中西俊博さんのご自宅は、ご自身で設計されて細部にまで凝っており、雑誌やネット等で気になっている方も多いのではないだろうか。
ご自宅にお邪魔したその日は、中西さんがギターのファルコンさんと1階でリハーサル中。
2階に上がるとカラフルな家具や雑貨など心明るくなるようなインテリアに目を奪われる。
キョロキョロしているうちに、リハを終えた中西さんが現れた。



---さっきから素敵な雑貨が沢山あって、つい見とれてしまいます。赤やオレンジ系がお好きなんですか?


中西:僕ね、何が好きというより、何かがあるとそれに合わせていくのが好きで。


---中西さんといえば、長年ジャンルの垣根を越えた音楽を演奏をされているのが魅力だと感じています。


中西:僕の中では、逆に全部同じ音楽、もっといえば「音」ですね。
メロディになっていてもなっていなくても、魅力的な音は魅力的な音なんで。
それがメロディになっている場合もあるし、なっていない場合もある。
それがバッキングとかリズムの場合もある。
そういう風に考えると、クラシックもジャズも、それこそブラスバンドも、全て一つの音っていう括りで自分が好きなものをやっている。
この考え方って、なかなか通用しないんですけどね。
やっぱりCD売り場に行ってもジャンルによって分かれてるし、よく人に「ジャンルは何ですか?」て聞かれるんだけど・・・まあいつも困っちゃうんですけど(笑)。
自分の中では好きなものをやっていると結果的にまたがっちゃうというか。


---数ある楽器の中で、バイオリンの魅力は何でしょう?


中西:バイオリンはとてもアナログな楽器で、機械の部分がほとんどない。
弦を指で直接押さえるとか、ハンマーが弦を叩くとか・・・。
管楽器も直接口で音を出しますけど、押さえる所にはいろいろ機械が付いているのが多いですよね。
バイオリンにはそれがほとんどなくて、全部アナログ。
フレットもないし、弦を直接指で押さえるし、ピアノのようにハンマーが弦を叩くとかではなく、馬の尾の毛を張った木の棒を直接手に持って擦ったり、ある意味とても原始的なので色々なニュアンスを自分で作る事ができる。

細かく言うとドとレの間には無数に音があるわけで、どうにでも、ね。
ピアノだったら間がない。でもピアノにはピアノとして別の魅力があるんだけど。
バイオリンの魅力は、やっぱりいくらでもピアニシモが出来るし、音をどんどん大きくして歪んだ汚い音まで自由に、音程がなんだかわかんないような雑音も出せるし。
そういう、表現がすごく幅広いのがバイオリンの魅力だと思ってます。

子供の頃はそんなこと思わなかったけどね。
バイオリンの曲でいい曲がいっぱいあるなあ、ぐらいの感じで。


---お部屋の中にすごく沢山の種類のバイオリンがありますね。


中西:ずっと弾いてきたものもあるし、生徒がいるんですが、生徒がよくいろんな楽器をネットで見つけて、「この楽器はどうなんでしょうね?」「この楽器を買おうと思ってるんだけど、音はどうですか?」って質問されるんで、そういうのに答えられるように、めぼしいものがあると買って置いておいて、生徒に貸し出したり出来るように、っていうこともあって。

最初は自分が使った楽器を売って、次のを買って・・・ってやってたんですけど、だんだんそれをしなくなって。とっておいて、次のを買うようになって。
最近は、生徒や、楽器制作者が興味持ちそうなものは買っておくようになりました。

楽器は、楽器屋さんもよく見に来ますね。こんなにエレクトリックバイオリンが揃っているところって多分ないと思うので、エレクトリックバイオリンを作っている人たちも来ます。


---弓も沢山ありますね。


中西:あまり高い弓は持っていないですが・・・。あまり僕はこだわらないほうなんです。クラシックの人たちはやっぱりこだわって性能のいいものを買おうとしますけど、僕はバイオリン弾いてるにしては誰が制作者か、などには無頓着なほうかもしれないです。個性があって、自由にニュアンスが出せれば自分にとってはいい楽器なんです。


---エフェクターも沢山持たれているとか?


中西:エフェクターは面白いですね。一人でオーケストラみたいなことができたり。


---ご自身で打ち込みもされているんですか?


