<前編> <後編>
---會田さんは中学、高校と吹奏楽部に入っていらしたそうで、そのあたりのお話も伺いたいですね。 まず楽器との出会いは幼少の頃、ヴァイオリンを習っていらしたとか。 會田:母親がギターを弾けるようにさせたくて習わせたらしいんですけど、僕はヴァイオリンの稽古が嫌で。あまり手が大きくないので逃げ回ってたんです。 でも音楽を聴いたりするのは好きだったから、辞めたいとは思わなかったけど、習うのはイヤ!みたいな(笑)。 ---ヴァイオリンは何歳ぐらいまで続けたのですか? 會田:結局中学2年までダラダラと(苦笑)。 でも、今に繋がっている面はあって。ヴィブラフォンは弓で弾くこともあるんですよね。弓は持ち慣れているから、ラクかもしれない。 ---ヴァイオリン用の弓を使うんですか? 會田:はい、ヴァイオリン用のを使ったり、コントラバス用のを使ったりします。 ---12歳の時、打楽器と出会ったそうですね。 會田:小学校の合奏団です。音楽の先生が私物のドラムセットを持ってきたんです。 あまり小学校にはそういうのが無かったから、いきなりドン!とドラムセットが来た時に、「わー、かっこいいわ!俺はこの楽器をやりたい!」って思っちゃったんですよね。 あれが直に太鼓と出会ったきっかけだったんですよ。 当時ビートルズとか聴いてたんで、同級生がCDを持ってきたんです。「ヘルプ!」とか聴いてすごくかっこいいなと思って。真似出来るかもしれないと思って耳コピーしてこっそり音楽室に忍び込んで練習したりして。 先生たちも許してくれていて、結構自由に触らせてもらった時代があります。 ---中学校に進学されて吹奏楽部に入ったのですね。 會田:その時の顧問の先生には本当にお世話になって。 僕は当時ブルックナーを好きになっていたんですが、いろんな話を聞かせてくれました。 決してコンクールで強い学校ではなかったけれど、夏季合宿なんかもあって、先生が夜にチェロを弾いていてその音色が聴こえてきて・・・バッハの《無伴奏チェロ組曲》を弾いてたんです。 そういうものに触れて、やっぱり音楽って素晴らしいものだなあっていう風に思うようになりました。 顧問の先生に、「そんなに音楽が好きなら先生に習ってみなさい」って言われて、仙台フィルハーモニー管弦楽団の佐々木祥先生を紹介して下さったんです。 中学のその時点でその後を決定づけるような出会いがありましたね。 ---會田さんの才能に気付かれて見出して下さったんですね。 會田:今でも感謝してます。 ---高校では、仙台二高吹奏楽部に入られたんですよね。 會田:はい。なぜ仙台二高の吹奏楽部かっていうと、僕が中学の頃に二高の吹奏楽部は《元禄》(櫛田胅之扶作曲)っていう曲をやってて、東日本学校吹奏楽大会に出たりコンクールの東北大会にも破竹の勢いで進んだ年があるんですよ。それを生演奏で聴いて、先輩たちの演奏する《元禄》に感激してこの吹奏楽部に入りたい!と思って、進学して。 高校一年のコンクールの課題曲は《吹奏楽のための「風之舞」》っていう曲で、締太鼓を使うパートだったんですけど、やたら前で叩いた役割でした(笑)。フルートの横あたりで。 音楽的ないい経験だったなあって今も思っています。 そういう意味で吹奏楽との関わりは自分にとって大きかったし、吹奏楽部の先輩で課題曲マニアな人がいたんですよ。 ---課題曲マニアですか?(笑) 會田:僕も課題曲大好きだったんで熱くトークしてましたし、それこそ間宮芳生先生とか三善晃さんとか・・・日本を代表する作曲家の先生方の作品が多くあったから課題曲で名前を覚えましたね。保科洋さんの曲いいよなー!とか。自分が生まれる前の作品も聴きました。 課題曲から受けた影響は大きいです。