第2回: Sweet Amazer (2) 言葉の天使が舞い降りる朝


 今度出したミニアルバムのタイトルにもなった、一曲目の"Sweet Amazer"。ポール・マッカートニーとウィングスの楽曲をメインにミキサーに放り込み、私風味のエッセンスを混ぜて自家製ジュースを作ってみたらこうなった・・・そういう楽曲でしょうか。60年代の影響に関して言えば、ポール・マッカートニー、ピート・タウンゼント(フー)、レイ・ディヴィス(キンクス)にひたすら入れあげた楽曲を作って来たことを白状せねばなりません。



 でも、偉そうに聞こえるかも知れませんが、純粋な意味で、歌詞に関しては、自分なりにいつも他とは違う事に挑戦して来たと思っているんです。英語の歌詞の特徴、癖を常に学びつつ、違う風味を加える、という点で。

 そもそも、この日本で、日本で生まれ育った人間で、25年も英語の歌を作って来たソングライターというのは大変少ないと思いますし、これは地球規模でみたら、実はとってもユニークで、面白い実験だったんじゃないかと思ってるんです。

 この環境で育まれた日本人独特の感性を、英語という器に乗せて色々試してみる・・・そんな方法論でずっと続けるのは、難しくもやりがいのある、そして興味深いことで、そこから得た事、学んだ事は数限りないのです。そして、何かと閉塞感にとらわれがちなこの国の空気の中では、こうやって部屋に窓や扉をつけて、外からの光や新鮮な空気が常に入る(つまり外の世界から常にフィードバックがある)作品を作るということは、これからもずっと新鮮で意味ある事なのではないかと本気で思っているんです。

 もちろん日本人なんですから、日本語で歌を歌うのは自然、というのも前提としてありつつです。



 それはさておき。

 スウィート・アメイザーのアメイザー(amazer)というのは、amaze(「驚かせる」という意味の動詞)にerを付けた名詞で、普通は辞書には載ってない、したがってあまり使われない言葉です。日本語に無理矢理訳せば、びっくりさせてくれるもの、という感じでしょうか。つまり誰かに恋に落ちたときの感情を、ちょっと捻って表したんですね。


 こと恋愛に関しての男女の感じ方はだいぶ違うのでしょうけれど、男の私からすると、女性、特に好きになった女性は驚きそのものなんですよね。強烈な、煌めくようなビックリ感があって、訳がわからない存在。最高に良い意味での戸惑いの対象なんです。でも、感情全体がシュガーコーティングされているので、まるで流行り病みたいに、抵抗する術もなく罹ってしまう。逆境であっても乗り越えてしまう。

 良いとか悪いとかではなくて、程度の差はあっても、恋に落ちるというのはそういうものではないかと。



"Sweet Amazer"の、サビの部分ではこう歌いました。


Sweet amazer, sugar bather
(または Sweet amazer, sugar blazer)
Whoever knows what's coming near?
You make me feel like a rocketeer


愛らしい驚きのお嬢さん 砂糖を浴びた貴女(あなた)
(可愛いビツクリ子さん  キラメキ砂糖の貴女(あなた))
何が向かって来てるなんて一体誰にわかる? (誰にもわからないよ)
僕にロケットの操縦士みたいに感じさせる貴女(あなた)



 一番自分の気持ちに近い日本語で表したらこんな珍妙な訳になるのかも知れませんね。

 最初の一行だけで全て言い尽くしてしまった気がしたので、正直言いますとこの歌の後の部分は、それに付け足したというか、あんまり深いものではないんです。ですので、むしろ響きを重視しました。子守唄や童謡みたいなシンプルで音の響きがいいものを目指したんですね。


 それだけ書きますとなんだかあほみたいですが(笑)、歌ってそういうものが音になった時にたまらなくリアリティーがあったりするから凄いと思っていまして。歌詞はノートにずっと書いて行くんですが、紙に書かれた二次元的なもので留まらないように気を付けてます。口で発した時にどれだけ命が吹き込まれたものになるか。


 そもそも英語でも日本語でも、どうやっても「あの想い」は完全には表現し切れませんよね。し切れないからもどかしい、でもだからこそ面白いしと言えるのかも知れません。もどかしさがなくなったら歌詞を書き続ける意味もないでしょうしね。



 何回も書き直して、何バージョンも出来て、それで絞りに絞って、どんどんシンプルにして行く。そして歌ったときに、あぁ実は最初から異空間に存在していたこの歌詞を掘り出しただけなんだ・・・・と感じさせるような強度のあるものが出来て、で実は、結局それが一番言いたかったことだと後で気づく・・・

 もちろん、こうなったら理想ですが、屁理屈こきのもうひとりの自分が邪魔して、変に形のないものを分析しようとして、おかしな方向に進む事も多々あります。特に夜になると。



 だから、雑念、邪念がまだ寝ている午前中、特に朝方とか、目覚めてすぐとかに書くと良い歌詞になることが多いんです。


 歌詞の天使が舞い降りるのは朝一番なのかも知れませんね。






Sweet Amazer/THE PENELOPES

1. Sweet Amazer
2.Heartache Close
3.Cloudcastle
4.Larkspur
5.And She Does (Does Me Good)
6.The Disappointed
7.埴生の宿 (Home Sweet Home)


The Penelopes - Sweet Amazer: http://youtu.be/U95qboJv_gk youtubeさんから
iTunes - http://bit.ly/ZP1DkF
Amazon mp3 - http://amzn.to/11th9kx
mora - http://bit.ly/Zs4EY8
レコチョク- http://bit.ly/15Ix7dS

イギリスのインディー音楽サイトNEWUSB.CO.UK - The Penelopesの新作"Sweet Amazer"の楽曲が聴けます。ぜひチェックしてみて下さい。
http://bit.ly/15ax09L





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