ギタリストの越田太郎丸さんが新作『Twenty Years』をリリースした。Bossa Novaファンにはお馴染みアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲、ショーロギター、アルゼンチンのギタリストの曲などバラエティに富んだカヴァーに越田さんのオリジナルが2曲という充実した内容。心地良いギターが涼を呼ぶ、この夏の愛聴盤になることうけあいの素敵な一枚。
また、このアルバムは野崎良太さん(JAZZTRONIK)主宰の音楽カルチャープロジェクト『Musilogue』からのリリース。じわじわと話題になっているプロジェクトだ。
今回は越田さんにこのアルバムのこと、音楽キャリアについてお話を伺った。(2018年7月)


---前作『TSUBASA』から約10ヶ月でリリースされた『Twenty Years』
今回のアルバムを作ることになったきっかけ、またレコーディングやその準備など制作期間はどのぐらいかかりましたか?
制作過程やレコーディングで印象的・または思い出に残るエピソードがあれば教えて頂けますか?


越田:去年『TSUBASA』のリリースライヴをやった時に、2ステージ制にしてファースト・ステージは僕の完全なソロ・ギターのライヴにしたんです。そうしたら、野崎良太君のところに「あの人のソロ・アルバムを出してほしい」という声をたくさんいただいたらしいんです。

レコーディングの準備としては、どの曲をレコーディングするかの選択だけでした。ソロの演奏はライフワーク的に月に一度はやってきていたので。実際のレコーディングはエンジニアの池田さんと一対一で3日間でやりました。ライブでやっているとはいえ、スタジオで1人きりというのはなかなかタフな経験でしたね。とにかく、自分の中で集中力が高まっている時の演奏を記録しそびれないように気をつけました。

---前作『TSUBASA』も、今作もJAZZTRONIK野崎良太さん 主宰の音楽カルチャープロジェクト『Musilogue』からのリリースなのですね。
このプロジェクトに参加することになった経緯や、野崎さんとの出会いのきっかけなど伺えますか?


越田:野崎君との出会いは、葉加瀬太郎さんのサポートバンドでご一緒したのが最初です。彼が僕の参加しているPrismaticaというユニットのCDを若い頃聴いていてくれたみたいで。
それからJazztronik の"七色"っていうアルバムのレコーディングに呼んでもらったり、しながら今日に至る、です。

Musilogue のプロジェクトも早いうちに声をかけてもらってました。
野崎君から、こんなことやりたい、あんなことやりたい、という話を色々聞いて、、、
僕は野崎君の作る音楽のかっこよさを信じてるので、もう声をかけてもらったのだから、それはありがたく参加、ですよ。

---ジャケットはなんの鳥なのでしょう?
アートワークはサックスプレイヤーの栗原健さん(Cheer Up!インタビューにもご登場下さってます)なのですね。イメージを伝えるのか、お任せなのか?どのようにコラボされたのでしょうか。


越田:おまかせ、です。
このMusilogue のシリーズのジャケットのアートワークはすべて、サックス奏者、栗原健さんの作品なんですけど、、どれも素晴らしいですよね。音楽がどんどんデータ化されている中、このシリーズは彼のおかげでパッケージとしてすごく魅力的になってますよね。
昔はジャケ買いとかしてたけど、そういうの、したくなりませんか?

ライブでは、彼の原画が展示されることもあるんですけど、すごくいい雰囲気になりますよ。

今回のアルバムの鳥はパフィンっていうらしいです。
収録された音楽は南米のものが中心ですが、この鳥、、、アイスランドあたりにいる鳥らしいです(笑)。
南米に憧れる僕ってことにしておいてください。

---ここからはアルバムの内容についてお伺いします。

◆1. Desafinado/Antonio Carlos Jobim
◆5. Samba de Uma Nota Só (One Note Samba)/Antonio Carlos Jobim
◆10. Garota de Ipanema/Antonio Carlos Jobim

---アルバムにはアントニオ・カルロス・ジョビンの曲が3曲収録されています。
越田さんは本当にジョビンの音楽がお好きなんだなあということが伝わる演奏で、本当に心地良くて・・・
越田さんにとってジョビンの魅力とは? ほかにもジョビンのおすすめ曲はございますか?


越田:自分の勉強の題材として、そして、演奏のお仕事での曲目として多くのジョビン作品に触れてきましたが、実は意識して"ジョビンのことが大好きだー"って思ったことはなかったんですが、、、
今回あらためてジョビンがいかに偉大なコンポーザーか実感しました。
耳ざわりの良さもそうですが、ある程度アレンジしても、メロディに主張があるので曲の骨格が崩れないんです。
これってすごいことですよね?

