏でるトランペットの音色が優しくて心安らぎ、温かくホッとするような曲ですね。
また、この曲だけバイオリン2本(真部裕さん、藤堂昌彦さん)でゴージャスです。
ご友人とのひとときを大切にされている平石さんのイメージが伝わってきます。
楽しい時間の終わりとか、今は会えなくなった友の想い出とか・・・聴き手の「Friends」にまつわる想い出も蘇るような曲だと感じました。



平石:そうですね、このアルバムを作る事についても、今までの音楽活動についても、やはり支えてくれる友人、先輩、家族が有ってはじめて成立している事だと思いますので、その感謝の気持ちを表現しました。
亡くなってしまった友人、親族への追悼の気持ちも込めた作品となっています。



◆4. Eternity
---真部裕さんのバイオリンで奏でられるメロディが美しい壮大な曲。塩谷哲さんのピアノもしっとりと美しく、聴きほれます。平石さんのメロディアスなベースにホッとしたり、田中義人さんのギターやはたけやま裕さんのパーカッションは、さりげないながらもここぞという時に効果的だったり。何度も聴きたくなる曲です。


平石:ありがとうございます。
人が永遠を求める気持ちをテーマとした曲です。



◆5. Freedom
---松本圭司さんのウーリッツァーが実にかっこ良くてこの曲の聴きどころの一つですね。
今回ウーリッツァーを選ばれたのは平石さんのアイディアでしょうか。
ウーリッツァーとトランペットと伊藤大輔さんのVoiceのハーモニーが美しくて相性抜群!



平石:ウーリッツァーはファンキーな演奏も合いますし重苦しく無くとても好きな楽器です。
松本君のウーリッツァーは昔から大好きでよくお願いしていましたが今回も凄い演奏でした。
伊藤大輔くんに歌って頂いた事で楽曲自体が何倍にもおしゃれなイメージに変化して驚きました。


---平石さんにとっての"Freedom"とは?


平石:"Freedom"とは?と問われたらやはり一言で答えるのは難しいですが、生き物というのは本来自由に生きる権利を持って産まれては来るのだと僕は思っています。自由に行動すればその責任は必ず自分が取らなくてはならず、自由に生きる為には結局は自由に生きる為の環境作りを自分でやっていかねばならず、周りとの協調、協力を考えながら自分のやりたい事を進めて行く実力を身につけて行く事が必要になってくるのだと思います。



◆7. Birthday
---お子さんの誕生を祝って作った曲とのこと。
お父さんからお祝いの曲を作ってもらえるなんて、お子さんも成長なさってから嬉しく感じることでしょうね!お子さん誕生の時にはなかなか出来ず、五年後にやっと出来たとのこと。思いが深い分、なかなかうまく思い浮かばなかったのでしょうか?



平石:はい、なかなか納得のいくものが出て来ませんでしたが、これならばOKだろうという判断をしました。
誕生を感謝し、祝う気持ちと、産まれて来た子供のエネルギーを表現出来たと思います。



◆8. Love For Humanity
---扇谷研人さんの吹くメロディオンの優しい響きに心和みます。
それを支える平石さんのベースと平井景さんのドラムが相性抜群。
ベースソロも本当に素敵で、平石さんのベースの魅力もたっぷり堪能できます。



平石:これは今回の収録曲の中でも最も古い曲で、馴染んだ、リラックスした雰囲気が伝わるよう心がけました。



◆9. Departure
---仲間に囲まれ、笑顔でコントラバスを奏でる平石さんの姿が浮かんでくるような気がしました。
まさに沢山の仲間と作り上げた作品の締めくくりにふさわしい曲ですね。



平石:そうですね、変化して行く事を恐れず進んで行くというような雰囲気が表現出来たのではと思います。



---ここからは、平石さんの音楽ヒストリーについて教えて下さい。
子供の頃、どんな音楽を好きになり、聴いていましたか?



平石:普通の家の普通の子供でしたから、ラジオ、テレビ、学校等から入って来る音を聞いて育ったと思います。
小学生の時に特に興味を惹かれたのはテレビのガンバの冒険や大岡越前の音楽等、山下毅雄さんの作られた音楽や、ゴダイゴ、さだまさしさん等のニューミュージック、フォークといわれていた音楽でした。



---10歳でトランペット、ベース、ギターを独学で始められたとのこと。そのきっかけは?


平石:やはりブラスバンドでトランペットをやり始めたのが音楽を一生懸命やりだしたきっかけですね。
ギターは父が若い頃弾いていたガットギターが家にあって、勝手に弾いていたのですが、たぶん小六くらいの時に町のギター教室で少しだけ習わせてもらった事が有ります。
ベースは、兄がバンドでベースをやっていた影響ですね。


---学生時代はどんな音楽を聴いていましたか?


平石:日本のロックや、ウェザー・リポート、リターン・トゥ・フォーエヴァー、渡辺貞夫さん、日野皓正さん、マイルス・デイヴィス等のジャズ、フュージョン他、アースやスティービー等のソウルっぽいポップスも大好きでした。
大学生くらいになるとレオン・ラッセル、トム・ウェイツ等の白人ロック、ビル・エヴァンスやキース・ジャレット等ジャズ全般、ECMレーベルの音楽全般に特にはまっていました。


---バンド活動はなさっていたのでしょうか。


平石:バンド活動は中学生位から自分企画の物の他、色々なジャンルのバンドに誘って頂いてずっとやっていました。



---18歳で上京なさって、大学在学中からプロ活動を始められたとのこと。
その経緯を教えて下さい。



平石:大学のジャズ研に所属していた関係もあり、新宿PIT INN朝の部でやるようなバンドや銀座のクラブの箱バンから始まって、有名歌手の方のサポートやシンガーソングライターの方のサウンドプロデュース等だんだんに広がっていった感じです。


---数ある楽器の中からベースを主に演奏されている中で、ベースの魅力はどんなところと感じていらっしゃいますか?


