広く活躍する人気サックス奏者の鈴木央紹さんが5年ぶりにニューアルバム『Favourites』をリリースしました。
若手キーボーディスト宮川純さんのオルガン、ベテラン原大力さんのドラムとのトリオ編成ということで楽器の組み合わせをちょっと意外に感じたところ、聴いてみたら新鮮なサウンドに驚かされました。時にはゆったり心地良く、時にはスリリングな演奏で至福のひとときを味わえるリッチなアルバムです。
このアルバムのサウンドの秘密について、鈴木さんにじっくりと教えて頂きました。(2019年10月)


---リーダーアルバムは2014年の『Standards++』以来5年ぶりになりますが、このアルバムを出そうということになったいきさつについて教えて頂けますか?

鈴木:前作はピアノ、ベース、ドラムを迎えたアコースティックなサウンドのサックスカルテットでスタンダードの名曲を演奏するアルバムでした。
今回はハモンドオルガンとドラムというまた新しいサウンドでのスタンダードアルバムを発表いたしました。
それぞれのメンバーとは様々なユニットで10年以上、共演を重ねております。このトリオとしては2年ほど活動していまして、ライブを重ねるうちにサウンドも音楽の方向性も面白い方向に見えてきて、これはぜひライブだけではなく作品という形で広く皆様にお聴きいただこうと思いリリースしました。

---レコーディングは2019年2月に横浜のランドマークスタジオで行われたとのこと。
1日で録音なさったのでしょうか。レコーディングのご様子はいかがでしたか?


鈴木:レコーディングは1日です。各楽器のマイキングなど、録音の基本設定のところには十分な時間をかけて、じっくり音作りしました。
楽器の音の録り方が決まってからの実際の曲録音はほとんど1テイク、予想以上に早いペースでレコーディングは終わりました。夕方にはCDジャケット用の写真撮影が始まってたぐらいですから(笑)。

---前作はカルテットで多くの人に知られたスタンダードナンバー中心のアルバムでしたが、今回はとても通好みな選曲と感じました。
宮川純さんがハモンドオルガンを演奏され、原大力さん(ds)とのトリオですね。選曲やアレンジは3人でなさったのでしょうか。


鈴木:選曲は僕のアイディアを中心に3人で決めました。
まだまだ知られていないスタンダードナンバーでも名曲はたくさんあります。素晴らしい曲の存在を僕たちの演奏で皆さまにたくさん紹介したいという思いがあります。

アレンジは大まかな構成、ソロの順番などを演奏前に決めるくらいで、あとは何も決めずに録音スタート、3人で音を出しながらサウンドを作り上げていく、このバンドのライブのスタイルでレコーディングしました。
実は普段のライブでもリハーサルしないバンドなんです。
個々の音楽力の高さを信頼、尊重しあって、それぞれが出した音にインスパイアを受け、それに反応した中で曲が出来上がっていきます。
まさにライブはナマ物、と言う形をこのアルバムにパッケージ出来たと思います。

---このトリオではベーシストがいなくて、ハモンドの宮川さんが足でベースを演奏なさっていますね。
宮川さんはベーシストの役割もしていらっしゃって、ウッドベースとはまた色々と違っています。そのあたりはご一緒に演奏されていていかがでしたか?


鈴木:ハモンドオルガンの宮川君がベースも担当してくれてるからこそ、このサウンドが生まれています。
彼の自由な発想でのボトムの表現、それはベースという概念を超えています。
足だけではなく左手でも自由自在にベースラインを演奏してくれて、僕たちに与えてくれるアイディアも果てしないです。
ハモンドオルガンならではの彼の奏法です。



 Photo by 山本佳代子

---「The Favourite」は鈴木さんのオリジナル曲。タイトルからするとキャッチ―で明るい感じかなと勝手に思っていたら、ちょっと不思議な雰囲気で技巧的で。MVもかっこ良い!どのように作曲なさったのでしょうか。

鈴木:ありがとうございます。
このオリジナルはピアニスト、レニー・トリスターノ氏などの作曲手法と似たような、そんなモードで作ってみました。
ちょっと専門的になりますが、コード(和音)のテンションノートという、ハーモニーの色付けとされる様々な音を奇抜に配列して、こういう雰囲気を作ってみました。
作曲はほとんどピアノでします。このメロディーもピアノで作ったのですが、実際サックスで吹いてみると、超難しかったです(笑)。




---私がアルバムで特に好きなのは「Witchcraft」です。軽快でありながら深みのある音色のサックス、オルガンの小気味良いバッキング、スリリングなドラム、このトリオの掛け合いの素晴らしさを感じ、ライブで一番聴いてみたいなと思った曲です。オルガンとサックスとの掛け合いは、自分は今まで聴く機会がなく、とても新鮮に感じました。

鈴木:「Witchcraft」はこのバンドを始めるきっかけになった曲です。
ルパンバンドのサウンドチェックで純が一人でこの曲を弾いていて、「よくそんなマニアックな曲を知ってるねー!」って。
で、オルガンとサックスでスタンダードを自由に演奏するバンドをやろうよ、ということでこのユニットは始まりました。

---「Come Sunday」はあったかくて優しいバラード。鈴木さんのサックスの演奏に心地良く身をゆだねたくなります。バックのハモンドのトレモロのオンオフも演奏をさりげなく盛り上げていてかっこいい。大好きな演奏で何度も聴いています。

鈴木:「Come Sunday」は1曲くらい、いわゆる「ハモンドオルガンといえば」的な曲も入れようと、選曲しました。様々なハモンドのサウンドをお楽しみいただけると思います。

---「Solar」はアップテンポで凄い勢いを感じましたね。やはりライブで聴いてみたい曲!

