今回ご登場頂くのは仙台出身、仙台在住のジャズサックスプレイヤー熊谷駿さん。
昨年12月にアメリカ ボストンのバークリー音楽大学を卒業して帰国されたばかりだが、帰国するやいなや音楽事務所MusicOffice Bop Windを立ち上げ、生徒さんにサックスを指導なさっている。また9月にはニューイングランド音楽院修士課程への留学が決まっており、再び渡米するという熊谷さんに、再び渡米するにあたっての決意、そしてこれまでの音楽キャリアなどお会いして詳しく伺った。アメリカでの大学生活のお話は、これから留学を考えている方の参考になることがギュッと詰まっている。ひたすら前進を続ける熊谷さんのお話は元気が出ることうけあい。じっくり楽しんで頂きたいインタビュー内容になった。(2017年7月)


---まずは8月20日、エルパーク仙台にて開催される「BEBOP EXPRESS〜熊谷駿凱旋ジャズコンサート〜」のことからお伺いしたいと思います。
祖田修さん(Piano, Key)、藤村竜也さん(Bass)、渕雅隆さん(Drums)のお三方とご一緒に演奏されるそうですね。皆さんとの出会いのきっかけについて教えて頂けますか?


熊谷:僕は高専を出てから神戸の甲陽音楽学院に入学しました。実際僕が音楽活動を始めたのは神戸に行ってからなんですね。そこで知り合った、関西の第一線で活躍しているプレイヤーの方々です。
仙台にはゆかりのないプレイヤーだと思いますが、今回せっかく凱旋ジャズコンサートとして開催するので、彼らを呼んで演奏したいなあと思いました。

---どんな内容のコンサートになる予定でしょうか?

熊谷:初めてジャズを聴かれる方でも楽しんで頂けるような企画を考えております。
他の音楽と比べると、ジャズはなかなか聴くまでに至らないこともあると思います。
ジャズを初めて聴かれる方でも楽しめるような内容、選曲をしています。皆さん知っている曲があると楽しめると思うので、コンサートの中にかなり入れる予定です。オリジナルも作曲しているところです。

---熊谷さんの事務所では毎月ミニライブのような企画をされているそうですね。

熊谷:『マンスリージャズナイト』という企画です。
目的は地域の皆様に少しでも生演奏を気軽に聴く機会をと思い、この4月から始めました。

---つい最近始められたのですね。

熊谷:もう少し早く始めたかったのですが、アメリカから帰国してから事務所の準備が忙しくてそうもいかず、結局4月からになってしまいました。

---演奏はお一人でのサックス演奏ですか?

熊谷:そうですね。バック音源をつけての演奏です。
事務所には大型プロジェクターがあるので、僕が留学していたボストンの夜景とか景色を映しながらジャズの演奏をしています。





---熊谷さんが主に演奏されているのはどのサックスなのですか?

熊谷:僕はアルトサックスです。ただテナーサックスもやりますし、ソプラノ、バリトンも演奏しますね。
ソプラノ、アルト、テナー、バリトン、4種類全部吹けないとアメリカではやっていけないと言われてました。それにプラスしてフルートとクラリネットというのは「基本3種」って言われており、アメリカでは演奏出来ないと使いものにならないぐらいです。
在学中はクラリネットやフルートを練習して出来るようになりました。

---バークリーを出て帰国されて、すぐに音楽事務所を立ち上げるなんてアクティブですよね。事務所の設立はどういった経緯ですか?

熊谷:こちらではビンテージサックスを70本以上所有してるんですね。
今までサックスという楽器の特性を研究していましたが、このままこのサックスを展示するだけではもったいないと思うようになりました。
演奏活動の中から、ぜひサックスという楽器を用いて皆さんに貢献出来たらという思いからサックス専門の事務所を立ち上げました。
今はサックス専門ですが、将来的には木管楽器全般に広げていきたいと考えております。

事務所ではビンテージサックスのレンタルをやっております。
ビンテージサックスってなかなか触る機会がないと思うのですが、例えば楽器フェアにビンテージサックスを貸し出して、来場者がビンテージサックスを触れる機会を提供できたらなと思っています。
サックスという楽器自体触れる機会がない方が多いと思いますので、サックスをもっと広めたいという気持ちもあります。





---ビンテージサックスはどうやって集めたのですか?