平石:ベースという楽器は文字通り本来サウンドのベースとなるべき楽器だと思いますし、音楽全体のイメージを決定してしまう、非常に重要な役割を持たされた楽器だと思っていますが、ベースの魅力はどんなところと聞かれると、正直返答に困ってしまいますね。
結局ベースという楽器の音が好きだし、演奏していて楽しいって事でしょうかね。



---ベーシストの納浩一さんに師事なさっていたとのこと。
納さんから教わったことで印象深いこと、心に今も残っていることがあれば教えて頂けますか?



平石:納さんのプレイを間近に見られたという事はもちろんですが、納さんのレッスンで特に興味深かったのは、スタンダードナンバーのコード進行上に別メロディーを作成する、という課題でした。
自分の作曲の基礎になっているように思っています。
それから、今も僕が大好きなカーラ・ブレイ、スティーブ・スワロー等の素晴らい音楽を紹介して頂けた事もありがたかったと思っています。



---実に沢山のアーティストと共演なさってきた平石さんですが、JiLL-Decoy associationとの共演も多いですよね。


平石:ジルデコとの付き合いはドラマジャズというコンセプトアルバムに参加した時に秋田慎治君に紹介してもらったのがきっかけだったのですが、音楽的にも人的にも相性が良かったようで、思えば結構長い付き合いになっているんですね。
ジルデコは3人の個性のミックス具合がとても興味深く、現場はいつもクリエイティブでとても楽しいです。



---さだまさしさんのコンサートツアーにも、もう何年も参加なさっているそうですね。


平石:さだまさしさんのサポートは(森山)直太朗君の現場でご一緒させて頂いたりしていた、まさしさんのステージの音楽監督でありピアニストの倉田信雄さんに引っ張って頂いたのですが、僕が子供の頃からのさだまさしファンであったという事もあって、最初の頃は緊張しましたね。
まさしさんのツアーに参加させて頂いて6年目になりますが、本当にたくさんの貴重な経験をさせて頂いて、感謝の気持ちをどう表現してよいのかわからないという感じです。
まさしさんの音楽に参加できて本当に光栄だと思っています。



---音楽を離れたところでのご趣味、最近ハマっていること・好きなことなどあれば教えて下さい。


平石:化学調味料や食品添加物、農薬、化学肥料等を使っていない食べ物や、ちゃんと造ってある本当に美味しいお酒を頂く事が楽しみですね。
自宅で時間が有れば子供(小1)と遊んでいるのが一番楽しいです。
あとは目的を持たずただただ歩く散歩とか。



---このマガジンのインタビューでは恒例の質問です。
平石さんにとっての「Cheer Up!ミュージック」を教えて頂けますか?



平石:子供達が一生懸命演奏しているのを見るととても感動しますし元気が出ます。



---今後はどのようなアルバムを発表していきたいとお考えですか?


平石:そうですね、まだ具体的な考えには至っていないですが、たぶん今回とは全然違うアプローチの作品になるのではないかと予想しています。



---ありがとうございました。次作や今後の活動もますます楽しみにしております。






『Pleasure』 平石カツミ

1. Friends
2. Questions
3. Into The Brain
4. Eternity
5. Freedom
6. 風鈴~Wind Bell~
7. Birthday
8. Love For Humanity
9. Departure


定価¥2,800(税抜)
品番 BRSR-CD006
発売日2016年1月20日
発売元:ブライトサンズレコード株式会社
http://bsr.theshop.jp



<参加ミュージシャン>
平石カツミ(B,Tp,G)
塩谷哲(P)
渡辺剛(P,Key)
松本圭司(P.Key)
扇谷研人(P,Key)
田中義人(G)
真部裕(Vn)
藤堂昌彦(Vn)
竹本一匹(Perc)
はたけやま裕(Perc)
平井景(Dr)
伊藤大輔(Voice)
















平石カツミ プロフィール


1968年2月4日生まれ。佐賀県出身。
10歳よりトランペット、ベース、ギターを独学で始める。
18歳で上京。
駒澤大学在学中よりプロミュージシャンとしての活動を開始。
同時期、納 浩一氏に師事、JAZZを学ぶ。
以降、松本圭司、坂田学らと結成した自己のグループでの活動、赤松敏弘GROUP、GO-AHEAD、平井 景Special Project、などのバンドへの参加、美菜呼のサウンドプロデュースを担当する等しながら、サポートミュージシャン、スタジオミュージシャンとして、東儀秀樹、森山直太朗、さだまさし、岩崎宏美、NORA、辛島美登里、佐藤竹善、絢香、塩谷 哲、押尾コータロー、akiko、川江美奈子、NAOTO 、JiLL- Decoy association、手嶌 葵、樹里からん、noon、高瀬龍一、福井ともみ、原田俊太郎、田中義人、扇谷研人、秋田慎治、Every Little Thing、伊佐津さゆり、杉本篤彦、榊原大、はたけやま裕、酒井聡行、矢井田瞳、松本良喜、城南海、渡辺美里、井手麻理子、中森明菜、石川さゆり、鈴木雅之、DA PUMP、岡本真夜、本田雅人、鳥山雄司、NOKKO、馬場俊英、矢野沙織、大友康平、川嶋あい、中村中、是方博邦、小谷美紗子、wyolica、Harry 、他多くのアーティストと共演する。
2016年1月 ファーストリーダーアルバム「Pleasure」リリース。


平石カツミOfficial Website
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