いま、日本の作曲家を演奏していこうというのは、もしかしたらそういうところで聴いていたから、こういう風になってるんじゃないかな? ---課題曲は、中学生がやるには難し過ぎるんじゃないかな?っていう曲もありましたね。 會田:ありましたね。《饗応夫人》とかね。一番課題曲で難しいとされてる(笑)。 畠山:昔は課題曲がアルフレッド・リードの曲だったりしたんですよね。 會田:《音楽祭のプレリュード》ですね。 畠山:昔は、元々ある曲を課題曲にしてた時代もあるんですよね。 會田:ある年から公募したり委嘱したりっていうことになったみたいですね。 ---余談ですが、かなり前に會田さんは畠山渉さんを何か吹奏楽の演奏会で見かけた記憶があるそうですね。 會田:そうなんですよ。みやぎスーパーバンドの手伝いに行った時にすれちがったような・・・。 畠山:みやぎスーパーバンドって学校の先生方のバンドですよね?その時、僕は何をしていましたか? 會田:お手伝いか聴きに来ていたか・・・。でも何か畠山さんのことは知ってました。 ---この顔でしたか?(笑) 會田:はい。でももう10年ぐらい前の話ですね。 畠山:僕が大学生の頃ですね。スーパーバンドといえば、コンクールの課題曲の講習会で打楽器が足りないからお手伝いしたことがあります。(注:畠山は大学の吹奏楽部で打楽器担当) 會田:ああ、やっぱり!僕はその時シロフォン叩いてました。共演してたんですね! 畠山:わ!すごい光栄です! 會田:《ピッコロマーチ》(注:2007年度吹奏楽コンクール課題曲)の年だと思います。 畠山:《ピッコロマーチ》やりましたよ。タカタン!っていう箇所を先生が「カツ丼!」って教えてたのを覚えてます(笑)。 會田:僕、《ピッコロマーチ》でシロフォン叩きました。 課題曲講習会に、高校の吹奏楽部の顧問の先生から手伝ってくれって言われて。 やっぱり確実にお会いしてますね!すれ違いどころじゃなく一緒に演奏してたんですね。 畠山:ご無沙汰してます(笑)。 會田さんと一緒のステージに立ててたんですね。いずれ指揮者として共演できたら! 會田:よろしくお願いします! 畠山さん、指揮者になられたんだなあって思ってたんですけど、打楽器を演奏されてたことは思い出せなかったんですよね(笑)。良かった。思い出せた(笑)。 ---やっぱり吹奏楽部同士って盛り上がりますよね。吹奏楽曲で特に好きな曲は? 會田:何にしようかな(笑)。わ〜、選べないなあ。思い入れもあるし。 まずは間宮芳生先生の《カタロニアの栄光》(1990年度課題曲)ですね。 今聴いてもオーケストレーションの面からいってもこんなに高度なことが出来る課題曲で、しかもそれが技術的な制約の中で中高生でも表現出来るようになっていると思います。 ---海外作曲家のものでお好きな曲はいかがですか? 會田:《アルメニアンダンス part2》ですね。2は本当にいい曲だと思う。 ---冒頭のヴィブラフォン、とてもきれいですよね。 會田:《アルメニアンダンスはpart1》がとても人気がありますけど、part2のほうは全体的にほの暗い曲だなと思ってるんです。あの曲は好きです。ヴィブラフォンもですけど、銅鑼の使い方とか、3楽章の銅鑼の余韻を放り投げるような中間みたいなのが凄いなと思ってて。 ---吹奏楽部時代に心に残っている練習方法はありますか?例えば私はシンバルを持って手を伸ばして何分耐えられるか?とか、中学校の周りを走り込みでゼイゼイ息を切らしたりとかいろいろあるのですが。 會田:うーん・・・一つ打ちですね! ずーっと一つ打ちをやって、速くしていって、均等に出来るかとか左右の高さが一致してるかとか。 仙台フィルの佐々木先生に習い始めた時、「一つ打ちから始めよう」と言われて。 鏡の前で10分ぐらいずっと欠かさずやりなさいと言われました。 