The東南西北は今年でデビュー30周年。 それを記念したマキシシングル『春夏秋冬(はるなつあきふゆ)』がこの春リリースされる。 2012年、なんと22年ぶりのニューアルバム『re-flight』で変わらぬ歌声、コーラス、サウンドを聴かせてくれた彼ら。 Vocal&Guitarの久保田洋司さんにはインタビューに応じて頂き、さらに連載エッセイ「花咲く随筆」では結成当時の細やかなエピソードなど読み応えのある内容を披露して頂いた。 今回は再び久保田さんにご登場頂き、『春夏秋冬(はるなつあきふゆ)』について、じっくりお話を伺った。 ---年月を経ても、The東南西北のサウンドや世界観は、まるでついこの前の続きのように感じられます。東南西北と同じ、"春夏秋冬"という四文字熟語がまさに記念の曲にピッタリですね。 久保田:ありがとうございます。 L⇔Rの黒沢健一くんからも、「ファーストアルバム『飛行少年』に入っていても違和感がない。バンドってカラーがでるんだな」と、嬉しい感想をいただきました。 タイトルは、バンド名と対になるように意識しています。 恋人たちの四季を通じての風景が歌われていますが、同時に感じるのは、我々のデビュー30年の、あるいは人生の軌跡の中での春夏秋冬(はるなつあきふゆ)であったり、また、応援してくださる皆さんの春夏秋冬(はるなつあきふゆ)であったりするのかな、と思います。 読みを、「しゅんかしゅうとう」じゃなく、「はるなつあきふゆ」にしたのは、我々のセカンドアルバム収録の「君をずっと想っていたよ」(作詞 松本隆)に、春夏秋冬(しゅんかしゅうとう)と歌うところがあり、それと区別するためです。 当時、松本さんも、バンド名を意識して、四字熟語を使った、とおっしゃってた気がします。 デビュー30年、25年ぶりのシングルですが、ここにきて、我々らしい歌が作れたと思っています。 録音の段階でも、メンバーそれぞれが、アイディアを出し合いました。 特に、ギターの加納順くんが、イントロ、歌中、間奏、アウトロと、四季が展開していくような流れを、上手く描いてくれました。 3月21日、神戸チキンジョージでのライブで初披露した際、皆さんから盛大な拍手と歓声をいただき、本当に嬉しかったです。 それに、長江健次さんのラジオ番組をはじめ、全国の多くのラジオやインターネットの番組で、取り上げて、かけていただいてて、とっても嬉しいんです。 ラジオから、自分たちの曲が流れてくるのを聞くのは格別です。 皆さんの応援とリクエストがあってのこと、感謝しています。 ---ジャケットデザインがとても凝っていますね。 ウノデザインの宇野哲也さんが作られたそうですが、宇野さんはどんな方ですか? 久保田:宇野さんは、加納順くんの知り合いのデザイナーさんです。 加納順くんがソロ活動の中で、築いた人脈ですね。 僕は、3月27日、「鼓動は三拍子」のライブを見にきてくださった宇野さんに、初めてお会いしました。 優しそうで、誠実そうな方だなと思いました。 デザインのアイディアは、ドラムの大池茂文くんが、以前から持っていたもの。 ポップなサイケデリック調なものの例としてあげたのは、XTCの「Oranges & Lemons」。 そうなってくると、ビートルズのアニメ映画「イエローサブマリン」にたどりつきます。 「イエローサブマリン」の「ペパーランド」の世界みたいな、The東南西北ワールドが展開していくような、夢あるデザイン、とっても気に入ってます。 The東南西北は5人です。 ジャケットには、今、実際に活動できてる4人しかいないように見えますが、一緒に、船が描かれてて、その船の甲板には、ピアノの鍵盤のようなものが。 キーボードの入船陽介くんの暗喩とわかります。 自身の映像作家としての活動が多忙な入船陽介くんですが、今回のレコーディングに差し入れを持って遊びに来てくれたり、マスタリング・スタジオでも、ナイスな意見をくれたりして、あぁ、我々、5人で作ってるレコードなんだ、という実感もあったので、これは、嬉しいデザインです。 ---2曲目の「キミワラウト」は、今までの歌のタイトルも織り交ぜてあり、ファンへのプレゼントのように感じられました。 間奏のなんともかっこいいギターソロは加納順さんですか? 久保田:加納順くん作詞作曲の「キミワラウト」は、今回、デビュー30周年に向けて、何か作ろうという話になった時、加納順くんが、「こんなの作ってるんだけど」と、ふっと聞かせてくれた曲。 