鈴木:「Solar」は、本当にライブ感覚で録音しました。
何も決めず、僕がいきなり一人で演奏を始めて、それにみんなが自由に入ってきた演奏です。

---「Moon And Sand」はソプラノサックスでしょうか。胸にしみるような音色、孤独や寂しさを感じました。

鈴木:「Moon and Sand」はソプラノで演奏しました。このほか「Boplicity」でもソプラノを演奏しています。
ソプラノサックスは特にマイキングにこだわって録音しました。いい音でお届けできて嬉しいです。

---Liveや後進の指導など、ご多忙な鈴木さん。気分転換方法などあれば教えて頂けますか?
また、今回のアルバムタイトル"Favourites"にちなみ、鈴木さんのフェイバリットも教えて頂きたいです。


鈴木:気分転換は、寝ることと、お酒、食事ですね。
美味しいもの食べて、お酒飲んで、ぐっすり寝ると、疲れは全てリセットできます。
僕のフェイバリットは、やっぱりサックスしかないようです。サックスを演奏してる時が一番幸せを感じますから。

---このWEBマガジンの恒例企画です。
鈴木さんにとってのCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか?


鈴木:日々音楽に関わり、音楽を生み出している側の生活なので、どうしても奏者や作者の立場で専門的に分析して音楽を聞いてしまいます。職業病です(笑)。
しいて言うならジョンコルトレーンの「Ballads」が気持ちよく聞けるストレスなく入ってくるアルバムでしょうか。
あのリラックスした雰囲気、作為的なアレンジも何もなく、抜け感のある奏法と楽曲が大好きです。

John Coltrane『Ballads』



---今後の展望や夢、こんなアルバムを作ってみたい!などを教えて頂けますか?

鈴木:アルバムは、日々ライブをやってる中で、また新しいサウンドが生まれてそれを形にしたくなった時にリリースしたいです。
またストリングスなどを迎えた大編成でリーダーアルバム出すのも夢ですね!
アルバム発売ツアー、北海道から九州までお邪魔しましたが、まだ東北方面には伺えていないので来年はお邪魔したいと思います!

---どうもありがとうございました。リーダーアルバムやライブツアーなど今後も楽しみにしております。




『Favourites』鈴木央紹

1.Where Or When
2.Witchcraft
3.Never Let Me Go
4.I Should Care
5.Boplicity
6.The Favourite
7.Come Sunday
8.Solar
9.Moon And Sand

Encore Track:
10. Moon River

ハイレゾ配信限定Track:
11. Nice Work If You Can Get It

鈴木 央紹:tenor & soprano sax
宮川 純:hammond b-3 organ
原 大力:drums (omit #9 & #10)
Recorded at LANDMARK STUDIO
on February, 2019

発売日:2019/5/22
レーベル:T5Jazz Records
CD規格品番:T5J-1015


レーベルによる詳細ページ
http://www.t5jazz.com/p/t5j-1015.html

レーベルによるプレイリストページ
http://www.t5jazz.com/2019/05/the-favourite-music-video.html

◆アルバム「Favourites」詳細&ご購入リンク
Amazon:https://amzn.to/2HAJ66M
ハイレゾ e-onkyo:https://www.e-onkyo.com/music/album/t5j5015/
Apple Music :https://music.apple.com/jp/album/favourites/1460546435
Spotify :https://open.spotify.com/artist/2cxR4eGV5FLanLI9rtFW7Z



 Photo by 山本佳代子

◆プロフィール

鈴木 央紹(すずき ひさつぐ)

1972年11月22日大阪市生まれ。
4歳よりピアノ、10歳よりサックスを始める。ジャズアドリブを独学で始め16歳より演奏活動、17歳で「AXIA MUSIC AUDITION」においてAXIA賞 Instrumental部門Grand Prixを受賞。
クラシックサックス奏法を前田昌宏氏に師事、大学在学中より大阪フィルや関西フィルでのクラシック演奏活動の他、ジャズライブ等の演奏活動も行う。
海外のミュージシャンとの共演も多く、 Ron Carter、 Lewis Nash、Benny Green、Lonnie Plaxico、Rodney Green、Conrad Herwig、 Salena Jones、Kenny Washington、Peter Washington等多数、その信頼も厚い。

現在、自己のリーダーバンドの他、「ルパン三世」等の音楽作曲で有名なピアニスト大野雄二率いる「Yuji Ohno&Lupintic Six」を始め、土岐英史バンド、原大力グループ、原朋直グループ、TOKUグループ等に参加。

また、CDプロデュースワークや楽曲アレンジで「スタジオ協会録音賞」や「ゴールドディスク賞」を受賞するなど高い評価を受けている。
そのほか数々のセッション、コンサート、CMやTVドラマ劇判などのレコーディング、近藤房之助やZARDのサポート等、参加したアルバムは100枚を超え、映像作品参加も多数、ジャンル問わず幅広く活動中。

2009年、大野雄二プロデュースによるデビュー・アルバム「Passage Of Day」をリリース。2014年には、自己カルテットにて2ndアルバム「Standards++」をT5Jazz Recordsからリリース。
そして前作から約5年、満を持してスタンダード集第2弾「Favourites」を2019年5月22日にリリース。楽曲の方向性は同じながらも、オルガンに宮川純を迎えたトリオ編成によるサウンドは、前作とは大きく異なるケミストリーを生み出している。今後の活躍が益々楽しみなミュージシャンの一人である。

D'Addario Woodwinds エンドーサー
大阪音楽大学ジャズサクソフォーン特任准教授


鈴木央紹 Official Web
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<Cheer Up!関連リンク>
原朋直『Time In Delight』記事 コメント参加(2017年)
http://www.cheerup777.com/hara2017-2.html



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