ジョビンの作品の中でオススメというともちろん"Wave"なんて本当に素晴らしいですけど、Elis Reginaとの"Tom and Elis”とか、Edu Loboとの"Tom and Edu”とかもすごく好きです。

◆2. Playas del Este/Cacho Tirao
---アルゼンチンのギタリスト、Cacho Tirao(カチョ・ティラオ)の曲。
初めて知ったギタリストですが、優しさ・温かさを感じる曲ですね。カチョ・ティラオの魅力など教えて頂けますか?


越田:学生のころ買ったラテンギターのオムニバスアルバムに収録されていた曲なんですけど、爽やかで、ギターらしい良さもいっぱいあってとてもいい曲ですよね?
まったく詳しくなくて申し訳ないですが、カチョティラオはピアソラのバンドで演奏されていた人みたいですね。
クラシックギターで弾くタンゴ、すごく魅力的なんですよ。彼の当時の独奏を聴くとタッチがしっかりしていてカッコいいです。

◆3. Onda Blanca /Taroma Koshida
---越田さんのオリジナル。作曲には時間がかかりますか?ギター一本で作曲なさるのでしょうか。
タイトルに込めた意味や作品紹介をお願い出来ますか?
私はフラメンコのような感じ、秘めた情熱のようなものを感じました。


越田:他の楽器はまったくダメなので、ギターもしくは鼻歌で作曲してます。最近はコンピュータも使ってますけど。
曲の出来上がりには時間がかかる時もあれば、そうでない時も、、、

この曲はギタートリオでやるために作った曲です。自分に足りていないテクニックを曲に入れ込んでエチュード的にやれたらと思いました。ちょっとフラメンコっぽいのはフラメンコへの憧れからです。しばらくタイトル決めてなかったんですけど、周りのかたから、白波がたつようなイメージがある、というご意見があったので。

◆4. Carinhoso/Pixinguinha
---ブラジルのPixinguinha(ピシンギーニャ)の曲で、ブラジルでとても愛されている曲だそうですね。
優しさを感じます。この曲を選んだ経緯や、またピシンギーニャについてどのように思っていらっしゃるか伺えますか?


越田:ピシンギーニャを知ったのはピエールバルーさんのドキュメンタリー映画"サラヴァ"です。
魅力的なオジさんですよね。
彼のラメントっていう曲も大好きなんです。
僕のレパートリーの中にショーロの曲を入れたくて選びました。

◆6. Infância /Egberto Gismonti
---ブラジルのピアニスト、ギタリストであるEgberto Gismonti(エグベルト・ジスモンチ)の曲。
技巧的で難しそうです。この曲について制作エピソードなどございましたら教えて頂けますか?


越田:そうですね、難しかったです。
っていうか難しいです。レコーディング後もライブでやってますが毎回闘いです。
とにかく精度を高めて成功確率を上げるためため日々精進です。

◆7. Twenty Years/Taroma Koshida
---越田さんのオリジナルで、アルバムタイトル曲。このタイトルや曲に込めた思いを教えて頂けますか?
優しさ、しみじみした情緒、それだけではない想いも感じました。ギターで歌っていらっしゃるんだなあっていうことがストレートに伝わります。


越田:この曲を書いたのは2009年、僕がミュージシャンを目指してちょうど20年。20年経つとこういう曲も書くようになるのかと思いTwenty yearsと名付けました。
Twenty Years と名付けてみてあらためて、1人の人間にとって20年って長い、と知りました。
その間にどれだけの出会いや色々な経験をしてきたことか。
歴史の教科書では一行にも満たない時間ですけどね。

◆9. Lamentos do Morro /Garoto
---ショーロギターの祖GAROTOの曲で、国内アーティストの演奏録音はほとんど残されていないとのこと。
シリアスな雰囲気ですが後半希望の光が射すような? この曲を選んだ経緯を教えて頂けますか?


越田:マルコペレイラっていうブラジルのギタリストがこの曲をバンドと一緒に録音していて、それがすごく好きなんです。

---ここからは越田さんの音楽ヒストリーについてお伺いします。
まずは子供のころ、最初に音楽を意識したのはいつごろどんな音楽ですか?


越田:うーんなんだったのかなー。
父がクラシックの音楽にあわせて指揮者のものまねみたいなことして、母が爆笑してたりとか、、、
抒情歌のレコードはよく親がかけたりしてましたね。

---9歳からギターを始められたそうですがそのきっかけは?

越田:近所にギター教室があったんです。

---学生時代はバンドなど音楽活動をされていましたか?

越田:してました。
中学生時代から友達と洋楽のコピーバンドやったりして、
大学時代は中南米音楽をやるサークルに入っていて、、、そこからずっとつながってますね。

---学生時代によく聴いたジャンルやアーティストを教えて頂けますか?

