今回の「通り雨」制作に携わった近藤健太郎さん、高口大輔さん、及川雅仁さんからコメントを頂きました。

藍田理緒 インタビュー コメント 


【コメント】


from 近藤健太郎(作詞・作曲)

「藍田理緒「通り雨」リリースに寄せて」

作詞と作曲を担当しました近藤です。「通り雨」は自分の中で大事にあたためていた曲で、ふとした時にこの曲は理緒さんが歌ってくれたら絶対よいものになるに違いないと確信し、昨年デモを聴いてもらいました。2020年、コロナ禍となり自由に活動することが難しくなりましたが、そんな中でも足取りを止めることなく、今このタイミングで無事にリリースできたことは大きな喜びです。

編曲は旧知の仲、the Sweet Onionsの高口君。彼とは緊急事態宣言の最中、まるで取り憑かれたようにthe Sweet Onionsの録音をリモートで行いました。その時の温度感を保ったまま、「通り雨」の編曲を依頼しました。ピアノをメインに70年代ポップスの風合いを意識、間奏のソロはガットギターにしたいんだということだけ伝えて今回は一任です。実際のレコーディングは7月から8月にかけて、オケは全てリモートでやり取り、僕はガットギターを弾きました。高口君から日々届く音にときめきながら、おいちゃんの素晴らしいベースとエレキギターも加わり完成しました。そしていよいよ理緒さんのボーカル録音です。みんなで久しぶりの再会を喜びつつ和やかに進行。理緒さんの可憐でキュートな歌声はそのままに、少し憂いや痛みを含んだ包容力のあるボーカルに聴き惚れました。日々のボーカルレッスンで培ったであろう技術も後押しして、少々難解な多重コーラスを瞬時にこなしていたこともとても印象に残っています。

歌詞の中に「鍵をなくした子供のように 不安な夢を見るのもうやめよう」という一節があります。順調に思えた日々の中、突然降り注ぐ激しい通り雨のような、困難や不安に直面することが誰にもあるかと思います。目まぐるしく飛び込んでくる情報に疲れ果ててしまうことも多々あります。でもそんな中でも、音楽に安らぎや、ほんの少しでも希望を感じることができれば、世界は豊かに見えるかもしれません。理緒さんが歌う「通り雨」を聴いて僕はそんなことを思いました。皆さんも是非聴いてみてください。

【近藤健太郎 プロフィール】
POPグループthe Sweet Onionsのヴォーカル/ギター、作詞・作曲を担当。The Bookmarcsのヴォーカル/作詞。自主レーベルphilia recordsを主宰。現在までにCDプロデュースや、カフェやホテルにてライヴ・イヴェント等をゆるやかに企画展開。2016年2月、シンガー・ソングライター小林しののアルバム『Looking for a key』を自身のレーベルからリリース。藍田理緒「森のスピカ」に楽曲提供、及びサウンドプロデュースを手掛ける。

【過去の代表的な作品】
『pictures』『Life is Beautiful』/the Sweet Onions、『BOOKMARC MUSIC』『BOOKMARC MELODY』/The Bookmarcs、『記憶のプリズム』『large gate』/小林しの(作曲)、『Easy Living Vol.1』(コンピレーション・アルバム/プロデュース)、『Looking for a key』/小林しの(レーベル・プロデュース)、『森のスピカ』(全作曲、サウンドプロデュース)『Goodbye,Little Girl』/藍田理緒(作曲)

philia records
http://www.philiarecords.com




from 高口大輔(編曲)

今回は「通り雨」の編曲を担当しました。
藍田理緒さんの作品は近藤さんと共同で編曲する場合が多いのですが、今回は私単独での編曲でした。
藍田さんの作品を手がけるのはアルバム「森のスピカ」以来です。
声優・アニメ系の声を持つシンガーは初めてだったし、彼女のパーソナリティもまだよく知らない中でスタートした前回のアルバムは、手探りしながらの制作でした。
それはきっと藍田さんも同じで、その時お互いの持てる力を出し切ってのアルバムだったように思います。

その後、the Bookmarcs洞澤徹さんのアレンジによる「Goodbye,Little Girl」がリリースされました。
ポップスとしてとても完成度の高い洞澤さんの編曲・音作りを聴いて、今回は燃えるものがありました。
私などでは洞澤さんのような匠の域に達することはできませんが、少しでも近づきたい、そんな思いがスタートとなりました。

実は新型コロナウィルスによる自粛生活の前から、ドラム音源を使用してV-Drumでのレコーディングを画策していました。
生ドラムには生ドラムにしかない良さがありますが、音源を使用した時の音の抜けの良さ、他のオケとの調和の良さは知っていましたし、そこにV-Drumを使っての生演奏のテイストが混ざればより良い音ができるのではないかと考えていました。
非常事態宣言からのステイホーム生活の中で、やるなら今しかないと思い、V-Drumのセットとパソコンを繋ぎ、レコーディングしました。
結果、自画自賛ですがとても良いドラムになったのではないかと思います。

アレンジはピアノのバッキングをベースとしたものにしました。
方向性としては、シンガーソングライターの作る王道ポップスではなく、ハードロックバンドがたまにやるバラード曲、のようなテイストを目指しました。
ドラムやエレキギターのミックスが大きめなのは、それが理由です。
後半に歌を遮るように出てくるギターフレーズも、あえてのもので、気に入っています。
ドラムのリズムパターンは、シンプルな8ビートではなく、ハイハットを「チッチキチッチキ」と裏を入れることで、うねりを持たせました。