熊谷:アメリカの楽器屋さんを見て回ったり、アメリカのネットで探したり、かなりの年数かけて集めました。セルマーというメーカーが有名なんですけど、弊社ではビンテージのセルマーシリーズはコンプリートしています。

同じセルマー社のサックスでも作りとかサウンドだったり、毎年発売される中で変わってきていて、そういうのも僕の中ではすごく面白くて。
歴史をたどりながら、「どういう背景からこういう楽器ができたんだろうか?」っていうのを研究しています。
来年あたり、出来ればビンテージサックスに関する講演をしたいと構想しています。

---講演というと、説明とかお話中心なのでしょうか?

熊谷:はい、それにプラスして実際に音色を聴いてもらったり、時代背景によって聴き比べると違いも分かると思うんです。

---熊谷さんはすごく勉強家というか、研究熱心な方ですね。

熊谷:僕は演奏も好きなんですけど、どちらかというと教えることもすごく好きで。
9月からニューイングランド音楽院の修士課程に進学するのも、やはりジャズの研究をさらに深めて実際にジャズを勉強したいという方々に学んできたことを教えたいというのがあって・・・。一番の仕事としてやっていきたいんです。
仙台ではジャズは盛んですけど、もっとジャズを勉強したい人向けに、東京や大阪に行って講演やクリニックを受けなくても、仙台でもジャズが学べる場というのを作りたくて。

サックス人口も、学校の吹奏楽部でサックスを演奏している方もいるわけで決して少なくないと思います。その中で上手くなりたい、向上したいという気持ちの人も沢山いると思うんです。
僕の知識がそういう方々に何か貢献出来るようなものになればいいなと思っています。

---そういうお気持ちで事務所を立ち上げたり進学されることになったのですね。
現在事務所ではサックス教室もされているそうですが、生徒さんは何人ぐらいいらっしゃるのですか?


熊谷:10人ぐらいですね。4月から始めたところ、ちょうど僕の大学院の結果が出まして。
実は今年の2月にアメリカのボストンに行って最終オーディションを受けてきたんですが、100人受けて2人ぐらいしか受からないようなかなりの最難関なので僕も正直、結果は難しいだろうなと考えていたんですね。
で、結果通知が来て、合格を頂きました。

9月からはバーチャルレッスンという形で、あたかもそこに先生がいるかのようなレッスンを考えております。

---バーチャルレッスンですか?具体的にはどんな感じで行うのでしょうか?

熊谷:例えばSkypeのようなサービスを利用するレッスンですと、音の問題とか時間差の問題が出てくると思うので、その改善を考えています。
音響システムも持っておりますので、実際に生徒さんがうちの事務所のレッスン所に通ってきて、実際に対面でレッスンをしているような感じのオンラインレッスンになりますね。

生徒さんたちも仙台駅前なら通いやすいのに、皆さんわざわざ八木山(注:事務所のある地域)まで通って下さって。
小学生から上は60代まで来て頂いています。
単発で、ピアノを演奏されている方がジャズ理論を学びに来ることもあります。

---ジャズ理論も教えていらっしゃるんですね。

熊谷:はい。ジャズのアドリブの取り方というのは独学ですとなかなか難しいものがあるんですね。
どのようにアドリブというのを作ればいいか?というところを教えたりもしています。
アドリブといえば感性で、という方もいると思うんですけど、アドリブにも理論があって組み立て方というのもありますからね。

---中途半端な知識で申し訳ないですが、リディアンとかミクソリディアンなどのスケールを覚えて、コードにのせて、という感じで組み立てるのでしょうか。

熊谷:確かに理論書で進んでいくと、そういう形にはなるんですけど、僕のレッスンではコードだけを見た時に、T度とV度しか使わないでアドリブをとって下さいとか。
スケールから入ってしまうと使える音は多くていいんですけど、形というものが出来ないんです。
やはりリズムというのが大切ですし、使える音を制限してそれでどれだけ自分が表現出来るか?っていうところから教えています。
それでだんだん音数を増やしていって、最終的に「実はこのスケールが使えるんだよ」って学んでいったほうがアドリブを組み立てていく上で、最終的に曲をみた時に「あ、この曲はこういうコードだから、スケールというよりもこの音が使えるからこういう風に組み立てられるな」という風に考えられるようになります。

