2018年に結成10周年を迎え、名古屋/東京を拠点に精力的な演奏活動を行っているピアノトリオTRISPACEの4年ぶりの新作『The Circle』がついに完成した。 リーダーであるピアニスト、林祐市さんのオリジナル曲は何度も聴きたくなる魅力あふれる美しいメロディーが特徴。海外でも好評を博しているこのトリオは、実力あるベースの大村守弘さん・ドラムの山下佳孝さんとのアンサンブルワークも絶妙で、唯一無二のサウンドは近年ますます人気が高まっている。 そんな話題のTRISPACEがCheer Up!に初登場。リーダーの林祐市さんにこのアルバム『The Circle』についてインタビューさせて頂き、また大村守弘さん・山下佳孝さんには結成10周年を迎えた想いをお寄せ頂いた。この秋超おすすめの1枚、ぜひ記事を読みながらお聴き頂きたい。(2018年10月)
<林祐市インタビュー> <コメント>
---好評を博した前作『Nightfall』から4年ぶりの4thアルバムですね。 今回アルバムを作ることになった経緯について伺えますか? 林:僕は北欧のジャズが好きで、その雰囲気を持ったトリオを作ろうとTRISPACEをスタートさせました。 それで、前作ではスウェーデンまで出向き、憧れのスタジオNilent Studioで録音をした事で、1つのスタイルを達成したような気持ちになってしまって、、、。 常日頃、バンドは変化や進化が必要だと思っているので、今までと違う何かを作り出さないといけないと感じ苦悩しました。とにかくたくさんの曲を作ってはボツにするという繰り返しで、なかなか納得のいく曲ができずアルバムにまとまるまで4年かかったという感じです(笑)。 ---レコーディング中の雰囲気はいかがでしたか? 林:レコーディングは信頼のおけるスタッフとクリエィティブな制作ができました。 今回のレコーディング中は終始カメラを回してもらってまして、その様子は「Rain」という曲のミュージックビデオになりました。 こうやって客観的にみると、ドラマがありますよね。YouTubeに公開してますので是非見てみてください。 ---2018年に結成10周年を迎えたTRISPACE。この10年を振り返ってみていかがですか? 林:本当に何もないところからスタートとしたトリオでしたが、日本全国にライブに出向いたり、ヨーロッパでツアーしたり、いろいろ経験させていただいた事により、TRISPACE独自の音楽が構築できたと思っています。 ---林さんからみて、メンバーの大村守弘さん(bass)、山下佳孝さん(drums)はどんなお人柄ですか? 林:大村さん、山下さんは学生の頃からの音楽仲間なので、随分付き合いも長くなりました。 大村さんは、寡黙ですが、物事をいろいろしっかり見て考えている人だと思います。 山下さんはドラムの知識はもちろん、レコーディングから、コンピュータのプログラミング等、多岐に渡って精通してる人ですね。説明書を読むのが趣味という人です(笑)。 2人とも根本的に穏やかで優しいかな。 ---これまでに海外でライブを行った時の手ごたえや、オーディエンスの反応はいかがでしたか? 林:海外でのツアーはイタリアでしました。反応はとても良かったですね。感情の表現がストレートなんでしょうか、演奏の途中でも声援を送ってくださって嬉しかったです。 おもしろかったのはイタリアでのライブは開始時間がすごくルーズで、あるお店では、20時スタートなのに、実際スタートしたのが21時40分とか(笑)。お客さんはいい感じでワイン飲んだりしてて、誰も怒ったりしてないんですよ。日本では考えられないですよね。 ---林さんの作曲方法はどのようなスタイルか教えて頂けますか? タイトルが先に浮かぶことが多いのですか?時間はかかるほうでしょうか? 林:作曲は曲が先です。できたメロディーからイメージしてタイトルを付けます。それで曲の聴こえ方がちょっと変わってくるのが面白いところですね。 ものすごく時間をかけるときもあれば、即興的にすぐできるときもありますよ。 ---曲が完成してバンドに持って行く時、メンバーとはどのようにイメージを共有なさるのですか? 林:メンバーに最初に伝えるときはラフな状態で持っていって、自分のイメージは必要最低限の事しか伝えません。 それを各自がそこから感じるままにアプローチしてもらいます。 ですので、自分が想像していたものとまったく違うかたちになる事もありますが、逆にそこが面白いと思っています。曲はライブを重ねていくうちにできあがっていく感じです。 ---ここからはアルバムの曲をピックアップしてお伺いします。 ◆2 Phantom ---アップテンポの3拍子、不安な曲調ですが力強さもありアルバムの世界にどんどん惹きこまれます。 ファントムといえば「オペラ座の怪人」を思い出しますね。 林:タイトルを決めるときに「オペラ座の怪人」をイメージはしましたね。でも、この曲での怪人は、自分の中にある恐怖心の事で、それに立ち向かう強さをテーマにしてます。何か新しい事を始めるのにはワクワクする反面、不安もありますが、それに負けないで進んでいこうと思ってます。 ◆5 Rain ---楽曲解説によると「吹き付ける雨に向かってしなやかに突き進んで行くイメージ」とのこと。 