レゲエ調なものに、我々は、高校生の時から取り組んでいて、デビュー当時「星がっちゃうねジャマイカ」や「レゲエな気分」として、レコードになった曲もありました。 なので、この曲を聞いたときは、非常に新鮮な中にも、The東南西北の真骨頂を感じられ、是非、これを新しいレパートリーにしたいと思いました。 歌詞のアイディアも初めからあったみたいで、笑顔で応援してくれる皆さんへの感謝の歌です。ファンの皆さんからも、大好評いただいてます。 もちろんギターソロも加納順くんです。 ---3曲目の「純情可憐」もレゲエ調ですね。 メンバーの皆さん、高校時代からレゲエがお好きだったんですか? 久保田:特に、ドラムの大池茂文くんが、リズムの面からもレゲエに興味を持っていて、ボブ・マーリー、ジミー・クリフ、シュガー・マイノット、などのジャマイカのミュージシャンはもちろん、イギリスのアスワドやUB40なども含めて、いろいろレコードやカセットで聞かせてくれたり、家に遊びに行けば、レーザーディスクで、ボブ・マーリーのライブを見せてくれたりしました。 すごくメロディアスでポップだと感じたものです。 ---「純情可憐」は、久保田さんの歌い方がいつもと一味違っていてなんだか楽しくなります。遊び心のある歌い方、「絵に描いたより pictureness」を思い出しました。 WEBの曲解説を読むと、なんと高校時代に久保田さんが作った歌なのですね。 なんとなく大人の恋愛のように思ったので、最近書かれたものなのかな?と思いながら聴きました。 久保田:高校三年の時、作りました。「星がっちゃうねジャマイカ」と、ほぼ同時期の作。 目の前の君と語り合う日々、知らぬ者同士だったのに、とても不思議、という歌詞ももちろん、高校生の頃に作っていたもの。 僕の場合は、幼稚園、小学校、中学校と、ずっと同じ町で育ち、同じ友達たちと過ごしてたわけですが、高校になって市の中心地に通い、他の町の人たちとも知り合って、The東南西北のメンバーとも出会って、非常に内向的な高校生の僕にとっては、そういう出会いがとっても不思議で嬉しかったんです。 The東南西北は、結成当初から、高校のコーラス部に所属していて、日夜、コーラスの練習に励んだものです。 これも、大池茂文くんの提案だったような覚えがあります。 (加納順くんは、二つ年下で、別の高校に進学したので、このコーラス部ではありませんでしたが) そこで、皆でハーモニーを取ってる時の感じが、歌になりました。 歌い方が一味違って聞こえるのは、高校三年の頃に作ったままの歌い方だから、でしょう。 高校三年生って、自分が子どもだという自覚はすでになく、いっぱしのつもりなもので、逆のそれが、大人の恋愛のように聞こえるのかもしれません。 また、この歌の録音の時に、入船陽介くんが、スタジオに遊びに来てくれていたので、入船陽介くんの持つ、ふわっとしたような空気感が歌に伝わったのかもしれません。 ---4曲目の「よっぱらいの歌」、この歌はベースの清水伸吾さんが作詞、久保田さんが作曲。 最近作られたのかと思ったら、これも高校生の頃の作品なのですね! 酔っ払いのおじさんの姿の描写、目に浮かぶようです。 皆さん高校時代から引き出しが多かったんですね。 ベンチャーズのテケテケ・サウンドが取り入れられていてかっこいい。 久保田:高校生にとっては、酔っ払いは、ちょっと怖いものです。 清水伸吾くんは、我々が高校生のころよくかよっていたジャズ喫茶である日、怖い酔っ払いに遭遇し、そのことをそのまま書いて、持ってきました。 何でも歌にしようという、非常に貪欲な当時の我々には、ナイスな素材で、僕がすぐに曲を付けて、デビュー直後くらいまで、ライブでよく演奏していました。 元々は、特にアレンジを練ったようなものではなくて、間奏も、オルガンでメロディーをなぞっただけの、ごくシンプルなものでした。 今回のレコーディングにあたり、加納順くんと二人で、この曲のアレンジについて、話してた時、ベンチャーズ的なアプローチはどうだろう、と言ってみました。 加納順くんが、そのギター人生のある一時期に、ベンチャーズ・サウンドを研究してたことを、数年前知ったんです。 今回、この曲が、面白くなったのは、加納順くんのギター研究の賜物です。 