一つ打ちだけで二時間ぐらいのレッスンを受けたこともありますけど、曲とかそういう問題じゃなくて、一つ打ちをきれいに出来るかどうかは打楽器奏者にとって大きな問題だし、そこは今も気をつけてますね。 やはりそれが音の立ち上がりを良くするんですよね。自分の描きたい音を描く為に絶対必要なスキルだから、そういう練習が一番印象深いですね。 畠山:基本的に楽器って、ポーンって叩いたら消えていくだけじゃないですか。 でも、伸ばしの音にクレッシェンドがあったり、精神の中で作っていく。 打楽器ってアフターモーションっていうんですかね。叩いた後の動作で変わってくると思うんですけど、でも物理的にはあまり変わっていなくて。 僕は、指揮でも叩いた時でも、匂いというか余韻を挿入したりするのが好きなんです。 でもそれってコンクールのシーンでは凄くやり過ぎているような、"先生にこうやれって言われました"、"やると上手く聞こえるだろう"、そういう目的からずれているのも見かけていて。 その辺の話を伺いたいです。 會田:やっぱりわざとらしいのは一番良くないことかな。 僕は大学に入りたての頃、吉原すみれ先生に「どうしてお前はそんなに無駄な動きばかりするんだ?次やったら破門だ!」って(笑)。 「なんで余計なことばっかりするんだ!音楽をやってるんだから、踊ってるんじゃないだろう?」と言われたことがあったんです。 大学に入りたての頃はよく分からなかったんですけど、何年かたつにつれて、音に集中していれば余計な動きは要らないし、動いたからといって音は別に変わるわけではない。 むしろ立ち上がった音を聴くほうに意識を向ければ余計な動きはなくなっていくし、そんな動きをする必要はないっていうことにある時気付いたんですよね。演奏に集中出来るし。そういうことをすみれ先生に教わったので。 それでも動きがないと!って思う方に言えるのは、僕らパーカッションは絶対動作はあるわけだから、無駄のない動きがものすごくきれいに見えると思います。 僕らは音楽家なんだから音に集中すべきだろう、そういう風に演奏をしたほうがいいんじゃないかなと僕は思っています。 それは自分自身、肝に命じている部分です。 『Ambition』(作曲:薮田翔一)吹奏楽との共演 ---武蔵野音大ご卒業の後は大学院に2年行かれたんですね。 武蔵野音大に計6年間いらして。一年生の時から打楽器もすぐ習われるのですか? 會田:そうですね。僕の入っていた学科はすごく長くて、毎週90分のレッスンがあるんです。 試験は一年の時だけ前期20分、あとは大学四年まで前期も後期も30分、自分で演奏曲を組み合わせて30分プログラムを作りなさいというものでした。 そして卒業試験は一時間演奏会をしろというものです。 学科が演奏家コースみたいなものだったので、とにかく演奏をしろという、さっきの徒然草の話じゃないですけど舞台に立ちまくれみたいな、そういう状態の大学四年間でしたね。 そういう中で、審査して下さる先生方も言ってみればこの上ないお客様ですよね。 全ての専門的知識を兼ね備えた先生方にどうやったら楽しんでもらえるだろう?ということも考えながらプログラムを組んでいったので、そういう意味ではとても勉強になりました。 だからいろんな音楽を知らなきゃいけないなあと思ったし、そういう中で日本の作曲家の作品もCDなどで出会いましたね。 ---その試験のプログラムはソロですか?誰か別の楽器の方と組んだりもしたのですか? 會田:他の方と組むのも大丈夫なんですが、僕は一回だけピアニスト呼んだ以外はずっとソロでした。 やはり一人でやれることを追求したいと思ったので。 大学院に入ったぐらいから、誰かと一緒にやることもちゃんと勉強していこうと思いました。 ---音楽大学には強い憧れがあって。マンガ「のだめカンタービレ」を読んで、大変なことも多いだろうけど音楽漬けの日々が楽しそうだなと思ったりしていました。 