今回「Music from Miyagi」でインタビューにご登場下さるのはベーシスト、ウクレレ奏者の黒瀬寛幸さん。多彩な音楽キャリアを持ち、宮城県を拠点にしながら広く活動。ベースマガジンにもよく登場なさっています。 2021年にリリースしたアルバム『Djavaboo』のお話を中心にお伺いしました。(2021年9月) ---今回、このアルバムを出すことになったいきさつを伺えますか? 黒瀬:プロデビュー20周年を迎え、ここまでの音楽感の記録と自分の聞きたい(演奏欲とは別)音楽を具現化することがきっかけでした。 ---アルバム『Djavaboo』のタイトルの由来を教えてください。ユニークなタイトルですよね。 黒瀬:息子が2歳の頃くしゃみをするたびに「大丈夫?」と問いかけていたら彼が上手く言えなく「じゃばぶ」と返しておりました。 あまりにも可愛いことと「大丈夫。心配ない。」というニュアンスは父親としても感銘を覚えたため、忘れないためにタイトルとしました。 ---アルバムの曲ごとにお伺いします。 1.From Scratch ---華やかでなんともいえない格好良さ!ブラスの厚い響きとベースが心地よく曲の世界にひきこまれます。 黒瀬さんの作曲方法はどのような感じですか?曲を作るのは早いほうでしょうか。 また、タイトルはあとで付けるのでしょうか。 黒瀬:プロになって出会った作曲技法の実験がきっかけでした。 作ってるうちにこういうことがやりたかったと再認識し、ブラッシュアップしていき、この形になりました。 作曲は基本的に頭の中です。鍵盤が弾ければいいのですが、そこまでではないので直接楽譜に書き込みます。 音程の確認はベースギターやウクレレでやることが多いですね。 曲作りは思いつけば早いですがアイディアが出るまで唸っています。タイトルは後付けが多いですね。 オリジナルは100曲くらいありますが継ぎ接ぎして演奏することもあります故(笑) 2.Zero-One ---2011年作品。震災の悔しさを輪唱と奇数拍子にて表現なさったとのこと。曲が盛り上がるにつれ、言い様のない悲しみも伝わってきます。 ウクレレの繊細で美しい音色に驚きました。東日本大震災の瓦礫で作られたウクレレとベースを使用されているとのこと。この楽器のエピソードがあれば伺いたいです。 黒瀬:震災直後、僕たちは何もできないことを痛感していました。 現在「青い鯉のぼり」を主宰している千葉さんと話しているうちに瓦礫を構成に残せないだろうかと。 そこで楽器に転用することを考えました。全国の楽器製作社に賛同いただき、今までにギター、ベース、ウクレレ、スネアドラム、カホン、三味線、和太鼓など数多くの楽器を作ってきました。 GLAYのメンバーにもご使用いただいております。 その中の一つで、セイレーンという長野にある工房で作っていただいたウクレレです。すごく作りもよく、永く使える形にしてくださいました。 3.I had no doubts ---2020年作品。どんな気持ちを込めて作曲されたのでしょうか。ラテンファンク、心地良いリズムに元気が出ます。何度も繰り返し聴きたくなる曲ですね。 黒瀬:僕は演奏中も普段結構叫びます(笑)。サビ前なんかは「うおおおおおお!」とか大声で。自分の楽曲で叫べたらいいなと思ったのがきっかけですね。 サンバ、ラテンミュージックを専門的に勉強していた時期があってやはり僕の根底にはサンバがあります。ファンクも同様で僕が演奏したいジャンルはここに偏ります。 だったらいっぺんにやってみようと思い、それを包含するドラミングができるドラムの黒瀬理知がいたからこそできた楽曲です。 4.Rain Steps ---息子さんの事を想う曲とのこと。優しい響きにあったかい気持ちになります。 どこか切なさもありますね!ウクレレの音色は、シンプルなイメージを持っていたのですが、多彩な表情を持っていることをこのアルバムを通じて知りました。 黒瀬:息子にデレデレです。可愛くてしょうがないです。そんな彼を思うとすごく落ち着いた気持ちになります。作曲自体は遥か昔ですが彼を思って再アレンジいたしました。 彼の父親としての矜持とでも言いますか、清々しさと責任を表現したつもりです。 ---ここからは、黒瀬さんの音楽キャリアについてお伺いしたいと思います。 ベースやウクレレを始めたきっかけを教えて頂けますか? 黒瀬:友人がベースをやっていて悔しくて始めました。