まず、加納順くんが、ベンチャーズっぽい、面白い間奏を考えて、後で、僕が、イントロのアイディアをちらとギターで弾いて聞かせたら、加納順くんはもう、水を得た魚のように、ぐんぐんアレンジしてくれて、見事に、この曲の潜在能力を開花させました。 それに合わせて、ドラムやベースも、録り直しました。 そういう作業一つ一つの、皆で協力している感じが、非常に嬉しいことでした。 ---高校時代に作られて、まだレコーディングされていないという曲は相当たくさんあるのでしょうか? 久保田:いくつかあります。 今のところ、録音の予定はありませんが、純情可憐やよっぱらいの歌だって、まさかCDになるとは、思ってなかったものですから、どうなるかは、わかりません。 ---The東南西北の新レーベル「コンパス」のネット・ショップ「コンパス ダイレクト」がOPENしたそうですね。 コンパス ダイレクト:https://tnsp.stores.jp/ コンパスという名前、The東南西北にピッタリですが、皆さんで決められたんですか? レーベルを作ることになった経緯は? 久保田:レーベル名は、我々で考え、ネット・ショップも我々で、やっています。 今回のシングルを作る時、自分たちでできることは、できるだけ自分たちでやっていこう、という気分が皆にあったと思います。 レコード会社のディレクター経験もある大池茂文くんや、レーベルの経験もある清水伸吾くんがいて、心強かったです。 レコーディングやデザインなど、どのように進めて、マスタリングは、どこにお願いして、プレスはどこで、流通は、というようなこと、主に大池茂文くんが、よく考えてくれました。 レーベル名を考えなきゃ、という時に、ふっと「コンパス」というワードが浮かびました。 今まで、それがなかった方が不思議なくらい、ぴったりな名前で、気に入ってます。 このようにわかるのは、我々皆が、時の流れの中で獲得してきた知恵や勇気がとっても役にたってる。 時が流れることは、素敵なことだと、あらためて感じます。 ---2015年は30周年記念ということで、イベントや記念ライブなどのご予定があれば教えて下さい。 久保田:11月21日がデビュー記念日です。 その日、神戸チキンジョージでライブが決まっています。 そして、アルバムもリリース予定。 バンドのライブは、来年、関東で2デイズ予定しています。 僕と加納順くんで「The東南西北ギター部」と名乗って、ライブをすることがあるんですが、4月21日、シングル「春夏秋冬(はるなつあきふゆ)」の発売日に、ライブの予定を発表します。 詳しいことは、下記で、更新しています。 Facebookページ:https://www.facebook.com/TheTonNanShaPei Twitter:https://twitter.com/@TheTonNanShaPei 久保田洋司のブログ「今日の出来心」:http://blog.goo.ne.jp/yoji_diary ---どうもありがとうございました。アルバムも楽しみにしております! The東南西北『春夏秋冬(はるなつあきふゆ)』 収録曲 1. 春夏秋冬(はるなつあきふゆ) 作詞:久保田洋司 作曲:久保田洋司 編曲:The東南西北 2. キミワラウト 作詞:加納 順 作曲:加納 順 編曲:The東南西北 〜 classic tracks 〜 3. 純情可憐 作詞:久保田洋司 作曲:久保田洋司 編曲:The東南西北 4. よっぱらいの歌 作詞:清水伸吾 作曲:久保田洋司 編曲:The東南西北 品番 : WGCA-3012 価格:1,500円+税 発売元:アミューズ/コンパス 販売元:スペースシャワーミュージック 発売日:2015年4月21日 2015年3月21日 コンパスダイレクトにて先行発売中 コンパスダイレクト:https://tnsp.stores.jp/ The東南西北(ザ・トンナンシャーペイ) プロフィール: 1983年、広島県尾道市の高校同級生らによって『The東南西北』結成。広島県立尾道東高等学校の軽音楽部のコンサートに出演するため、久保田、大池、清水、A(仮名)の4人でビートルズのコピーバンドとして結成。 当時は、久保田、A(仮名)のツインボーカルのバンドだったが大学入試により、A(仮名)が脱退。その後、趣味のカメラでライブの写真を撮っていた同級生の入船が、YAMAHA DX7を持っていたため、キーボードとして参加。 