---私事ですが、以前エレクトーンを習っていた時に即興演奏が苦手でした。フェイク、つまりメロディをちょっと崩すだけでもグダグダになってしまうんです。

熊谷:よく「自分の思ったとおりにやればいいんだよ」っていいますが、そう言われても、「どう崩せばいいんだ?」って感じですよね。
僕のレッスンですと、譜面通りに吹くのはもちろんなんですけど、もう一つ、どういう風に崩すか?たとえばどんな風に音を入れてみるか?というところまでやらせるんです。

フェイクの仕方もいろいろ方法がありまして、勉強していく上で、他の曲でも出来るように指導していますね。

---実践的に習えるのはいいですね。自分は、まずやってみて!と先生に言われて弾いてみるんですけど、どうせうまく出来ないしという恥ずかしさや、こんな風に弾いたら変かな?という照れから指が思うように動かなくて。頭の中が真っ白になって。

熊谷:僕も高校生の時、崩してみるというのを先生の前でやったことがあるんですけど、どう崩せばいいかもわからないし、崩そうとすると今度はリズムにのれなくなり・・・なかなか難しいですよね。
どうしたらいいんだろう?というところをちょっと教えてもらえれば結構出来るんですけど、なかなかそのきっかけというのが難しいところではありますよね。
簡単に出来るようなものではないので・・・。





---熊谷さんは2016年12月にバークリー音楽大学Performance科を卒業なさったとのこと。
バークリーに入ろうと思ったきっかけや理由を教えて頂けますか?


熊谷:ビバップという1940年代のジャズの研究をずっとしたかったんです。
18歳の頃に教えて頂いていたのが仙台の一戸祐三郎先生というサックスプレイヤーなのですが、その一戸先生にビバップを教えて頂いたのが僕がジャズにのめりこんだきっかけです。

それまでジャズというものに興味がなかったのですが、ビバップを知り、チャーリー・パーカーやソニー・スティットの演奏を聴いて、「うわ、ジャズってこんなにかっこいいんだなあ!」って感銘を受けました。それからビバップというものをずっと勉強してきました。

プロを目指すようになってからは、やはり神戸(甲陽音楽学院)でビバップを勉強したかったのですが、ビバップを研究されている方って少ないんですね。それで実際、本当にビバップを勉強したいのであればアメリカに行くべきだと決心しまして。
甲陽音楽学院はバークリー音楽大学と提携校なんです。それならバークリー音楽大学に行ってビバップを研究しよう、そう思ってバークリーに行くことを決意しました。

---どのような観点からビバップを勉強されたいと思ったのでしょうか?

熊谷:ジャズは1960年代にはモードスタイルという形になりまして、ジョン・コルトレーンやマイルス・デイヴィスが演奏していた時代には音形的になめらかというか、聴いた感じなめらかな演奏・流れるような演奏が特徴なのですが、それに比べてビバップというのはアップダウンが激しい演奏で、そういうところが僕の中でかっこいいな!と感じました。

バップには3種類、ビバップ、ハード・バップ、ポスト・バップとあるんです。
その後にモードスタイル、マイルスの教会旋律というかリディアンとかミクソリディアンを用いたアドリブのとり方がそのあたりで一気に広まりまして。
ジョン・コルトレーンもハード・バップをやってました。コルトレーンの本当に初期の頃ですね。有名な「ジャイアント・ステップ」のあたりですとモードスタイルに移行してるんですが、コルトレーンが本当にプロとして始めた頃のレコードを聴くとハード・バップの演奏をしているものもあるんです。

ジャズにはスイングの時代、ニューオリンズの時代、シカゴの時代などがありますが、初めて聴いた時から僕の中でビバップだけがかっこいいと思ったんです。ビバップを今まで続けてるルーツですよね。

---アメリカで研究となると英語の文献を読むわけですよね。

熊谷:そうですね。アメリカに行くとビバップの本とか、チャーリー・パーカーの自叙伝、日本では発売されていないような資料が沢山あるんです。
バークリー音楽大学在学中はチャーリー・パーカーとソニー・スティットの演奏技術の比較をしていました。
なぜその2人を比較して研究したかというと、実はソニー・スティットって「チャーリー・パーカーのコピーだ」ってみんなに言われてるんですね。それぐらい、チャーリー・パーカーに似た演奏をするプレイヤーなんですけど、でも僕はこの2人は全然違うんじゃないかな?技術的に違うということを仮定してそういう研究をしてたんです。それで論文も書きました。