美しいピアノの音色、タイトなリズム、存在感のある繊細なベース、アンサンブルワークがますます冴える一曲と感じました。 林:ありがとうございます。この曲のリズムのアイデアはドラムの山下さんの力が大きいですね。現代的なジャズのテイストが出たと思います。 ◆7 Desert Moon ---砂漠を照らす月の光。エキゾチックでリズムもかっこいい曲ですね。 林さんの曲は自然をテーマにしていることが多いと思いますが、旅先で曲のイメージやメロディーが思い浮かぶこともあるのですか? 林:自然のテーマは多いですね。でも、旅先の景色を見てメロディーが思い浮かぶ事はないかなぁ。あくまでも曲は音からなんです。逆に完成したメロディーから旅先をイメージすることはありますね。 ◆8 Longing ---美しく繊細、ロマンティックなメロディーにうっとりします。 林さんの曲はメロディーが聴きやすく、JAZZ初心者にもとっつきやすいのではないでしょうか?そのあたりいかがですか? 林:メロディーはシンプルさを大切にしています。口ずさめるようなメロディーだけど、要所要所でひねくれてる感じのバランスが好きです。この曲は中でもかなりストレートですね。 ◆9 The Circle ---めまぐるしい展開。アルバムタイトルのこの曲についての想い、このアルバムへの想いを伺えますか? 林:The Circleは地球の事を意味していて、その中で起きてる様々な出来事を表現した曲ですが、このアルバムのいろいろな曲もCircleの中の事なんです。 個人の心の中の事だったり、近くの大切な人の事だったり、遠い異国の地の事だったり、過去、現在、未来、すべてが繋がっているんだと思います。 だからまず、個人それぞれが、今この瞬間を大切にしながら、身近な人を大切にする事が、広い意味で遠い異国の誰か知らない人をも助ける事に繋がるのではと思うんです。争いのない世界は夢の様な話かと思いますが、そこを第一歩にしてもいいんじゃないかなと思うわけです。 ◆10 Always ---穏やかな気持ちになれて、深みのあるピアノの音色に包まれてひたすら温かい気持ちになれます。 寝る前に聴きたくなる曲です。 林:ありがとうございます。故郷や両親の曲ですが、いつも見守ってくれる何かを心の奥で感じているからこそ、ゆっくり眠りにつけるというのはあるかもしれませんね。 ◆11 At This Moment ---ノイジーなサウンドも含まれていて短い中になにか凝縮されていますね。 終わり方がまた最初から聴きたくなる魔法のようなものを感じました。 林:これは録音的にちょっとお遊びで(笑)いろいろ試させてもらいました。 ---ここからは林さんのプライベートにも迫ってみたいです。 5歳からピアノを始められたそうですが、学生時代はどのようなアーティストやジャンルを聴いていましたか? 林:クラシックピアノは中学生まで習ってました。中高生の時は、TM Networkとか、ハードロック・ヘビーメタルなんかが好きでしたね。ジャズは大学から興味を持ちました。 ---趣味についてはいかがですか? 林:趣味は音楽以外ないかな。あえて言えば、ぼーっと考え事をするのが趣味かも(笑)。 ---おすすめの名古屋グルメを教えて頂けますか? 林:味噌カツでしょうか。 ---ご自身の性格を分析すると? 林:マイペースかな。 ---名古屋芸術大学で教えていらっしゃいますが、教えることのやりがいについてどのようにお感じになっていらっしゃいますか? 林:自分が上の世代に教えていただいた素晴らしい音楽を下の世代に受け継いでいく様な感覚があって、そこにはやりがいを感じますね。 ---バンド経験が多い林さん。リーダーの時とQuin' Krantzのように他の方がリーダーをされているバンドの時で、違いはどのように感じたりお考えになっていますか? Quin' Krantzの伊藤寛哲さんはCheer Up!インタビューで、林さんには活動方針の相談にのってもらっていると答えていらっしゃいましたが、そのあたりいかがでしょう。 林:サイドマンとして活動するときは、リーダーのやりたい事をくみ取って、それを自分なりに解釈してアイデアを提供しますが、リーダーのときは、まずは自分がやるぞ!と行動を起こさないと物事が進まないので、、、そこが違いますね。 エネルギーがいります。 Quin' Krantzのリーダーの伊藤くんは学生の頃、よくTRISPACEのライブに聴きに来てくれてたんですよ。その経緯もあってバンドに誘ってくれたんですが、僕のTRISPACEでのリーダー経験から、こうだったよと伝えてるだけなんですよ。 ---昨今、名古屋のジャズシーンが熱いと感じています。Cheer Up!でもnativeやQuin' Krantzなど名古屋を中心に活動するバンドにご登場頂いております。 林さんからみて、名古屋のジャズシーンはいかがですか? 林:確かに、今、名古屋のジャズは熱くなってる思います。実際、多方面からそうお聞きします。クオリティの高いバンドが次々に誕生して、名古屋から全国に発信していこうという流れがあって、すごく頼もしいです。 ---このWEBマガジンの恒例企画です。 林さんにとってのCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか? 