會田:たとえば西洋音楽史の先生とか知識を持った先生方といろいろお話して、そのままお昼食べに行ったりとか・・・そういう経験も大きかったですね。 些細な雑談から発見が生まれたり。 魅惑のアンサンブル コントラバス×ピアノ×マリンバ魅惑のアンサンブル コントラバス×ピアノ×マリンバ ---大学4年の時にサントリーホールでデビューなさったそうですね。どういう経緯だったか教えて頂けますか? 會田:サントリーホールで企画している「レインボウ21」という学生公募演奏会のような企画モノがあったんですね。 大学毎に取りまとめてサントリーホール側で審査して、面白い企画の演奏会に対してサントリーホールが全面的に支援して演奏会を実現させるというものです。 年に3公演を学生主体の企画でやるということで、僕は日本の作曲家と打楽器音楽との関わりを探求した演奏会「打楽器音楽、その創造と継承」というタイトルで企画書を書いたんです。 面接もありダメで元々と思っていたらそれが採用になって、演奏もやって企画者でもあるという、ある意味前代未聞だったのかもしれませんね。 本来だと音楽を専攻している学生が企画して、演奏者は別の演奏専攻している学生に依頼するのが一般的だったようなんです。 僕の場合は企画の中心であり、演奏も中心でやるっていうダブルヘッダーだったので、準備にはとても時間がかかったし徹夜したりもしてたんですけど、その経験でサントリーホールという素晴らしいホールで演奏も出来て自信になったのは言うまでもないし、やっぱり、行動する演奏家になりたいなと思うきっかけにもなりました。 ---ここからはちょっとプライベートなこともお伺いしたいです。 学生時代クラシックや吹奏楽曲以外には、どんな音楽を聴いていましたか? 會田:レベッカが好きでした。解散して間もない頃好きになって。 一昨年復活した時はライブに行って感激しましたね!今年も行きますよ。 ドラムをやってみたかったんですよね。いつでもロックにシフトする気持ちはどこかにあったんです。 結局クラシックに突き進んでいったから、そうはならなかったけど。 今でもドラムやれと言われたら、いつでもやるつもりでいます。 大学ぐらいからドラムから離れていきましたね。というのも大学ではドラムに特化して叩いていた先輩たちがいて、すっごい上手だったんですよ。そういうのを見ていると違うなあと思って。 もうちょっと、俺には俺にしか出来ないことをやったほうがいいかもしれないなあと思いました。 ドラムはドラムで奥深いですよね。 ---仙台の街でお好きな場所やお店などを教えて頂けますか? 會田:場所で好きなのは、広瀬川、宮城県美術館ですね。それから家族で「重庵」というお店に、あと「LINKS」は紅茶やカクテルが美味しいですよね。 仙台の街の移り変わりは激しくて、用事があって仙台に帰ってくるたびに浦島太郎状態です(笑)。 ---他媒体のインタビュー記事を読み、"音楽家にならなかったら小説家になりたかった"というのを読みました。文章を書くのがお好きなんですか? 會田:好きですね。今も、演奏してると寄稿を頼まれるんですよ。現代音楽協会とか。 あと、助成を得るために企画書を書いてばっかりですね(笑)。さっきも新幹線の中で一本企画書を作って送りました。 でも結局文章書くのが好きで良かったと思ってて。 音楽やるにも、こうしたいからお金が必要なんです、お願いしますとか、この企画のこういうところがメリットですよとか言葉にしないと伝わらないので。 いまだにトレーニングしてます。本を読む習慣もつけています。 ---どんな本を読まれますか? 會田:小説全般ですね。 今読んでるのは高橋和巳です。もう何十年も前に亡くなった方です。 こだわりなくなんでも読みますね。芥川龍之介や夏目漱石など著名な人は一作以上読むようにしてます。