ウクレレはラジオの生放送で急に渡されて弾けなかった悔しさからです(笑)。 ---音楽を好きだと思ったきっかけについては、いかがですか? 黒瀬:初めは「ドラゴンクエスト3」のサントラですね。確かソウルオリンピックの頃だと思いますが、父親がCD買ってきて。そのあと「ガンヘッド」という映画のサントラにハマりました。 音楽が好きというよりも演奏している人間が好きです。 ---学生時代によく聴いたアーティストは? 黒瀬:T-SQUAREばっかりです。念願叶ってメンバーのほとんどにミュージシャンとしてお会いすることができました。 ---学生時代はどのようなバンド活動をされていたのですか? 黒瀬:T-SQUAREのコピバンです。そのバンド、まだ継続していて仙台ジャズフェス限定で活動しています。 メンバーはほとんどプロになりました...そう考えるとすごいな。 ---プロになったきっかけについて教えて頂けますか? 黒瀬:田舎でやってたライブで6弦のフレットレスベースを演奏していたら関係者の目にとまり、後日その方に会って、そこから色々お仕事いただいた、という感じです。 ---現在の活動内容について教えて頂けますか? 黒瀬:スタンスとしてはスタジオミュージシャンです。ロックから演歌、ジャズ、映画音楽なんでも参画します。 僕の場合目的と手段が逆で「ベースが弾けるなら仕事はなんでもいい」ので、なんでもやっています。 ---コロナ禍においての状況や思いについてはいかがでしょうか。 黒瀬:ご想像の通りかと思います。対面できないと音楽に関しては無力に近いです。 早くみんなの前で叫びたいですね。 ---このWEBマガジンにご登場下さる方には恒例の質問です。 黒瀬さんにとってのCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか? 黒瀬:今回のアルバムです。サウンドも演奏者も大切なもので構成されています。 自分が聞きたいものを自分が好きなメンバーで作ったのでこれ以上のものはないかなと… 何か作業しているときは「スプラトゥーン2」のサントラや、それこそ「ドラゴンクエスト3」のサントラ、2PACなどヒップホップを聴いています。 ---今後の夢について伺えますか。 黒瀬:基本的には思い描いた夢は全部かないました。 その分みんなにお返しできればと思っています。 ---どうもありがとうございました。これからのご活躍も応援しております。 『Djavaboo』黒瀬寛幸 1.From Scratch 2.Zero-One 3.I had no doubts 4.Rain Steps 発売日:2021年5月27日 現在配信購入のみ 作曲・編曲・ベース・ウクレレ:黒瀬寛幸 Sax 菊本健朗・勝部彰太・永野匡芳 Trumpet 菊田邦裕 Trombone 松本寛之 Piano 千葉一平 Keyboards 竹野靖子 Guitar 千葉敏之 Drums 黒瀬理知 Artworks 黒瀬仁 配信リンク https://linkco.re/zDS5Bgtq?lang=ja ◆プロフィール 黒瀬寛幸 Hiroyuki Kurose 12歳でベースを手にする。ファンク・フュージョンでベースに目覚めジャズ、ラテンミュージックを得意とする。 TMF ’95 全国大会オーディエンス大賞受賞等その他多数のコンテストで賞を受賞その後桜井哲夫氏、鈴木宏幸氏、深井克則氏に師事。バークリー音楽院の奨学金オーディションに合格し渡米するも同時多発テロによって帰国。専門学校、ミュージックスクール等にてベース科、ウクレレ科、音楽理論科、アンサンブル等において教鞭を執る。確かな音楽理論と日本有数のテクニックに裏付けられた演奏に定評がある。 数多くの国内外のミュージシャンとの共演。各種アーティストへの楽曲提供、CMソング、ゲームミュージック、メジャーアーティストのレコーディングやツアーサポート、舞台音楽等に演奏、作編曲者として参加。 セッション、レコーディング、バンドプロデュース、演奏等で活動する傍ら映画「つるしびな」のテーマ曲、挿入曲も担当しつつ音楽監督としてかかわる。 公式サイト https://bassmachine.thebase.in/ https://twitter.com/kurose_hiroyuki YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UCo2qhKm3JNB5IejMcu1ArfA |