花堂純次監督インタビュー コメント


【塚山エリコ コメント】

『映画【蠱惑の瞳】に寄せて』

私が花堂純次監督と初めてお会いしたのは、1996年に、当時のコロムビアレコードの音楽ディレクター故・小暮一雄さんに紹介されて、Vシネマ(映画)音楽「ロンタイBaby」の打ち合わせに行った時でした。今から約27年ほど前の事です。

その頃の私は、作編曲家として専念するために演奏活動を一時中断しており、特に映像音楽をやりたかった私にとっては、とても嬉しいお話をいただいたことを今でもはっきりと覚えています。
その時は、音楽録音の日まで確か2週間ほどのリミットでして、約70曲程の劇伴音楽を書かなくてはならず、相当覚悟を決めて(笑)挑んだ記憶があります。

花堂監督は、当時からお優しくて穏やかな眼差しで、すべてを私に任せてくださり、映像とのマッチングに関しては、1カ所もダメ出しを出されずに全曲を使って頂きました。
これは、珍しい事でして(笑)、当時の私はCM音楽やテレビ関係の仕事もやってましたが、NG曲が無いというのは、本当に嬉しかった覚えがあります。
打ち合わせ中も、特に監督からリクエストも無かったので、元々自由奔放な私は本当に実験的な曲も書きました。
家族団らんの茶の間の映像に、バロック的なチェンバロの曲を書いたりもしましたね(笑)。
長時間の音楽録音が終わると監督は、一言「大胆な人ですね〜」とおっしゃってくださいました(笑)。

そんなわけで、私の中ではこのお仕事での花堂監督とこの作品の事は、ものすごく印象に残っていた訳なのですが…。

2022年の秋に、その花堂監督から「また塚山さんに映画の音楽を御願いしたいのですが〜」と連絡を頂きました。
私の事を監督は覚えていてくださった!というだけでも物凄く嬉しくて、しかもこの作品【蠱惑の瞳】の脚本を読ませて頂いたときに、なにかピーンと来る物が私の中には初めからありました。
勿論、音楽制作はお引き受けしたわけですが、監督との打ち合わせの中で、まだ完成してない映像を何度も見ながら、監督がこの作品に書ける想いを、とても深く何度も聞きました。

それは、この【蠱惑の瞳】、実はとても難しいテーマでして、それらを音として表現する時に、余り音楽先行な誘導するような音作りはしたくなかったので、音はあくまでもご覧になってる方の想像というか、イメージで広げるための物でありたかったのが私の望みでありました。
“このストーリーを自由に解釈して頂くための音楽”という立ち位置ですかね。

まずはその主人公、沙也香を演じる「小泉瑠美」さんの魅力に私は触発され、彼女のミステリアスで感情の深い、けれどとても冷めていて、複雑に人を魅了する女性、そのイメージがまず浮かんできて、曲を書き始めました。

今回は、その1曲ごとの中に、それぞれの人々の寂しさ、熱い想い、心の闘い、上手く表現できない思いやりや優しさなど複雑な人間模様を織り交ぜながら仕上げたつもりです。

監督からは、今回も全曲OKを頂けまして、映像と共に監督の目指す世界が、音楽と共にとても見事に一体化していると自負しております。

このチーム「花堂組」の国際的な感覚を持った映画【蠱惑の瞳】、普遍的な愛と人間の自己愛のテーマを世界中の方々に観ていただけたら最高です。



■塚山エリコ プロフィール
作曲家,編曲家,キーボーディスト、プロデューサー
音楽家として活動していた祖父母や伯父、叔母の影響で幼少よりピアノを弾き始め、高校在学中にプロ・プレイヤーとしてデビュー。コンサート、ステージライブ、TV、ラジオなどで活躍。1987年頃よりスタジオ・ワークを中心に作、編曲家として活動現在に至る。
アーティストのアルバム制作、プロデュース、ドラマ、映 画、ミュージカルの音楽制作、CM等、幅広い活動を行っている。
ジャズやポップス、フュージョン、ブラックミュージックを、ベースとしたアーバンで、シンプルなセンス良いコンテンポラリーなサウンドを得意としている。コンサバティブな中にも、キラリと光る Something (何か!!)を必ず折り込んで人々を魅きつけ、なによりも質の高いメロディーというものを、一番大切としている。
美的平衡感覚の伴った曲創りで、自身の集大成のアルバム制作も、演奏活動も今後行っていく予定。

2017年、ニューヨークPower Station Studio(Avatar Studios)にて、自己のバンド【POPPIN'4】メンバーにて待望のレコーディングを行った。
【POPPIN'4】 1st.ニューヨーク録音《Made In Manhattan》絶賛発売中
【POPPIN'4】2nd.東京〜ニューヨーク録音《from TOKYO》絶賛発売中

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<Cheer Up!関連リンク>
特集:Poppin'4『from TOKYO』(2022年)
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塚山エリコインタビュー(2020年)
http://www.cheerup777.com/tsukayama2020.html
特集:Poppin'4『Made In Manhattan』(2017年)
http://www.cheerup777.com/poppin1.html




【森圭一郎 コメント】

「絶対に森くんと感性が合うから!」と言って紹介されたのが花堂監督でした。あれは20年近く前です。北海道ツアーしている時の事でしたね。その後監督の作品を色々と見ていたらその意味がわかりました。監督の作品から受けた印象は「社会に埋もれている真実をあぶり出す作品」僕も現代の社会に物申したい事を作品にすることが多くて、花堂監督の作品からインスパイアされて書いた曲もあります。まさか自分が花堂監督の作品に携わる事になるなんて光栄でした。

映画「蠱惑の瞳」はとても力強いです。主人公の沙也香の自己愛が軸になっていますが、それは表面上のテーマに過ぎず、実は登場人物のそれぞれの心の闇が交差して物語が進んでいきます。一見すると沙也香が悪なのですが、落ち着いて観察してみると一筋縄ではいかない、偽善を装って弱者に近づくもの、正義を振り翳して土足で人の心に入ってくるもの、心の奥底では沙也香に憧れている者までいる。善と悪の境界線がはっきりとした現代社会には中々ない作品だと思います。

現代社会の海の底で息もできずにもがいている者達。そのもがいている人達が一筋の光を求めて頭上を眺める。手にできないとわかっていながら求めてしまう。その瞬間を、水面に手を伸ばす、その純粋な希望を僕は歌にしたかった。そんな思いで主題歌の「深き夢」が生まれました。
作曲途中に監督と何度もやりとりをしましたが、監督と話をしていると曲がどんどん「蠱惑の瞳」に重なっていって、最終的には「深き夢」が映画の一部分になれたのではないかと思っております。

この映画を観て救われる方々がたくさんいると思います。
できるだけ多くの方々に届きますように願っております。



■森圭一郎 プロフィール
シンガーソングライター
中学の時バンドを組み、歌い始める。16歳の時の事故で以後車椅子生活に。19歳の時にギターを持ち始め、ソロで音楽活動スタート。
25歳の時に1st CDをリリースし、デビュー。その後日本縦断、アメリカ横断ツアー等を行い世界中を旅しながら歌を歌っている。
ゴールドコンサートではグランプリを受賞。数々の映画音楽、主題歌も歌う。
最近では樺太アイヌの民族楽器「トンコリ」を自己流でカスタムした楽器を弾いて歌っている。

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