---英語で論文を書いたり研究なさったり、ご堪能なんですね。

熊谷:いえいえ、入学したばかりの頃は本当に英語ダメだったんです。悔しい思いも沢山しました。必死に勉強してなんとか卒業できたんです・・・。
日本にいた頃から英会話教室にも通って、大丈夫かな?と思って入学したのですが全然通じなくて。
最初の3ヶ月は音楽より英語のほうを勉強してたんじゃないかな?っていうぐらいでしたね。

日本では手を挙げる習慣ってあまりないじゃないですか。アメリカでは逆に手を挙げない人がいないぐらい。ディベートやグループセッションは実は今でも苦手ですね。調べてプレゼンテーションで発表するとか、そういう授業が本当に多かったです。

---アメリカでの生活はどんな感じでしたか?

熊谷:音楽は言葉は関係ない、音楽は世界共通ってよく言いますよね。僕もそう思いながらアメリカに渡ったわけですけど、言語の壁というのはあるなあと思いました。英語がしゃべれないというだけで相手にされなかったり。
スーパーマーケットに入ると、アメリカでは気さくな人が多いのでレジの間に話しかけてきたりとか、店で注文している間に会話が始まったり、横断歩道待ってる間に声かけられたり、そういうことが多かったので・・・外に出るのも億劫になりました。

---治安などは大丈夫だったのでしょうか。

熊谷:ボストンはとても平和なところで、学生街といってもいいほどです。
マサチューセッツ工科大学やハーバード大学など、大学がとても多い地域なんですね。
僕自身、夜遅く出歩かないよう心がけていたので危険な経験は無かったですけど、でも友達の話を聞いたりすると、差別的なことをされた経験のある人もいるようですね。
例えば英語以外の言語をしゃべっていると、「ここはお前の国じゃないんだからその言語は話すな」と言われたり。そういう話はよく聞きましたね。

でもボストン自体はとても平和で、緑が豊かでちょっと仙台に似ているところもあって住み心地のいいところです。




---2017年9月にはニューイングランド音楽院に留学されるそうですが、このニューイングランド音楽院もボストンにあるのですね。ニューイングランド音楽院はバークリーに近いのですか?

熊谷:はい、歩いて10〜15分ぐらいのところです。
ボストンって、本当にあちこちに大学があるんですよ。10分歩けばまた別の大学があるような。
再びボストンに住むことに関しては心配はないですね。
ただ、今度は修士課程のほうなので、授業についていけるかというのが不安ではありますけど。

---Jazz Peformance科 サックス専攻とのことですね。

熊谷:ニューイングランド音楽院は元々クラシックの音楽大学なんです。世界でも最高峰の音楽大学で、ジャズも教えているのですがクラシックに比べると新しいほうで。
ニューイングランド音楽院はアメリカの音楽大学では最古で、ボストンシンフォニックオーケストラの在籍者はニューイングランド音楽院から入られている方が多いんですよ。

ニューイングランド音楽院のJazz Peformance科というのは、学校自体があまり大きくないので、在籍者はサックス専攻ですと一学年2人しかいないような。
バークリーなら一学年100人ぐらいいるんですけど・・・。
ニューイングランドでは、サックス専攻は全校で20人いないんじゃないか?と言われましたね。

---ニューイングランドでの2年間の目標についてはいかがですか?

熊谷:ビバップの研究で、「バップ・メゾット」というのを作りたいんですね。
どういう風にしたらビバップが作れるか?いろいろな教則本は出ていますけど、僕なりのビバップのメゾットを作りたくて。
ジェリー・バーガンジーというサックスプレイヤーがいるのですが、そのプレイヤーに習いたくてニューイングランドに決めたんです。
ジェリー・バーガンジーは素晴らしいエデュケーターでもありまして、ぜひジェリー・バーガンジーとビバップの研究をして論文を書けたらと思っています。

目標というのは僕が研究しているビバップを、完成させるのは無理だと思うんですけど人生何十年かけて作りたいと思っています。
この2年で素晴らしい環境の中で、少しでも進めることが2年間の僕の目標ですね。





---ここからは、熊谷さんの音楽キャリアについてお伺いします。
まず、このCheer Up!では恒例の企画で、熊谷さんにとってのCheer Up!ミュージックを伺っています。
気分がアガる、元気が出る、落ち込んだ時聴きたくなるなどとっておきの音楽を教えて頂けますか?