中西:複雑な打ち込みは自分ではやらずにマニピュレーターを頼んで、僕が弾いたものを打ち込んでもらったり、楽譜作って打ち込んでもらったり。
例えばTVドラマの音楽を作る時は、やっぱりスピードも必要だし、そうやってお願いしちゃうことも多いです。
ただ、ものによっては自分で打ち込んで、っていうのもたまにあります。


---生徒さんはけっこう多いのでしょうか。


中西:例えば、海外にいて日本に帰ってきた時だけ来る人とか、CMや映画の音楽を作ってる人で、映画音楽を作ることになると僕のところに相談しにくる人などがいて。
そういう人って不定期なんで、時々来ては忘れた頃にまた来るっていう・・・そういう人も生徒って呼んでいいか分からないですけど、全部入れると、かなりになりますね。
バイオリンだけじゃないんでね。二胡とかフルートとかピアノとかドラム、作曲などもいろいろ(笑)。


---中西さんはエレクトーン奏者との共演もけっこう多いですよね。


中西:そうですね。元々エレクトーンでピアノに転向した人や作曲をやりたいという生徒もいます。


---今日は中西さんからぜひ即興演奏についてアドバイスを頂きたくて。
私事ですが、エレクトーンを長年習っていて、即興演奏にはとても悩みました。
エレクトーンの雑誌を読んでいても、悩み相談コーナーに「即興が苦手だけどどういうふうに練習すればいいんですか?」という質問を多く見かけます。


中西:一番最初から即興も一緒に勉強しながらいけば同時に上手くなるんだけど、日本ではほとんどの人が楽譜から入っていっちゃうので、楽譜を弾くことだけ長けちゃって、即興に関しては経験しないままずっと来ちゃうんです。
即興に関して全然何もしていないまま楽譜だけ上手くなっちゃうと、即興のレベルを引き上げるのが難しいんですよ。

何をやってもあまり弾けない人が即興をやって弾けないのは全然凹まないんだけど、テクニックが付いちゃってある程度弾けちゃう人が即興やったら全然弾けないのは凹む。そうすると、自分は即興の才能がないとか即興は下手だとか思っちゃうんだけど、そうではなくて、即興出来ないのは最初は当たり前なんで。 だからまずそれを認めて、出来ないのは当たり前で、ちょっとでも出来たら自分で「うわっ!私すごい!出来たかも」みたいな、そういう風に自分で思うことも大事だと思うんですよね。

バイオリンでいうと、演奏が上手い人ほどほどなかなか即興上手くならないですね。
バイオリンがほどほどに弾けるぐらいの人は、即興も失敗を恐れない。
年中楽譜弾いてて普通に失敗したり止まっちゃうような人が、即興止まっちゃったからといって「わっ、恥ずかしい!」とか思わない。

そういう人たちはどんどん挑戦してどんどん上手くなるんだけど。
楽譜をすごい勢いでちゃんと弾けちゃう人は、即興やると止まっちゃうっていう。
ちゃんとした楽譜なら弾けるのに、これだけ上手いのに即興やると弾けないっていうことが我慢できずに、即興は出来ないって自分で決めちゃう人が多いですね。
律儀な人とか、すごく上手い人ほど、即興はなかなか上手くならないですね。

即興を初めてやってみて、結構いいことをやっているのに、自分で「いや、こんなの即興じゃないです!」って言って認められなくなっちゃう。そういうのってすごくありますね。精神的なものもすごく大きいです。

あと、そういう人は上手く即興しようと思っちゃうからまずだめなんだけど、上手い人はかっこいいフレーズをやらないと即興だと思えないんで、それは即興じゃなくて「うまいフレーズを弾く」っていう行為であって。
楽譜もないし準備も何もない状態で浮かぶものを弾くっていうのが即興だからね。最初はコードもリズムも無くていいんです。

例えば、冬の景色があって、まるで時間が止まったみたいに雪がずっと降っていて、そこにどんな音がほしい?そんな風景にピアノのただ一つの音を連続で淡々と弾いてみたり・・・そういうのだって即興だと思うんだけど、そういう考えじゃなくてちゃんとメロディを弾かないと即興じゃない!って頭があると中々ね・・・上手い人はそうなりやすいんで。


---思い当たることばかりです・・・。
もう一つ、自分の体験ですが、エレクトーンのグレード試験でメロディ即興の課題が出されると、まずイントロをつけてちょっとメロディ崩して弾いて、途中で舞い上がっちゃって、適当なエンディングで何とか終わらせて「あー、だめだった〜(泣)」って、この繰り返しでした。
既にメロディが与えられている即興についてはいかがですか。