古典も、最近流行りのものもチラチラ。 ---仙台在住の伊坂幸太郎さん作品は読まれますか? 會田:読みますよ。「アヒルと鴨のコインロッカー」面白かったですね。仙台だなあ〜と思いながら。 「ゴールデンスランバー」は映画を観たんですが、東京で観たから余計ジーンときましたね。 あの映画、藤崎百貨店のエレベーターからスタートするんですよ。 ---今まで観て特に心に残っている映画は? 會田:「バック・トゥ・ザ・フューチャー」かな。パート1〜3全て観ましたけど、感覚として凄くいいなあと思いますね。音楽もいいですね。 あと「天使にラブソングを」も好きだな。いい歌がいっぱい出てきます。 ---長時間お一人で演奏されたりご多忙な中で、何か健康法や気分転換の方法はありますか? 會田:何かしら身体を動かすようにはしていますね。 スポーツはしていないですけど、なるべく歩いて帰ったり、毎日腹筋するようにしたり。こまごまとやっています。体力が要る仕事なので。 あとは、みんなとお酒を飲みに行ったりすることが、ものすごく僕の中で気分転換になります。 いろんな音楽を聴くことも面白い気分転換になるし、TVも好きだし。 ---お笑いも観られるんですか? 會田:サンドイッチマン大好きです!YouTubeもよく見てますよ。 彼らは本当に面白い。 ---あとですね、このCheer Up!インタビューでは恒例の企画なのですが、會田さんにとっての「Cheer Up!」ミュージックを教えて伺いたいです。 気分がアガる、元気が出る、落ち込んだ時聴きたくなるなどとっておきの音楽を教えて頂けますか? 畠山:僕はGLAY! ---そうでしたね。畠山渉インタビューでは、GLAYのアルバム『HEAVY GAUGE』を選んでもらいました。 會田:僕はレベッカの『REBECCA Ⅳ』というアルバムですね。 これは僕が人生で初めて買ったアルバムなんです。小学一年の時でした。 「ガールズ・ブラボー」って曲を聴いて、人生で初めて「欲しい!」って言って買ったアルバムです。 そういう意味では、このアルバムの存在そのものにアガりますね。 入っている曲も素晴らしいですよ。僕の原点です。 非常に高揚感に満ちています。内容もいいし、僕が音楽が好きだって気持ちが一番そこに詰まっています。 『REBECCA Ⅳ』REBECCA ---そのアルバムで一番好きな曲は? 會田:「76th Star」かな? ---さて、インタビューも終盤になりましたが、8月5日、仙台で開催される「會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル」のこともお伺いしたいと思います。 會田:2015年12月に仙台で一度リサイタルをしたんですけど、その時とはちょっと違った趣向のものをやりたいなと、終わった時から考えていて。 今回の会場であるエルパーク仙台というのは僕自身、高校時代や浪人時代にここに何度も通ってスタジオを借りて稽古してたんです。 そういう愛着のある場所で、少しお話も交えながら"ヴィブラフォンってこんな楽器ですよ"ということを分かってもらえるような内容にしたいと思い企画しました。 ---このリサイタルでは、ナビゲーターとして白藤淳一さんもご出演されるそうですね。どんな方なのでしょう? 會田:白藤淳一さんは作曲家で、岩手大学を出られて、現在は岩手大学で教えていらっしゃるのですが、作曲家の薮田翔一さんを通して知り合いになりました。 すごく面白い方なんですね。とても博識のある方で。すごく耳もいいし音楽に精通している方です。 そういう方と僕とで、"こんな作品のこんな魅力がありますよ"っていうことを、僕は演奏家目線、白藤さんは作曲家目線で伝えていけたらいいなと思いましてナビゲーターとしてもご登場頂くことになりました。 ---このリサイタルでは先ほど話題に上がった《カタロニアの栄光》を作曲なさった間宮芳生さんの曲も演奏なさるとか。現在88歳とご高齢ですが、つい昨年、會田さんの委嘱新作《ヴィブラフォンとマリンバのための音楽》を書かれたんですね。 會田:はい、去年お願いできました。 僕も間宮先生のお名前を知ったのは中学三年ごろ、《カタロニアの栄光》とか《ベリーを摘んだらダンスにしよう》とか、ああいう曲を聴いてすごく好きだったんですよね。課題曲の長い歴史の中で、ちょっと特異な曲の一つじゃないですか。 打楽器のソロの為の作品はなかったので、こういう方に作曲してほしいと長年思っていて、ある意味中学高校からの夢だったので、それが結実して僕としても嬉しいですし、ぜひ多くの方に聴いて頂きたいなと思います。 ---1stアルバム『with...』に収録の曲を作曲されている田口和行さんの、また別の曲《ヨイスラ綺譚》も演奏されるんですね。 會田:はい。このリサイタルの為に新しく作って頂いて。僕自身もまだ譜読みしているところなんです。 これは奄美大島の民謡を素材にした作品です。田口さんは鹿児島に在住されていて、鹿児島の文化と密接に関わりを持ちながら作曲をされているので。僕自身も田口さんの招聘で鹿児島に行って公演したこともありました。 今回は田口さんは来れないけれど、作品を仙台で初演するということで、こういう文化があるんだなあということを想像で感じてもらえればと思っています。 ---Carlos Gardelさんという外国の方の曲も演奏されるんですね。 會田:これは歌曲なんです。編曲している咲間貴裕さんは仙台出身で今も仙台に在住されている作曲家で、来年の吹奏楽コンクール課題曲にも作品が選ばれています。 ブエノスアイレスに留学されていたんですね。アルゼンチンの音楽から今回《思いの届く日》という歌曲を選んで、それをヴィブラフォンにアレンジして頂いて。とても美しい作品です。 ---仙台のリサイタルについて、仙台のリスナーにメッセージを頂けますか? 會田:元々ヴィブラフォンの持っている美しい部分を堪能してもらいたいなと思います。 仙台のリサイタルは七夕前夜祭の花火の日なので、早くから街に繰り出して頂いて、リサイタルが終わって少したつと花火が打ち上がりますので(笑)。 構えずに来て頂きたいですね。あまり「現代音楽だ」みたいに思われたくないです。なんでも演りますし。現代音楽っていっても、最近作られた曲、ポップスと同じですよね。 あまり硬い名前で敬遠されるよりちょっと聴いてもらって好きになればいいと思うし、なんだこれは?イヤだなってことなら構わないし(笑)。 まずは聴いてもらうことが一番。聴いてみて初めて自分の好みも分かってくると思うので、まずは聴いて頂きたいです。 きっかけみたいなものを僕が作っていかなくてはと思っています。 畠山:ヴィブラフォン聴いて、花火見て。 會田:けっこういいデートコースになると思いますね(笑)。土曜日ですしね。 撮影:薮田翔一 ---アルバム『with...』で、會田さんの言葉「僕は音楽に"主情"すなわち人間の所在を探し求めている」と書いてあったのがとても心に残ったんです。 そのあたりについて、もうちょっと詳しく教えて頂けますか? 會田:僕の好きな作曲家の言葉を借りたような感じなんですが、平たく言ったら叫びみたいなもので。 結局音楽って日本の民謡とか、たとえば雨ごいであったりとか、豊作を祝うこととか何かに対して願ったりとか、ポップスの中では"失恋して辛い"とか、"恋が成就して嬉しい"とか、何か喜びを表していたり。 端的に言えば人間の喜怒哀楽みたいなもの、それは全部一つの言葉でいえば"叫び"という風に集約出来ると思うんです。 