越田:パットメセニーやジョンスコフィールドみたいなジャズフュージョン系のものやジャヴァン、ミルトンナシメントのようなブラジル系、松岡直也さんの作品やファニアオールスターズ、オルケスタデルソル、パキートデリベラなどサルサ、キューバ系などのものとか。

---プロになったきっかけを教えて頂けますか?

越田:オーディションに受かったとか、なにかの賞を取ったとかっていうようなはっきりしたきっかけっていうのはないんです。
何をしてプロになったか、っていうのは意見が分かれるところでしょうが、多分最初にギャラらしいギャラをいただいたのは、四ツ谷のサッシペレレ。小野リサさんのお父様が作ったお店です。若い頃すごくお世話になりました。
当時はブラジル音楽をやりたがる若手が少なかったから可愛がってもらえたのかも。

---このWEBマガジンの恒例企画です。
越田さんにとってのCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか?


越田:全然ブラジル音楽関係ないですけどNancy Wilsonが歌うThe way it goesです。
クルセイダーズのジョーサンプルの作品です。



---今後の夢や、こんなアルバムを作りたい!などの展望を教えて頂けますか?

越田:ブラジルのミナスやアルゼンチンのブエノスアイレスで現地のミュージシャンと交流したり録音出来たりしたら最高だなー、と思ってます。

-----どうもありがとうございました。今後の作品も楽しみにしております。











『Twenty Years』Taroma Koshida

1. Desafinado/Antonio Carlos Jobim
2. Playas del Este/Cacho Tirao
3. Onda Blanca /Taroma Koshida
4. Carinhoso/Pixinguinha
5. Samba de Uma Nota Só (One Note Samba)/Antonio Carlos Jobim
6. Infância /Egberto Gismonti
7. Twenty Years/Taroma Koshida
8. Conversa de Botequim/Noel Rosa
9. Lamentos do Morro /Garoto
10. Garota de Ipanema/Antonio Carlos Jobim

発売日: 2018年06月20日
レーベル:Musilogue
規格品番:ML-008




◆越田太郎丸 Taroma Koshida プロフィール:

9歳からギターを始める。大学時代より各種イベントに出演。 ボサノバとクラブミュージックを融合させたユニット『Prismatica』のギタリストとして1997年にCDデビューしベスト盤を含む7枚のアルバムをリリース。 アントニオ・カルロス・ジョビン、トニーニョ・オルタ、ジョアン・ボスコ、 など主に ブラジルのアーティストから作曲、編曲、奏法の影響を受けブラジル音楽を軸 に演奏活動を展開。 ギター以外にカバキーニョ、チャランゴ、ウクレレ、マンドリンなども演奏。 ブラジル音楽をこよなく愛するも、その活動はブラジル音楽の範囲にとどまらず、これまでに岩崎宏美、辛島美登里、姿月あさと、遊佐未森、石丸幹二、葉加瀬太郎、Jazztronik、coba、Le Velvets、瀬木貴将、NAOTO、ウェイウェイウー、Yae、中孝介、城南海(順不同)など 様々なアーティストのライブサポートやレコーディングに参加。映画のサウンドトラックやCMの演奏も多数。
上記『Prismatica』のほか『Bossa do Mago』『森』などのバンドにも参加し、作曲・編曲を手掛ける。
ソニープレイステーションの人気ソフト「グランツーリスモ5」には ボサノバ系の曲など、オリジナル5作品を提供。海外ユーザーからの評価も高い。
また客船「飛鳥」ワールドクルーズでのソロ演奏をきっかけに、国内各地でソ ロ演奏を展開。
ピアニスト榊原大とのデュオ『男子二楽坊』やピアソラ作品を ピアソラスタイルで演奏するタンゴバンド『TANGO OGNAT』は全国的にファンも多い。最近では映画(タランティーノ作品など)で使われているロックナンバーをモチーフにしたライブを企画するなど意欲的に活動を展開。
2018/6/20にガットギター独奏によるアルバム"Twenty Years”をリリース。

Taroma Koshida Official Blog
http://taroma.air-nifty.com/

Musilogue(レーベル)Twitter
https://twitter.com/Musilogue2018

♪最新Live information
詳細・ご予約等については必ず越田さんのサイトをご確認下さいますようお願い致します。

2017/7/4 (水)
『越田太郎丸、ただすけDuo』
ただすけ(Piano)
越田太郎丸(Guitar)
【場所】小岩・JAZZ HOUSE COCHI
【時間】START 20:00
【料金】2,800円(税込)