中西: メロディーっぽいというかフレーズっぽいで言っちゃうと、まず本人が何を弾きたいか?によるんですけど、本人が最初から、ジャズっぽく難しいものを弾きたいと思っていると、やはりコードのことやグルーヴなども勉強しなきゃならなくなる。でもアドリブを勉強したいならそれは逆で、かっこ良くなくてもいいから自分の中から湧き出るものをまず出す、っていうことをやってみて、それを体験出来てからその後にコードやフレーズを勉強していくっていうのが本当で。

本当は自分の中から出たものを出さなきゃいけないのに、楽器を弾くのが上手くなってる人はそれをしないで、「これに合うフレーズを勉強してやっていこう」と思うから、順番が逆になっちゃう。そうなると、アドリブになれたいのにかえって遠回りになる。自分で浮かんだものを弾くっていう達成感とは違って、かっこいいメロディを弾くとか、そういうほうの達成感になって。
自分の中から生まれてきたものを弾く達成感。これってホントはすごくあると思うんですね。体感してみるとたまらなく楽しいのに、そうじゃなくて、勉強したものを順番に引き出しから出して並べていく達成感になっちゃって。

そういう風にやっている人は、もちろん一応音楽として成り立つし、それはそれであると思うんだけど、本当の即興の達成感とはちょっと違うだろうなって。本当の達成感を経験したらいいのになあって思ったりするんですけど。

でも実際、勉強したものを引き出しから出してつなげていく方法で上手くなっちゃった人はそこに戻るのがすごい大変。
あと、他の勉強の仕方として、即興に対して最初はいくつもいくつもメロディを作ってそれを覚えていったりして、それを10個も20個も覚えていくと、そのメロディが楽譜を見なくてもどんどん出てくるようになって。たとえば1番から10番まで何か作って覚えておくと、1番から始まって3番に移って、フレーズがあっちいったりこっちいったり好きにつなげていって・・・そういうことをやって即興が出来るようになっていく人ももちろんいますね。


僕は生徒に即興は勉強するなっていつも言ってるんです。
ほとんどの人がまずコードを勉強しようとしちゃう。そうすると、このコードにはこういうフレーズが合うとか、この音は間違いだとかいうことを勉強しちゃって、でも結果的にそれがどんどん足かせ、手かせになって、自分から湧き出たものとは程遠いものになって、結局出てくるものがせっかくあっても、この音は合ってんのかな?合ってないのかな?これはおかしいのかも?とか、この音階は違うとか、このコードに関してこれは違うとか、やってみる前にそういうことを迷いながらやるから、出てきたものがすくすくと育つような環境に、もう既にないから。

まずは、何もコードがないところから好きに弾いたりすることから始めて、それがだんだんちょっと簡単なコードがあるところでも弾けるようになって、リズムがゆっくりのところから、リズムが速くなっても出来るようになるとか。そうやってやっていくのが一番いいと思うんですけどね。

レッスンでは最初からまず自分の中から出たものを弾くことから始めて、曲に合わせてとか、コードに合わせて、というふうにやります。同時にセンスや自分のやりたい方向を研究していけばどんどん伸びていけます。
このやり方だとアドリブする達成感は大きいだろうなって思ってるんですけどね。


---このお話を伺えたのは大きいです。同じ悩みを持つ方々にぜひ読んで頂きたいです。


中西:僕も昔エレクトーンやってましたよ。小学校に行っていた頃だけど。
たしか、トヨタの車を買うとヤマハのエレクトーンが無料で習えるっていうキャンペーンやってて、そのためにはエレクトーンを買わなきゃならないんですけど。つまりヤマハとトヨタで多分うまくやってお互いのお客さん増やそうみたいな(笑)。その頃、エレクトーン10万円だったんですよ。すごい安いよね(笑)。
10万円のエレクトーン買って、レッスンはどこでやるかというと車のショールームで、みんながいるところでレッスンやってたんです。それを僕は3回だけレッスン受けました(笑)。


---中西さんもエレクトーンをおうちで弾かれていたとは!