林さんには2013年の企画でスウェーデンのバンド「e.s.t.」を挙げて頂きましたね。最近はいかがですか? 林:ポーランドのピアニストLeszek Moždžerが大好きですね。 あとイスラエルのピアニストのShai Maestroが素晴らしいです。 ---今後の夢や展望について教えて頂けますか。 林さん個人と、TRISPACEとしての夢の両方についてお伺い出来ればと思います。 林:個人としては、ピアノがもっと上手くなりたいですね(笑)。 TRISPACEとしては、これはずっと変わらないんですが、世界各地でコンサートが開けるようなバンドになることが目標です。 ---どうもありがとうございました。TRISPACE、そして林さんのますますのご活躍をお祈りしております。 TRISPACE “The Circle” 1 The Past, The Present, And The Future 2 Phantom 3 Green Hills 4 One Scene 5 Rain 6 Ocean Deep 7 Desert Moon 8 Longing 9 The Circle 10 Always 11 At This Moment 発売日:2018年11月9日 規格番号:AGIP-3627 レーベル:AGATE / Inpartmaint 価格:¥2,315+税 TRISPACE 林祐市 ピアノ 大村守弘 ベース 山下佳孝 ドラム ■TRISPACE Profile 2008年に結成された日本のピアノ・トリオ。ピアニスト、コンポーザーの林祐市をリーダーに、ベーシストの大村守弘、ドラマーの山下佳孝が加わる。活動は名古屋を拠点に全国で行っている。イタリア、スペイン、ポーランド、アイルランドのジャズ・マガジンやインターネット・ラジオで取り上げられるなど、国内のみならず欧州でも注目を集め、2014年には、イタリアでのライブツアーを成功させている。 2010年6月、『トライスペース』でアルバム・デビュー。2014年11月、スウェーデンでレコーディングした3rdアルバム『NIGHTFALL』をリリース。 林祐市の作り出すオリジナル曲は、コンテンポラリーでありながら、叙情的でシンプルな美しいメロディーが特徴であり、それを透明感あるピアノ、温かみのあるベース、エッジの効いたドラムの3人の個性が支え、様々なジャンルをボーダレスに取り込みながら、独自のバンドサウンドを作り上げている。 ■林祐市 Profile 林祐市 ピアニスト / 作曲家 Yuichi Hayashi Pianist / Composer 5歳からピアノを始め、15歳でロックに興味を持ち作曲を始める。大学でビッグバンドに所属しジャズに傾倒するようになり、卒業後、本格的に音楽活動を開始。以後、様々なライブやレコーディングに参加する。 2008年に、自身のオリジナル曲のみを演奏するジャズバンド「TRISPACE」を結成し、これまでにスウェーデン録音を含む3枚のアルバムをリリース。ヨーロッパツアーを成功させる等、国内外を問わず活動を拡げている。 現在、リーダーとしてTRISPACEやソロピアノで活動を行う他、QUIN’ KRANTZ、高橋誠Y等、多数のバンドに在籍している。 透明感のある美しい音色には定評があり、繊細でありながら時に大胆な演奏で聴く者を魅了する。 名古屋芸術大学非常勤講師。 Yuichi Hayashi Official Website http://yuichihayashi.com https://twitter.com/yuichihayashi Facebook Page https://www.facebook.com/yuichihayashi.piano TRISPACE“The Circle”サイト(レーベル:Inpartmaint) http://www.inpartmaint.com/site/24955/ ♪最新Live information ※詳細・最新情報については林祐市さんのサイトでご確認をお願い致します。 ★TRISPACEアルバム発売記念ツアー★ 2018/11/21 名古屋 jazz inn LOVELY 2018/11/24 横浜 上町63 2018/11/25 東京Strings 2018/12/19 瀬戸 文化センター文化ホール 2018/12/26 名古屋 Mr.Kenny’s 2019/1/20 東京Apple Jump 2019/2/12 名古屋 jazz inn LOVELY 2019/3/2 三重 Salaam 2019/3/19 岡山 SOHO 2019/3/20 広島 調整中 2019/3/21 大阪 JAZZ ON TOP ACT3 <Cheer Up!関連リンク> QUIN' KRANTZ『QUIN' KRANTZ』インタビュー(2018年 林さん参加のバンド) http://www.cheerup777.com/quinkrantz.html 特集:あなたにとってのCheer Up!な音楽教えて下さい♪(2013年) http://www.cheerup777.com/cheer/hayashi.html |