後に、楽器店(尾道マスハラ楽器)で出会った加納が参加。加納は当時、父親のエピフォンのギターを持っていたのが、参加の決め手となった。 1984年のCBSソニーCR-Xオーディションでの優勝をきっかけにデビュー。LOOK、種ともこ、聖飢魔IIが同オーディション出身である。 1985年「ため息のマイナーコード」でCBSソニーよりデビュー。所属事務所はアミューズ。バンド名の由来は、メンバーがそれぞれ、尾道市の東・南・西・北方面に住んでいたため。 作詞家・松本隆との共作 チーム(以降も続く)による「内心、Thank you」「君の名前を呼びたい」等数々のヒット曲を生み、5枚のオリジナルアルバムと8枚のシングル、1枚のベスト盤を発表し、1991年2月10日に解散。各々の道に進んだ。 久保田洋司は、1992年にソロデビュー。東芝EMI、ポニー・キャニオン、日本コロムビア、他でソロ作品を発表通算13枚のオリジナルアルバムと9枚のシシングルを発表している。また、ソングライターとして松田聖子、ribbonなどに楽曲を提供。その後ジャニーズ関係の作詞を多く手がけ、2000年代以降も嵐「WISH」、トラジ・ハイジ「ファンタスティポ」などヒット曲を手がけている。「YoNaGa」、「鼓動は三拍子」、「えとうた」など、別ユニットでも活動中。 ベースの清水伸吾はスタジオ録音、ライブやイベント演奏、MIDIデータ制作、嘉門達夫ツアーメンバー、劇団スーパーエキセントリックシアターの音楽担当、音楽専門学校教務及び運営などで活躍。 ドラムの大池茂文はソニーレコードのディレクターに転身し、UNICORN、すかんち、HEAVENなどの作品制作に関わった。その後ワーナーミュージック・ジャパンに移籍し、広末涼子、SBK、COLORなどのディレクションを担当。 ギターの加納順はオールディーズバンド「リバティーズ」他に加入し関東を拠点に活動。久保田洋司バンドメンバーを経て2001年ソロアルバム「忘れた唄を思い出す」リリース。現在、新ユニット「ケンモホロロ」を結成。映画「Sunset Drive」の挿入歌など制作。2014年からはソロ活動も再開している。 キーボードの入船陽介は、アニメ作品などへの楽曲提供ののち音楽活動を休止。映画監督、カメラマン、TV演出家の下で修行し映像クリエーターへと転身する。PV、ライブ映像などの作品は、J-POP、クラッシックとジャンルを問わず、また、生放送音楽番組、アイドルDVD、俳優・声優・格闘家・芸術家・ミュージシャンのドキュメンタリー映像から写真集、CDジャケットに至るまで、動画、静止画にかかわらず、活動は幅広い分野に及ぶ。音楽活動再開は50歳になってからと決めていたが、最近、大池からの『いつまでも5人生きてると思うなよ』の電話に促され、20年ぶりに楽器店めぐりを始めた。現在、多忙の為、バンド活動には参加していない。 2009年に久保田、大池、清水の3人で、尾道市内で復活ライブを開催。 市民らの寄付で復活した映画館「シネマ尾道」の応援歌「駅前映画館」を発表し、以降も尾道を拠点に、大阪、神戸他、不定期にライブを開催。2012年5月9日、22年振りの新作アルバム『re-flight』を発売。 『re-flight』のレコーディングから、加納が参加。目黒ブルースアレイ、神戸チキンジョージなどでライブ。 2015年3月、自主レーベル「コンパス」を設立し、デビュー30周年記念シングル「春夏秋冬(はるなつあきふゆ)」を4月21日にリリース。11月21日には、アルバムを発売予定。 Facebook:https://www.facebook.com/TheTonNanShaPei Twitter:https://twitter.com/@TheTonNanShaPei YouTube:https://www.youtube.com/user/TheTonNanShaPei 久保田洋司ブログ:http://blog.goo.ne.jp/yoji_diary 直販サイト コンパス ダイレクト:https://tnsp.stores.jp/ <Cheer Up! 関連記事> アルバム「re-flight」インタビュー http://www.cheerup777.com/tonnan.html 久保田洋司 連載「花咲く随筆」 http://www.cheerup777.com/hanasaku1.html |