中西:足鍵盤オクターブしかなくて、スイッチがあって、めちゃめちゃシンプルな。


---以前エレクトーンの雑誌記事で読んだのですが、中西さんのお父様もピアノを弾かれていたとか。


中西:アマチュアですけどピアノ弾いてました。


---お父様は子供の頃の中西さんに対して、とてもユニークな練習法をなさっていたそうで。


中西:そうですね。すごい変わってましたね。
メカニックをすごく勉強してて、曲をやるというより先に手の形を徹底的にやって。
曲はあんまりやらなかったですね。バイオリンもそうですけどね。
どの指も同じ強さで音を出せることとか指の開き具合とかどの位スピーディーに的確に動くかとか。
指って癖があるじゃないですか。この指は弱いとか、そういうのを揃えていくとか、タイミングを指の癖じゃなく思ったとおりに弾けるようにする・・・。
子供の頃はメカニックな、指が独立して動くってことを徹底的にやりましたね。


---今日はぜひ作曲についてもお伺いしたいです。
作曲することにも昔からとても興味があるんですが、まずはどんな風に始めていいのか分からなくて。


中西:作曲もやっぱり同じで、自分の中から生まれた音っていうのが一番いいと思うんですよね。
でもね、色々なやり方がある。

例えば好きなものをいっぱい聴いてそれを真似してみるのも一つの手だと思うんだけどね。一人の人や一つの曲を真似したらそれは盗作になっちゃうけど、いろんな人のいろんな自分の好きなセンスを集めて曲を作るのは立派な個性だと僕は思うんですけど。
理想は鼻歌を歌うみたいな感じでメロディーが出たら一番いいと思う。
とにかく断片でもいいから作んないとね。
どんな変な曲でもいいから、何か浮かんだらそれを作って書きとって、それを僕が見て「こういう風にしたらかっこいいじゃん」「これだったらこんな風に展開したらいい曲になるね」とか、「サビで盛り上がってからここに戻ったほうがいいんじゃない?」という風にレッスンしていけますけど、最初は1小節とかでもいいからまず作らないとね。

断片や一小節のメロディしか浮かばない。そこからでもレッスンはできるんです。
「この一小節、何をどうしたいの?」という話をして、「じゃあこのメロディ、例えばこんな風にしたらいいんじゃない?こうしたらもしかしたらもっと好き?」「いや、だんだん広がっていきたい」「じゃあコードをこうしたら広がる?」とか・・・つまり僕が決めちゃうんじゃなくて「こうしたらどう?」「こうしたら広がる感じに聴こえる?だったらこれを参考に何か作ってみようか」とか、その人、生徒を誘導するというか、質問しながら一緒に考える。

生徒の中にも感覚はあると思うんですよ、広がりたいとか、なんか盛り上がっていきたいとか。淡々と時間が流れる感じにしたいとか。もっとここから元気になっていきたいとか。
そういうのを「じゃあ、こういう風にしたら元気になるんじゃない?あとこういうのもあるけどどう思う?」とか一緒にやってみる。
そうするとその人の中で、自分の気持ちが音になっていくっていうことを体感できるのね。生徒と一緒に考えるみたいな感じ。

そういうのを何回かやっていくと、なんとなくコツが分かってくる、つまり教わって作るっていうんではなく、自分の気持ちをちょっと手伝ってもらって作るみたいな。 最終的には、レッスンって全部そうなんだけどね。

教えるっていうことをやってると、多分、なかなかその人は育っていかない。

バイオリンも同じだけど、日本の教育は"教える"っていうのが多いと思うんです。でもそうすると、先生から離れた時に自分であまり出来なくなっちゃう人が多いから。やり方というか、ノウハウを教えるのはいいと思うんだけどね。その人のやりたいこととか思っていることをお手伝いしてあげると、やってることは、その人の考えやイメージしてることをやっているわけで、そうなると先生から離れても多分その人は自分のイメージを形にできる。イメージを育てる、そしてやり方の例を教えるイメージがあれば、そしてノウハウがあれば出来ると思うんですけど、イメージが浮かばない人にどんどん教えちゃうと、つまりイメージがないまま小手先のテクニックだけ覚えちゃうと、その人の個性があまり育たないし、多分達成感が違うと思うんだよね。


---達成感が大事なんですね。


中西: そうだね。やっぱり自分の弾きたいイメージを音に出せるっていいよね。
もちろん、好きな曲や難曲を間違えずに弾けるようになったっていう達成感もあって、そしてそれを聞いて楽しい人もいて、それも1つの達成感だけど・・・でもね、「この曲好きなんだよね、この曲聴けて良かった」っていうよりも、「この曲好きだったんだけど、あなたの演奏聴いたらなんかもっと好きになった」とかさ、「あなたの演奏がすごくいいね!」ってなった方が更に嬉しいんじゃない?達成感あるんじゃないかな?
そうじゃなきゃいけないって言ってるわけじゃないですけどね。
その方が、さらに達成感があるし価値もあるんじゃないかな?って僕は思う。