2017/7/9(月)
『越田太郎丸 solo LIVE』
越田太郎丸(Guitar)
【場所】青山・praca11
【時間】OPEN 18:30 START (1)19:30 (2)21:00
【料金】\2,200 + order

2017/7/10(火)
『アンデスの風に吹かれて 瀬木貴将コンサート』
瀬木貴将(サンポーニャ・ケーナ)
榊原大(Piano)
竹本一匹(Percussion)
越田太郎丸(Guitar)
【場所】名古屋・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【時間】OPEN 18:00 START 18:30
【料金】全席指定 ¥5,500

2017/7/12(木)
『フルート&ギター
デュオコンサートと日本酒の夕べ』
深津純子(Flute)
越田太郎丸(Guitar)
【時間】開宴 18:00〜20:00 演奏 19:00予定
【料金】10000円
(税込、演奏、料理、日本酒と焼酎2時間飲み放題)
【場所】浅草・喜多屋 浅草別邸

2017/7/13(金)
『Rie de Janeiro』
鈴木利恵(Vocal/Percussion)
嶋康晃(Piano)
utako(cholus)
ゲスト:越田太郎丸(Guitar)
【時間】OPEN 19:00 START (1)19:20 (2)20:40 (2)21:50
【料金】予約:2,800円+税 (当日:300円アップ)
【場所】水道橋・東京倶楽部

2017/7/14 (土)
『柏木広樹 チェロ・ライブ 2018 「夏の宴」』
柏木 広樹 (Cello)
松本 圭司 (Piano)
天野 清継 (Guitar)
越田太郎丸(Guitar)
【時間】OPEN 16:00 START 16:30
【料金】前売 ¥6,000(税込) (要1drink ¥500)
【場所】名古屋・SPADE BOX

2017/7/15(日)
『柏木広樹 チェロ・ライブ 2018 「夏の宴」』
柏木 広樹 (Cello)
松本 圭司 (Piano)
天野 清継 (Guitar)
越田太郎丸(Guitar)
【時間】OPEN 15:00 START 16:00
【料金】前売¥6,000(税込) (要1drink ¥500)
【場所】京都・Live Spot RAG

2017/7/23 (月)
『伊藤麻子 ソロ&デュオ vol.1』
伊藤麻子(Flute)
ゲスト:越田太郎丸(Guitar)
【時間】OPEN 19:00 START 19:30
【料金】2500円(+2オーダーお願いします)
【場所】四ツ谷・小さな喫茶店homeri

2017/7/25(水)
『越田太郎丸 Receita de Canja em 水戸 vol.2』
啼鵬 (Bandneon)
光田健一 (Piano)
柏木広樹 (Cello)
越田太郎丸(Guitar)
【時間】OPEN 17:30 START 18:30
【料金】¥4,500(ミニマム2オーダー制)
【場所】水戸・ガールトーク

2017/7/27(金)
『Jazztronik presents Musilogue in 出雲』
野崎良太(DJ)
越田太郎丸(A.Guitar)
井上新(Guitar)
【時間】DJ start 17:00 Live start 19:00
【料金】前売 :3300円 当日 :4000円
通し券:5500円(27日出雲Horizon珈琲、28日松江カラコロ工房)
【場所】出雲・Horizon珈琲

2017/7/28(土)
『Jazztronik presents Musilogue in 松江』
野崎良太(Piano)
木川保奈美(Percussion)
井上新(Guitar)
越田太郎丸(A.Guitar)
【時間】Open 18:30 Live Start 19:00
【料金】前売 :3300円 当日 :4000円
通し券:5500円(27日出雲Horizon珈琲、28日松江カラコロ工房)
【場所】松江・カラコロ工房

2017/7/29(日)
『Jazztronik presents Musilogue in 鞆の浦(とものうら)』
野崎良太(DJ)
木川保奈美(Percussion)
井上新(Guitar)
越田太郎丸(A.Guitar)
【時間】OPEN 19:00
【料金】前売 3,000円 当日 3,500円
【場所】鞆の浦・Kitchen NATTY

2017/7/30(月)
『Jazztronik presents Musilogue in 岡山』
野崎良太(Piano)
木川保奈美(Percussion)
井上新(Guitar)
越田太郎丸(A.Guitar)
【時間】OPEN 18:30 START 19:00
【料金】前売 : 3,500円 当日 : 4,000円
(ドリンク代別 600円)
【場所】岡山・城下公会堂

2017/7/31(火)
『Jazztronik presents Musilogue in 神戸』
野崎良太(Keyboard)
木川保奈美(Percussion)
井上新(Guitar)
越田太郎丸(A.Guitar)
【時間】OPEN 19:00 START 19:30
【料金】前売 : 3300円 当日 :4000円 全て税込
【場所】神戸・Celsea de Rumba




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