熊谷:実は僕がプロになりたいと思ったきっかけの音楽があるんです。
熱帯JAZZ楽団の「セプテンバー」です。

中学3年の頃、受験に苦労していた時期がありました。
中学時代は柔道部一筋でやってきたので、部活を引退して受験勉強に集中することになった時、本当に勉強が辛くて。そんな時TVをつけたら、偶然、熱帯JAZZ楽団が「セプテンバー」を演奏している場面が映ったんですね。その「セプテンバー」を聴いた時、心が晴れたというか「ああ、音楽ってすごいな!」って思いました。そして「僕もこんな風に人を感動させられるようになりたいな」って思って、そこからプロを目指すようになりました。

その時録画したビデオを毎日すり切れるまで聴いて、それで受験を乗り切ったようなものです(笑)。
その後も熱帯JAZZ楽団のアルバムやDVD買ったりして、高校時代もずっと聴いてました。
特に藤陵雅裕さん(アルトサックス)の音がすごく好きで。

演奏に元気付けられて感動して、まさにCheer Up!ですね。
それまではプロを目指そうなんて思わなかったのに、その一曲を聴いて、こういう風に僕もサックスを演奏して人を感動させたい!と思うようになりました。
僕の人生を変えた、ターニングポイントの一曲です。

---「私の吹部時代」では、小学校で吹奏楽部に入ってチューバを演奏していた頃のエピソードをご披露頂きました。小学校3年生の時、学習発表会でブラスバンドの演奏に感銘を受け、「楽器を演奏出来るようになりたい! 」と思われたそうですね。
それ以前にも、子供の頃音楽を意識した時期はありましたか?



熊谷:特に家庭で影響を受けた訳ではないんです。
どちらかというと、家より学校でですね。リコーダーが大好きで、リコーダー2本吹きというのを小学校の時やっていたんですよ。2本持って演奏してハモるっていう(笑)。
学校の先生から「わっ、すごい!」と言われたこともありまして、そういうこともブラスバンドに入るきっかけの一つだったと思います。

---学生時代はどんな音楽を聴いていましたか?

熊谷:小中学校ではジャズは一切聴いていなかったんですが、アニメソング・・・例えば「ルパン3世」とかJ-POPとか、ゴスペラーズも好きでしたね。あとはBUMP OF CHICKENとか、ロックも好きで。
中学3年からは熱帯JAZZ楽団一筋。高校3年ぐらいからジャズ、チャーリー・パーカーなど聴くようになりました。
僕ってあまり拡げないというか、一つだけ聴くタイプの人間なんですね。

---ジャズジャイアンツで最初に好きになったのはチャーリー・パーカーなのでしょうか?

熊谷:はい。チャーリー・パーカー、ソニー・スティット、リッチー・コール。この3人しか聴かなかったですね。あとはフィル・ウッズ。
この4人を全てアルバム集めよう!ぐらいの勢いで聴いてましたね。

いろいろなアーティストを知ったのは甲陽音楽学院に入ってからです。
ジャズの歴史、ポピュラー音楽の歴史、西洋音楽史などはそこで初めて学びましたね。

---一つの物事を始めると集中なさるタイプなのでしょうか。柔道も長くされていたそうですね。

熊谷:そうですね。不器用な人間なので、あれもこれも出来なくて。
柔道は5歳から20歳までやっていました。父が柔道をやっていたのがきっかけで始めたのですが、精神面を鍛えられましたね。あとは礼儀と努力することの大切さを学んだなと思います。

サックスの練習もかなり長い時間するんですけど、そういうのも柔道をやっていたことから集中できるようになったんじゃないかと思います。




---せっかくの機会なのでプライベートなご趣味についても少しお伺いしたいです。
たとえば本や映画はお好きですか?


熊谷:僕は本はあまり読まないんです。文献や理論書は読みますけど、小説を読むと眠くなるタイプです(笑)。
映画は好きで何でも観ますね。日本では月1回ぐらい観に行きます。最近は「昼顔」とか「22年目の告白」を観てきました。けっこうミーハーです(笑)。

---音楽の映画はいかがですか?