---ありがとうございます。自分でも作曲して中西さんに教わってみたいです。
中西さんの曲は長年聴かせて頂いておりますが、心躍る軽快な曲は特に好きで。
「スキッド・エクスプレス」「At the Corner」「HAT TRICK」「Swing in Spring」など・・・


中西:「Swing in Spring」ってね、みんなに僕の曲だって思われてるみたいなんだけど、僕の曲ではないんですよ。


---それは失礼しました。どなたかのカヴァーでしたか。(注:ヘルムート・ツァハリアス作曲)


中西:そうですね。よくね、「それ中西君の曲じゃないの!?」ってよく言われるんだけど違うんですよ(笑)。


---中西さんの曲は、聴いててワクワクするような、心がぱぁーっと明るくなるような曲が多いですが、どんなお気持ちで作ってるのか伺いたくて。


中西:僕ね、明るい曲も好きだし暗い曲も好きだし、なんにも変化がないような、音だけが存在するような曲も好きで。
暗い曲もいっぱい書いてるし、そっちのほうがどちらかというと多いかな?


---しっとりした曲、ゆったりしたバラードの曲も多いですよね。


中西: 世の中に発表しているのは、しっとりした曲の中でも、くらーい曲はなるべく出さないようにしてるので。世の中に出してない暗い曲っていうのが実はものすごいいっぱいあって、でもそう言う曲は、芝居の音楽とか映画の中とか、別のアートとコラボレーションする時とか、そういう時に使う様にしているんだ。ある意味特殊な環境かな・・・。音だけで出すと、聴いてる人がなかなかそこに入り込むことが難しいので、やっぱり明るい曲とかきれいな曲のほうがレコード会社も喜ぶし、望まれるんで・・・。


僕ね、音楽って全部想像の産物だと思っていて。
そういう風に思えばその音の世界に浸れるって感じ。なんて言ったらいいのかな、明るい曲を書く時も暗い曲を書く時も、そういうことを経験したからとか、気分がダークになってるから書けるとか、そういうのは全く関係ない。
気分がすごく暗くても明るいことを憧れて思えば、多分そういう曲になるし、もちろん失恋したから失恋の深い詞が書けるって人もいると思うんだけど。これは本当に人によると思う。僕はそういうのはなぜかあんまり関係ない。

ただ、感動した時に、割と書きやすいっていうのはありますね。
例えば映画を観て感動して気持ちが盛り上がった時に、そんなエネルギーに溢れたいい気持ちが、下がっていくのはもったいない。 だから映画を観てすごく感動した時に曲を弾いてみたり、作ってみたりっていうのは時々ありますね。 自分でもなるほど!と思った経験なんだけど、猫のお産見た時にすごい感動して、何に感動してるかわかんないですけど(笑)気持ちが盛り上がってガンガン曲を作ったりとか、そういうのはあります。


アドリブのことについてもうちょっと言ってしまうと、アドリブって、ジャズっぽいフレーズをやるのがいわゆるアドリブとは全然思ってないので、ジャズっぽい曲の時にそれをやってもいいし、ジャズっぽい曲の時に全然違うアプローチをしてもいいだろうし。
それは、その人が何をやりたいか?によると思う。
もちろん自分がやりたいだけじゃなくて、みんなが喜ぶものをやるのが楽しければ、みんなが喜ぶものをやるのも・・・ジャズファンがいっぱい来てるんだったらジャズっぽいものをいっぱいやったら盛り上がるだろうし、メンバーがロックが好きだったらロックっぽくやるのも意外な発展があって面白いかもしれない。とにかく自由に遊べばイイ。


極論を言ってしまえば、今あるその雰囲気にどんな音が合うかっていうのを自分で作っていくのはアドリブかなと思うんで、バンドがすごく盛り上がっている時に用意してきたものをやっても合わないこともあるし、盛り上がった時は盛り上がった気持ちで何かを出せばそこにリンクするし。
お客さんがシーンと聴いてたら、それに合う音をやるのがいいと思うし、間がすごくいっぱいあってちょっと弾くのがいいかもしれないし。お客さんが盛り上がってたらブワーーッとしゃべり続けるようなアドリブがいいかもしれないし。時にはお客さんの気持ちをわざと裏切って度肝を抜く、なんていうのも新鮮かも・・・勇気いるけどね。


自分の感性を鍛える為に、僕は映画観ながらいつもバイオリン持ってるんですよ。
映画観てて、たとえば銃撃のシーンになった時に、そこにはどんな音が合うだろうか?ということとか、雨の降っている朝に目が覚めてすごく悲しい出来事があったりしたようなシチュエーションがあったら、そこに「どう表現すればバイオリンが合うのか?」とか、そういうことをよくやってて。