嬉しいから叫びたいし、悲しいから叫びたいし、そういうものが例えば作曲家によって様々違うと思ってるんですよ。 ベートーヴェンと日本の作曲家とではまた違っているわけだから、そういうものをヴィブラフォンを通して、打楽器を通して表現するのが演奏家の役割だと思っているので。 人間の所在というものはその人達の感情的なものだったり、自分の気持ちを突き動かすようなものが音楽の根幹なのじゃないかなって思っている感じです。 畠山:僕は仙台吹奏楽団で常任指揮者をやっているのですが、指導しながら指揮をしています。 ちょうど今《ラッキードラゴン第五福竜丸の記憶》っていう曲をやっているんですね。 ヴィブラフォンがすごく活躍するんです。で、どのマレットがいいかなあとか、モーターはどのぐらいの速さがいいかなとか試行錯誤しながら団員と一緒にやっています。 ぜひ打楽器を一生懸命頑張っている中高生や社会人楽団員に向けて、ヴィブラフォンを演奏する上で気をつけていくといいよっていうアドバイスを伺いたいです。 會田:自分の音、自分の今出している音を聴くことかな。 ヴィブラフォンって非常にペダリングでも変わってくる。一番、ペダルなんじゃないかな?と僕は思っていて。伸ばしっぱなしにするといつまでも伸びていってしまって。ちょっとそれがモヤモヤして。 僕も中学の頃初めてヴィブラフォンに触って、ペダルを踏むといろんな音が鳴ってモヤモヤした感じで。金属音でもあるから、音に酔っちゃう感じになりがちなんですね。 かなり細かくペダリングして、時には完全にペダルを使わないで弾いてみると、割とその音もきれいだったりアンサンブル的にも成り立つと思います。 自分の出している音に耳を傾ければ、もっと多分楽しくなってくるんじゃないかな。 そして、いろんな音楽に耳を傾けることじゃないかな、と思います。 ヴィブラフォンの音楽だけじゃなくて、ジャンル問わず。 オーケストラもそうだし、JAZZもそうだし、ROCKももちろんだし、いろんな音楽の面白さというのはどこにでもあるわけだから、そういうところから学ぶのも大きいかも。 僕は高校時代から仙台フィルの会員で、お小遣いで行ける範囲だったので結構通った記憶があるんですね。すごく僕にとっては大きな糧になっていて。 珍しい曲も聴けたし、そういう生演奏に触れるのは一番勉強になると思っています。 ---2017年11月には尺八との共演が予定されていたり、2018年には権代敦彦さんのヴィブラフォン協奏曲の委託初演が計画されているそうですね。他にも決まっている初演はありますか? 會田:いま東京に住まわれているんですけど仙台出身の山内雅弘さんという作曲家がいらして、来年その方のヴィブラフォン協奏曲をやる予定です。 他の楽器とのコラボはその楽器との相性というか融合、一人では出せない音が出るので、そういう分野はどんどん切り開いていかなきゃなと思っています。 コンチェルトはヴィブラフォンのものは少ないからどんどんやっていきたいですね。 ヴィブラフォン以外の打楽器のコンチェルトもやっていきたいです。 僕は「これはこうだ」と枠組みを作るのがものすごくイヤなんです。そうやってどんどん視野が狭くなっていくのは悲しいし、広い世界でものを見たい。ヴィブラフォンもやれば太鼓だってやるし、いろんな音楽をやるし。いろんな音楽が好きだし、多様であることをもっと受け入れるべきだと思ってるんです。多様であったほうが絶対いいに決まってる。 ---それはすごく分かりますね。このCheer Up!/Cheer Up!みやぎも、會田さんの仰ることと同じ気持ちで運営しております。 最後に、今後の展望や夢について伺えますか? 會田:もっともっと打楽器の音楽が身近になってほしいなと思います。 海外の作曲家とのコラボレーションをするのはもちろんのこと、日本の作曲家の曲を外国でも紹介できるように土壌を整えたいです。 