熊谷:チャーリー・パーカーの「バード」は観ました。
あとは「セッション」。音楽大学のイメージで描かれたと思うんですけど結構好きですね。
バークリーはあんなに厳しくはなかったですけど、あの映画は僕の練習のモチベーションに繋がりましたね。

---ご多忙な中での健康法はありますか?
アメリカで過ごされるなら、体調にもいつも以上に気を使うでしょうね。


熊谷:僕はアメリカで一度も病院に行かなかったんです。
風邪も一度もひきませんでした。ひいてはいけない!っていうのが自分の中であったんですかね。

---何か気をつけていることはありますか?

熊谷:基本的なことですが、手洗い・うがいは何回もやりますね。ご飯食べる前とか、家に帰る前とか。サックスを吹く前とか。
外に出て戻ったら必ず手洗い、うがいをする、これをするようになってからですね。風邪をひかなくなったのは。

---やはり基本は大事なんですね。
ところで、アメリカも広いと思いますが、留学中はボストン以外にもあちこち行かれたのですか?


熊谷:行きましたね。ニューヨークに行ったり、僕はミュージカルの演奏者でもあるので、ボストン郊外に演奏に行ったりもしました。

---ミュージカルですか!ハリウッドとかブロードウェイで演奏したのですか?

熊谷:いえ、アメリカっていろんなところにミュージカルのシアターがあるんです。
オケピットに入って演奏してました。演目は4〜5つぐらいやったんですけど、日本で有名なのはやっていないですね。知られてるのは「シティ・オブ・エンジェル」ですね。

実際ミュージカルに入ると、木管楽器全部出来ないとダメで、一回の公演で4本から5本は吹きますね。一つの譜面で楽器3回持ち替えたり。サックス8小節吹いたら、4小節後にクラリネットのパート吹いたりとか。そういうのがミュージカルの譜面では普通です。

---アメリカの音大生でミュージカルのお仕事をされる方は多いのですか?

熊谷:いえ、サックス、ピッコロからオーボエまで吹けるプレイヤーって多くはないんですね。
アルトフルートとかバスクラリネットも、となってくるとそれほど多くないので。
日本人ということで国が違うと、なかなかこういう仕事はまわってこないんですけど、そういう点で学校を通して仕事をすることになりました。いい経験をさせてもらいました。

---狭いオケピットで、ミュージカルといえば3時間ぐらいの長丁場ですよね。

熊谷:そうですね。木管パートはリードといって、リード1〜4までいるんですけど、みんなで20本ぐらいの楽器を持ち替えて演奏しますね。
僕の夢としては、ブロードウェイのミュージカルで中のピットで演奏したいなというのがあります。今度の留学の2年の間になんとかあのブロードウェイのピットに一回だけでもいいので入れないかなと思っています。夢というか、目標でもありますね。

---叶うといいですよね!
他にも演奏のお仕事をアメリカでされていたのですか?


熊谷:そうですね。ピアノとデュオの演奏とか、あとはイベントですよね。
僕は米日カウンシルという日米の強化支援をするような団体から奨学金を頂いてまして、あとはサントリーさんからも頂いていたんですけど、日米の行事ではいつも呼んで頂いてゲスト演奏をしています。





---動画で熊谷さんのイベントでの演奏を聴かせて頂きました。いろいろなパーティで演奏していらっしゃるんですね。

熊谷:あれは留学して一カ月ぐらいの時なんですけど、日米関係の祝賀パーティがボストンであり、ゲストで呼んで頂いたんです。
あとはキャロライン・ケネディさんが出席されて、すぐ近くにいるようなパーティでも演奏しました。
その時はピアノとサックスのデュオでしたね。

---レッドソックスのオーナーさんの家でも演奏されたとか。どういう曲を演奏されたんですか?

熊谷:大学側からの依頼で招待頂きまして演奏しました。曲はジャズのスタンダードがメインですね。
お城のような素晴らしい、映画に出てくるような家でしたね。外のガーデンパーティでの演奏でした。
料理はシェフがいてどんどんその場で作るんですよ。

---まさに別世界ですね。これからまたボストンの生活が始まるわけですが、2年後帰国されてからの計画について教えて頂けますか?