たとえば逃走シーンだったら、激しいリズムが流れていたらそこにどんなのが合うか?とか。
急に事件が起きて飛行機が着陸して、中近東の感じの景色だったら、そこにこう・・・。映画の中にも映画音楽が流れているけど、そういうことを自分でもやったりして。
とっさにそういうことが出来るように鍛えたりしてるんですけど。
それ結構面白い。

そういうのをやっていると、本当に浮かんだことになるんだけど、ジャズばっかりやってるとジャズのフレーズばっかり自分がやるようになってだんだん手くせになってきたり、実際自分もすごく手くせはあるから。
もっと自由なフレーズ、更に言えばもっと自由な色合いや香りが出せないかな、と思って。


---中西さんでも手くせを変えたいなんて思われるんですね。こんなに自由自在に弾かれていても。


中西:出来る様になりたいことはいくらでもありますね!自分の中で、ここがこうなったらなあって思うのは。


---中西さんは以前、フルートの赤木りえさん達と「アコースティック・クラブ」というユニットをなさっていましたね。今は自己のバンドは、「Reel's Trip」「Cool Groovin'」「爆裂クインテット」で活動されているとか。


中西: 最近はReel's Tripでやる機会が多いかな。
「Cool Groovin'」は11人編成でなかなかやる場所がなかったり、リハーサルも大変なんで、事実上出来てないんですけどね。でも解散したわけではないんですけど。
あと、いろいろ細かいのもやっています。
マヌーシュ(注:Manouche jazz)のバンドとか、「エスロマニア」、これはデュオのグループで、エスニック、ロック、マニアックっていう感じで。これはインストでしかできないようなかなりマニアックなことを。プログレっぽいものとか。本当にインスピレーションだけで曲を瞬間的に作りながら演奏してみたり。「Reel's Trip」のファルコンさんと2人でやってます。


---ニューアルバムのご予定はいかがですか?


中西:出したいとは思ってます。今年か、来年。
デュオとか小編成でやってるグループもあるのですが、そういうアルバムは今まであまり作っていなくて。林正樹くんとの『Ballads』っていうアルバムしか小編成のは出してないので。ギターとデュオとかピアノとデュオとか、そういうのをやろうという計画はあります。


---インタビューの恒例として、「あなたの"Cheer Up!"ミュージックを教えて下さい」という質問をさせて頂いております。


中西:好きなものでもいいのかな?
僕はトゥーツ・シールマンスがすごく好きなんですよ。共演したこともあるんですけど。
トゥーツ・シールマンスの中でも、元気がいいものもあるけど、僕は彼の切ない感じのが好きなんです。ビル・エヴァンスと一緒に作ってる『Affinity』っていうアルバムがあって、すごい好きで。
聴くと涙が出そうになっちゃうんですけど。だからそれで元気が出るとかっていう単純なものではないんだけど、何かエネルギーをもらっているのは確かで。
"Cheer Up!"に合うかどうかは分からないけどね。すごい切ないアルバムなんだけど、エネルギーが僕に来るんだよね。


---今日は沢山の貴重なお話をありがとうございました。








中西俊博 プロフィール:

1956年 東京都生まれ。東京芸術大学卒業。
1985年にリリースしたファーストデビューアルバム「不思議な国のバイオリン弾き」が10万枚を超す大ヒットを記録。
以降、クラシック、ジャズ、ポップスなど多様なジャンルを表現するバイオリン奏者として音楽界の第一線で活躍。
ジャズバイオリンの巨匠ステファン・グラッペリとの共演、フランク・シナトラ、ライザ・ミネリ、サミー・デービスJr、クインシー・ジョーンズ、のコンサートでソリストやコンサートマスターを務める等、国内外の様々なアーティストとの共演も多い。
また、楽曲制作、編曲も多く手がけ、桑田佳祐、井上陽水、坂本龍一などのアルバム制作をはじめ、数多くのアーティストの楽曲制作、編曲を担当。
映像の世界での活躍も著しく、手がけたテレビ番組やCM音楽は150曲を超え、ヨーロッパで権威ある「LONDON国際広告賞2000」にて、TVオリジナルミュージック部門のファイナリストを受賞するなど国際的に高く評価されている。
さらに、舞台音楽にも才能を発揮し、「ア・ラ・カルト」(青山円形劇場/1989〜)、東京国際芸術祭2004音楽劇「ファウスト」(世田谷パブリックシアター/2004)等、数多くの舞台の音楽監督を担当。
自身のコンサートも数多く開催しており、1998年より毎年青山円形劇場にて公演を行っている「Leapingbow」はオリジナリティと高いクオリティが評価され、毎年人気を博している。
現在は、大きなプロジェクトと平行しながら、リーダーを務める「Reel's Trip」「Cool Groovin'」「爆裂クインテット」など、自己のバンドの活動を精力的に行うと共に、ライブ活動も積極的に展開。
バイオリンの枠を超えた表現を追求し続けており、エレキバイオリンや多弦バイオリン、エフェクターなども使いこなし、自ら楽器の制作を行っている。
また、電気工具、レンガ、ボイスなども積極的にアンサンブルに取り入れ、全く即興のみの演奏も行っている。
2012年7月25日にFLMEより、中西俊博ベストアルバム「ゴールデン☆ベストNo.1,No.2」が発売。