ベース、エレキギターは及川雅仁君に自分の弾いたものを渡し、基本的には踏襲してもらいつつ、随所で及川君のフレーズが散りばめられています。
こういう風にしたい、という思いを音から感じ取ってくれる貴重な存在なので、毎回細かく説明せずとも思った以上のものを弾いてくれます。
ベースだけに着目して聴く、なんて楽しみ方もしていただけると嬉しいです。

間奏のガットギターソロは、近藤さんです。
これは初めから近藤さん自身が弾きたいと言っていたので、早くにフレーズも決まっていました。
その後にホーン、アナログシンセの音などを追加して盛り上げました。
実は間奏も聴きどころなんです、この曲。

終盤の転調も近藤さんのアイデアで、半音上げるか全音上げるかを試した結果、全音上げることになりました。
半音転調はよくやるのですが全音は初めてに近かったので、どうやって展開させるか悩み、多重コーラスをスタッカートで歌って上がっていく形にしました。
フロアタムを一発「ドン」と鳴らすのは、自分の趣味です。よく使っている気がします。

アウトロのピアノソロは、思い浮かんだフレーズをほぼ一発で弾いています。
パッヘルベルのカノンやモーツァルトなど、子供の頃習っていたクラシックピアノの影響がこういうところに勝手に出てくるもので、なにか別のことをしているときに急に思い浮かび、すぐに録音しました。

藍田さんが最後に歌っている英語のフレーズは、
「bitter memories are resolved by time(苦い記憶も時が解決する)」という言葉を作ってメロディをつけ、歌ってもらいました。

メインボーカルに絡んで出てくる多重コーラスを考えるのも楽しかったです。
自分でもソラで覚えられないほどだったので、自分で歌ったものを再生しつつ、その場で藍田さんに歌ってもらいました。
すぐにラインを覚えて対応してくれた姿には、藍田さんの成長を感じました。

藍田さんのボーカルレコーディングも自分が担当しました。
ライブ経験などを経て、歌にも変化が現れてきたのでは?と感じました。
彼女の歌の大きな特徴のひとつは高音域を軽々と出せるところですが、今回は低音域の発声が特に表情豊かで、魅力的だなと感じました。
憂いの表情が歌に出てきたことが、大きな成長だと思います。

2020年の半ば、他人との接触を最低限に抑えた中での制作は、孤独ではありましたが、じっくりと音楽に向き合えた貴重な体験となりました。
例年だとライブ活動をいくつか並行していたのが、今年はゼロ。
その分、制作に没頭できた面もありました。

世の中の状況がどんどん変わり、不安が先立つようなことばかりが起きますが、荒みかけた心をスッと癒すような一曲として聴いていただけたら嬉しいです。

【高口大輔 プロフィール】
philia records所属。
the Sweet Onionsのメンバー。
東京都内在住。
ドラム、キーボードを主に、ベース、ギターなども演奏し、編曲も行う。
2020年は、the Sweet Onionsの活動のほか、小林しの、the Caraway、藍田理緒などの作品に参加。

philia records
http://www.philiarecords.com





from 及川 雅仁(bass,Electric Guitar)

藍田理緒さんの作品には二回目の参加でしたが、今作は完全にリモートで録音を行いました。
普段であれば高口さんとその場で演奏しながらフレーズを作っていくのですが、今回は伝えられたキーワードとデモを頼りに雰囲気を掴みました。

頂いたデモのベースはサステインが短く、それが静寂の隙間をコントロールしている印象を受けました。なので、元々サステインの短いヘフナーのベースと、全編ミュートしながら弾いたジャズベース、2本分録音しジャッジして頂きました(結果ヘフナーベースが採用されました)。

高口さんのプロデュースは、テクニカルな事より感覚に重きが置かれています。その為、難しいフレーズを弾くのではなく、シンプルなフレーズに感情や雰囲気を乗せる事が重要になります。それを掴むのは難しい反面やり甲斐がありますし、二人で録音後に答え合わせをして狙いが当たっていると充実感がありますね。

決して弾けない様な事は要求されませんが、面白いフレーズやグルーヴが気持ち良いポイントは逃さないので、それを引き出す為に時間をかけ、懇切丁寧にコミュニケーションを取って頂けます。あの行き届いた包容力が高口さんの人気の秘密かなと思います(笑)。
また、最近はデモ通りに弾く箇所やアドリブで弾くべき箇所が何処なのか、自然とわかる様になってきました。これは長い付き合いが功を奏していると思います。

理緒ちゃんの歌は、以前より深みが増していると感じました。嬉しい、悲しい、楽しい、という単純な表現でなく、嬉しさの中にも傷があったり、悲しさの中にも希望があったり、白か黒だけでない深みを今回感じましたね。そこへ導く近藤さんの詞も素敵ですし、僕もピースの一つになれて嬉しいです。理緒ちゃんの今後が益々楽しみです。

【及川雅仁プロフィール】
1977年 東京都出身。ベーシスト/アレンジャー。
作曲・プロデュースからアートワークまでこなすマルチプレーヤー。
(参加アーティスト)
Ricarope / the Caraway / 常盤ゆう / the Sweet Onions / the cat flowers / KNIT RED RUM / 藍田理緒 など。

Twitter
https://twitter.com/mashvox





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