熊谷:仙台に帰ってきたいと考えていますが、大学の講師としてサックスや音楽を教えるのが目標としてあるので・・・演奏家でありつつも、エデュケーターになりたいというのがあるんです。
2年後、仙台で木管専門音楽教室を作りたいと思っています。

僕自身、フルート、クラリネット、オーボエ、ピッコロ・・・木管全般演奏するんですけど、そういうものを含め、サックスだけじゃなくて他の楽器も教えられるようになりたいなあと思っています。
仙台で、今のサックス教室の規模を大きくしてやりたいなあと思っています。


---熊谷さんの帰国を楽しみにお待ちしております。本日は長いお時間貴重なお話をありがとうございました。





◆熊谷駿 プロフィール:

宮城県仙台市出身。
バークリー音楽大学パフォーマンス科サックス専攻卒業。音楽学士
10歳よりサックスを始め、サックスを一戸祐三郎氏、佐藤修氏に師事。
2012年にバークリー音楽大学提携校であるKoyo Conservatory of Musicに入学しサックスを古谷光広氏、同じくサックスとフルートをRandall Conners氏に師事。在学中よりKoyo Conservatory of Music特別奨学生に選抜され、第2回新潟ジャズコンテスト準グランプリ獲得、第5回神戸ネクストジャズコンペティション決勝グランプリ進出を果たすなど、関西にてジャズバーやジャズフェスティバル、フェリー等で精力的に活動を行う。
2014年9月よりアメリカマサチューセッツ州ボストンに所在するバークリー音楽大学から奨学金を受けると同時にサントリーホールディングス株式会社、米日カウンシルによるサントリー音楽奨学金、毎年2名の中に選抜され両奨学金を受けバークリー音楽大学3年次より編入。在学中は、サックスをBill Pierce氏、Jim Odgren氏、Jeff Harrington氏に師事。フルートをWendy Rolfe氏、クラリネットをHarry Skoler氏、オーボエをBarbara LaFitte氏に師事。
在学中より1940年代のジャズ、「Bebop」の研究を行うと共にアメリカ国内では、数多くの日米関連イベントでの招待演奏を行い、辻井伸行氏が演奏されたイベントでの招待演奏、安倍内閣総理大臣、元アメリカ駐日大使Caroline Kennedy氏が出席されたイベントにてアメリカより日本に招待されての招待演奏、レッドソックスオーナーJohn Henry氏の私邸での招待演奏も行う。
2016年12月にバークリー音楽大学Performance科を優秀な成績(Magna Cum Laude)で卒業し音楽学士を取得。
2017年2月にアメリカマサチューセッツ州ボストンに所在する国内最古の音楽大学ニューイングランド音楽院 修士課程 Jazz Peformance科 サックス専攻において数百名を超える志願者の中から例年約2名しか合格者が出ない最終オーディションを通過し奨学金付きで合格。今年度9月より進学予定。
現在は、サックス専門音楽事務所Music Office Bop Windの代表としサックスにおける4つの事業を展開すると共に、大型木管楽器(バスフルート、バスオーボエ、ファゴット)を除く全ての木管楽器を演奏するマルチWoodwindプレイヤーとして活動を展開している。日本音楽家ユニオン所属。



熊谷駿 Official WebSite
https://www.shunkumagai.com

熊谷駿Blog
https://www.bopwind.com/blog-news/

Twitter(MusicOffice Bop Wind)
https://twitter.com/mobopwind


♪最新Live情報

2017年8月20日(日)
BEBOP EXPRESS 〜サックスプレイヤー熊谷駿凱旋ジャズコンサート〜
開演:13:30〜(開場:13:00)
場所:エルパーク仙台 スタジオホール
(住所:〒980-8555 仙台市青葉区一番町4丁目11番1号 141ビル(仙台三越定禅寺通り館)6階)
入場料:前売: 大人:3,500円(当日: 4,000円)
前売:学生(高校生以下):2500円 (当日: 3000円)※要学生証提示

メンバー:
熊谷 駿(Sax)
祖田 修(Pf, Key)
藤村 竜也(Ba) 
渕 雅隆(Dr)

Liveの詳細、ご予約等は下記をご参照下さい
https://www.shunkumagai.com/live-event/







<Cheer Up!みやぎ関連リンク>

私の吹部時代
http://www.cheerup777.com/miyagi/suibujidai_kumagai.html





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