中西俊博 最新ライブ情報

※変更がある場合もございますので、詳細やお問合せ先等につきましては、随時下記公式サイトで予め確認をお願い致します。(編集部)
http://couleur.bz/


1/28 ♪TRIO♪ 〜Miyuki Onitake with Friends at DOLPHY〜 横浜 ドルフィー

出演:鬼武みゆき(Pf)中西俊博(Vln)鳥越啓介(Bs)
日時:2015年1月28日(水)  Open 18:30 / Start 19:30
CHARGE:予約¥3 000 / 当日¥3300 (オーダー別)
会場:横浜市中区宮川町2-17-4 第一西村ビル2F DOLPHY
*TEL::045-261-4542
*URL:http://www.dolphy-jazzspot.com/
ご予約:お店に直接お電話、またはお店のご予約フォームから。


2/1  21st BAND STAND FUNABASHI〜社会人ビッグバンドジャズの祭典!〜
≪GUEST出演≫ 船橋 船橋市民文化ホール

出演:≪GUEST出演≫中西俊博(Vln)
   林靜誠とシーフレンド楽団 / ビッグバンド・バグス 
   サウンド・ストリーム・ジャズ・オーケストラ
   ザ・サードコースト・ジャズ・オーケストラ
   日本大学 ブルー・スウィング・ジャズ・オーケストラ
日時:2015年2月1日(日)  Open 15:00  / Start 15:30
TICKET:指定席 ¥2200 (文化ホールのみ取り扱い)
自由席 (前売)¥1800・(当日)¥2000 
※高校生以下 自由席は、各1000円引き ※3歳以上有料
会場:船橋市本町2-2-5 船橋市民文化ホール
*TEL:047-434-5555(9:00〜17:00 / 月曜休館)
ご予約:お電話、またはホール窓口で。


2/10 《再び!中西俊博&栗林すみれ♪》〜バイオリン&ピアノでJAZZな夜〜vol.2
                 六本木 Softwind  ◎お薦め!リーダーライブ◎

出演:中西俊博(Vln)栗林すみれ(Pf)
日時:2015年 2月10日(火) Open 19:00 / 1st 20:00〜20:40 / 2nd 21:00〜21:40
CHARGE:¥3200+ご飲食代+消費税
会場:東京都港区六本木4-10-8 六本木パーレットビル6F  Softwind
*TEL:03-6808-7337
*URL:http://www.softwind.jp/
*ご予約はお電話またはお店のHPご予約フォームから。


2/14 バレンタインスペシャル・・・バイオリンとピアノの午後♪  
            大塚 グレコ ◎お薦め!リーダーライブ◎

出演:中西俊博(Vln)森下滋(Pf)
日時:2015年2月14日(土) Open 14:30 / Start 15:00
CHARGE:¥3500 (季節の一品付) +ご飲食代
会場: 東京都豊島区北大塚1-34-18  大塚グレコ 
*URL: http://www.greco.gr.jp/
ご予約:お店に直接お電話、またはメールで。


2/19 高泉淳子Reading Live Show『アンゴスチュラ・ビターズな君へ』
                         東京文化会館 小ホール

出演:高泉淳子(Vo)有田純弘(GtMand)パトリック・ヌジェ(AcVo)
ブレント・ナッシー(Bs)中西俊博(Vln)、スペシャルゲスト予定
日時:2月19日(木)  Open 18:30 / Start 19:00
TICKET:全指定席 ¥5000
会場:台東区上野公園5番45号 東京文化会館 小ホール
*ご予約・お問合せは、東京音協 03-5774-3030まで。
*URL :http://t-onkyo.co.jp/