仙台在住の作曲家ともコラボレーションしたいですね。 拡がりが出てほしいというのは自分の中であるので。 楽器としてこういう魅力があるんだなあというのを僕自身が宣伝媒体のようになっていけたらいいなと思っています。 ---本日は長いお時間どうもありがとうございました。8月5日のリサイタル、そして今後のますますのご活躍を心より楽しみにしております。 『ヴィブラフォンのあるところ』會田瑞樹 ChapterⅠ 軌跡 1.Billow 2(作曲:薮田翔一) 2.Luci serene e chiare(作曲:C.ジェズアルド 編曲:白藤淳一) 3.Music for Vibraphone(作曲:渡辺俊哉) 4.華麗対位法 Ⅲ-2 by Marenzio(作曲:横島浩) 5.ヴァイブ・ローカス(作曲:湯浅譲二) Chapter Ⅱ 超越 6.Wolverine(作曲:川上統) 7.color song Ⅳ -anti vibrant- (作曲:福井とも子) 8.海の手 Ⅲ(作曲:木下正道) 9.光のヴァイブレーション(作曲:権代敦彦) 10.夢見る人(作曲:M.マレ 編曲:會田瑞樹) 発売日:2017/6/7 レーベル:ALM Records 規格品番:ALCD-113 ◆會田瑞樹(Aita Mizuki)プロフィール: 1988年宮城県仙台市生まれ。武蔵野音楽大学ヴィルトゥオーソ学科打楽器専攻卒業、同大学院修士課程修了。 佐々木祥、星律子、吉原すみれ、神谷百子、有賀誠門、藤本隆文の各氏に師事。 日本現代音楽協会主催第九回現代音楽演奏コンクール「競楽\」第2位入賞。 デビューアルバム『with...』は朝日新聞夕刊推薦盤、音楽の友12月号推薦盤に選出。 2016年12月にはNHK-BSプレミアム「クラシック倶楽部」において「打楽器百花繚乱 Percussion Extraordinaire -Mizuki Aita-」が全国に渡って放送された。 2017年6月、ALMコジマ録音よりセカンドアルバム『ヴィブラフォンのあるところ』をリリース。 會田瑞樹 Official Web Site http://mizukiaita.tabigeinin.com/ 會田瑞樹の音楽歳時記(Blog) http://marimperc.hatenablog.com/ https://twitter.com/marimperc ♪最新演奏会情報 會田さんの演奏会等の最新情報詳細は下記から確認をお願い致します。 http://mizukiaita.tabigeinin.com/AMHp-schedule.html ◆2017年8月5日(土) 14時開演/エルパーク仙台・スタジオホール(宮城県) 會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル in Sendai ー出会いの場所でー ◆2017年8月31日(木)19時開演/東京オペラシティ近江楽堂 岩瀬龍太×會田瑞樹 クラリネット×マリンバデュオ 木下正道氏への委嘱新作を含む、木質の暖かみある世界。 ◆2017年9月22日(金)19時開演/東京オペラシティ近江楽堂 曽我部清典×會田瑞樹 トランペット×ヴィブラフォンデュオ「會曾 Iso-Duo Vol.2」 伊藤弘之作品再演、薮田翔一、黒田崇宏、伊藤巧真、白藤淳一各氏新作初演。トランペットとヴィブラフォンの倍音の綾。 ◆2017年10月26日(木)19時開演/杉並公会堂小ホール 會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル ーはじまりの場所でー ◆2017年12月5日(火)19時開演/東京杉並公会堂小ホール 角銅真実×會田瑞樹 パーカッション×パーカッションデュオ |