2/20  〜小さなDUOライブ♪〜 今夜はマヌーシュスウィングだ!Vol.5
                四ツ谷 ホメリ ◎お薦め!リーダーライブ◎

出演:中西俊博(Vln)河野文彦(Gt)
日時:2015年2月20日(金)  Open 19:00 / Start 20:00
CHARGE:¥ 2000 + ご飲食代
会場:東京都新宿区三栄町25-33 Bowビル2F 小さな喫茶店 homeri ホメリ
*TEL:03-6320-0790
*URL:http://homeri.jimdo.com/
ご予約:HPのご予約フォームまたはお電話で。


2/25 〜大人のDUOライブ〜 学芸大学 珈琲美学 ◎お薦め!リーダーライブ◎

出演:中西俊博(Vln)林正樹(Pf)
日時:2015年2月25日(水) Open18:30 / 1st19:30 / 2nd 21:00
CHARGE:¥3500+ご飲食代
会場:東京都目黒区鷹番2-19-20第2ベルウッドビルB1
*TEL: 03-3710-1695  *URL:http://www.coffeebigaku.server-shared.com/
ご予約:お店に直接お電話。もしくはサイトの御予約フォームから。


2/27 ☆中西俊博・初TRIOで参上☆ 吉祥寺 Strings ◎お薦め!リーダーライブ◎

出演:中西俊博(Vln) 扇谷研人(Pf) 木村将之(Bs)
日時:2015年2月27日(金 )  Open18:30 / 1st 19:30/ 2nd 21:00
CHARGE:¥3300(税込) +ご飲食代
会場:吉祥寺 Strings 東京都武蔵野市吉祥寺本町 2-12-13 (TNコラムビル地階)
*TEL:0422-28-5035 
*URL:http://www.jazz-strings.com/index.htm
ご予約:お店に直接お電話。もしくはサイトの御予約フォームから。


3/20 〜大人のDUOライブ〜  阿佐ヶ谷 jazz barクラヴィーア
                        ◎お薦め!リーダーライブ◎

出演:中西俊博(Vln)林正樹(Pf)
日時:2015年3月20日(金)/Open /Start 1st 20:00/ 2nd 21:30
CHARGE:¥2300+ご飲食代
会場:東京都杉並区阿佐谷南3-37-13-3F jazz bar《クラヴィーア》
*TEL:(昼)03-3315-2377 / (夜) 03-3393-0418
*URL: http://www2.tbb.t-com.ne.jp/klavier/www/
*ご予約:お店に直接お電話、またはメールで。


4/10 中西俊博 Birthday Live 2015 〜Reel's Trip 〜
横浜 モーション・ブルー・ヨコハマ  ◎お薦め!リーダーライブ◎

出演:Reel's Trip
・・・中西俊博(Vln)木村将之(Bs) ファルコン(Gt) 伊賀拓郎(Pf)はたけやま裕(Perc)
日時:2015年4月10日(金)  Open 18:00 / Start 19:30
※1ステージのみの公演となります。
※ステージの長さは約120分を予定しております。
※ステージの間に30分程度の休憩を挟みます。
CHARGE:自由席 ¥4500(税込)
BOX席 ¥18000+シート・チャージ ¥ 4000(4名様までご利用可能)
会場:横浜市中区新港1-1-2 横浜赤レンガ倉庫2号館3F  モーション・ブルー・ヨコハマ
*TEL:045-226-1919(11:00am〜10:00pm)
*URL:http://www.motionblue.co.jp
*ご予約は、モーション・ブルー・ヨコハマまで直接お電話、またはWEB予約 (※1月17日11:00〜公演当日の14:00迄)でどうぞ。



中西俊博公式HP : http://couleur.bz/
中西俊博facebook  : https://www.facebook.com/toshihiro.nakanishi.10
中西俊博twitter :https://twitter.com/nakanishi_vl
中西俊博・事務所 facebook: https://www.facebook.com/CouleurMUSICIAN
中西俊博・事務所 twitter :https://twitter.com/couleurMUSICIAN
中西俊博メールマガジン :楽しいコメントが大好評のメルマガです!
             購読希望の方は、こちらからお申込みください。
             http://couleur.bz/contact.html
中西俊博ディスコグラフィー:http://couleur.bz/discography.html


♪Cheer Up! 過去記事
「特集 中西俊博」
http://www.cheerup777.com/nakanishi.html



(C)2011-2015 Cheer Up! Project All rights reserved.