和のリズムと洋のリズムを兼ね備えた異色のボーカリスト、ayukoさんが2ndアルバム『Naked Circus』をリリースした。このアルバムはクルトワイルの歌曲集。クルトワイルは『三文オペラ』で知られ、ドイツからパリへ亡命、後にアメリカに移住と波乱の人生を送った作曲家。名前は知らないという方でも「マック・ザ・ナイフ」や「スピーク・ロウ」といったスタンダードナンバーを耳にした方は多いのではないだろうか。 今回のアルバムではアレンジ、ピアノの浅川太平さんとayukoさんがタッグを組みリスナーをたちまちayukoさんと奏者が紡ぎ出す独自の世界へと誘う。聴きおわった時には、クルトワイルへのayukoさんの熱い想いに触れ満足感に包まれる。 このアルバムはどうやってできたのか?ayukoさんと浅川太平さんに詳細にインタビューさせて頂いた。また、今回アルバムアートワークを手掛ける唐澤龍彦さんのご厚意で可愛らしいイラストをレイアウトさせて頂いており、イラストと共にインタビューを楽しんで頂ければと思う。(2017年6月)
<ayukoインタビュー> <浅川太平インタビュー>
♪ayukoインタビュー ---今回、題材にクルト・ワイルを選んだ理由やきっかけなどを教えて頂けますか? ayuko:『歴史は繰り返す』 クルトワイルが活躍した時代は1920年からです。その時代からあともう数年で100年の年月が経とうとしています。 ピアニスト浅川さんと作曲者のアイデアを話し合う中で、クルトワイルの楽曲は私の心を鷲掴みにしました。 日々の生活の中で時代の歪みみたいなものを感じてたのです。 クルトワイルの曲を聞くことで、実在した歴史のメッセージを受け取ったような気持ちになりました。 これは、私だけではなくたくさんの方に届くメッセージになるんじゃないかと思いました ---ayukoさんの1stアルバム『Can we do it?』でもピアノとアレンジに浅川太平さんを迎えていますが、浅川さんとの出会いのきっかけについて教えて頂けますか? また、浅川さんはどんな方でしょうか? ayuko:私が最初に浅川太平さんとお会いしたのは『俺の株式会社レストラン』のステージでした。 浅川さんのピアノで歌わせていただいた時、日本の美しい景色をたくさん想像しました。 西洋の音楽を歌っているのに、とても不思議な感覚です。 大きな空を大胆に眺めるのではなく、例えば小さな針の穴に糸を通すように、空の美しさを覗いているような気持ちです。 このようなユニークな方とはお会いした事がなかった。 浅川さんは追求心が強い一面をお待ちです。研究者のようですが、非常に変わった観点から音楽や楽曲を見つめているように思います。 そして斬新なようなアレンジでもその意味と意図が明確ですので、聞いているとしっくりきてしまう。 浅川さんの感性と理論的なバランスが音楽をより深いものにしているのだと思います。 そして、ご本人はとても丁寧な方で1つ1つの所作が舞を見ているようです。 ご飯を食べる時や手の動きの美しさは真似ていきたいところの1つです。 ---アルバム『naked circus』のには「バーズ・プロジェクト1」と書かれています。 ライナーによると「極私的な観点で、その時代を代表するアーティストが、当時の社会との摩擦から産み出した詩やメロディーを現代ならではの感性でillusionさせていく、というシリーズ」とのこと。 このプロジェクトを考えた経緯、今後どのように展開させていきたいか?など教えて頂けますか? ayuko:毎日、たくさんの曲を演奏します。しかし、作曲家1人に人生を深く捧げることはなかなか難しいです。 そんな中でも、無意識に好きな曲を聞いていたり、その作曲家の曲をたくさん演奏している事に気づきます。 ではどんな時代に、どのように、この曲たちが生まれてきたのか。 興味が湧いてきました。 意外と面白いエピソードが隠されていたり、自分自信と重なる所があったり。 今現代社会の事が見えてきたり。 人生の摩擦や葛藤から生み出された作曲家の曲たちを題材にする事で、今の私たちの音楽の葛藤が見えてきたり。 当たり前だと言われてきた様々な事をもう一度見直すキッカケがあるんじゃないか。 希望を持って音楽や表現と向き合ってみたい。 そういうプロジェクトにしていきたいと思っています。 ---アルバムは浅川さんがディレクションなさっているそうで、アルバム全体を通してvocalは「メルヘンで無垢な主人公の少女のようなストーリーテラー」という存在。歌い方で何か心がけたこと、エピソードなどあれば教えて頂けますか。 ayuko:『本番は気持ちよくて寝てしまう』 というのも、何が起きてもおかしくないレコーディングでした。 即興性や一期一会の音を大切にする表現者とご一緒させて頂きました。 今回は同室録音一発録りというレコーディングでしたので、何度も録り直せるレコーディングではありませんでした。 とても集中しなければいけない反面、いかに相手を信頼して、没頭し、ウトウト眠るくらいまでリラックス出来るかが勝負です。 ジョアン・ジルベルトの公演中、ギターと歌の音がしなくなり、お客様が息を飲んで次の音を待っていたら、本人は寝ていたというエピソードがあります。 それって、最高だなと個人的には思います(笑)。 あとは気が散らないように、小さな少女になりきるために、お気に入りの可愛い帽子をかぶりました(笑)。 声に関しては特に何も意識しなかったのですが、歌に関しては演劇のセリフになり過ぎず、セリフすらも歌にしてしまいたいと思っていました。 ---レコーディングの現場はどんな感じでしたか? 印象的なエピソードなどがあればご披露頂けますか? ayuko:レコーディングの現場は緊張感と緩和の連続でした。 コーヒーを飲んで、ホッホッと家族の団欒をしてたかと思えば、さぁと立ち上がり部屋に入りその一瞬を捉えるという感じです。 マックザナイフの録音の時。 「これでいかがでしょうか?」 「はい、いいですよ」 と言うような感じで全員がオーケーを出しておりました。 しかし何かこれじゃないという感覚があって、他の曲を録ってから、最後にもう一度マックザナイフを録らせて欲しいとお願いしました。 最初の音が始まり、皆さん全く別の音楽が生まれてきて、体が燃えるように熱くなりました。 これだ!と思った事を鮮明に覚えています。 終わってから齋藤徹さんが握手をしてくれた時、全身の力が抜けてしまいました(笑)。 ---参加メンバーの竹内直さん(バスクラリネット、ts、fl)、齋藤徹さん(Cb)というベテラン勢はayukoさんからみてどんな方々ですか? ayuko:これは、とても難しい質問です!(笑) 竹内直さんは以前より「Obsidian」「Talking to spirits」「Thompkins squeare park serenade」が好きでよく聞いていたのですが、実際に、ご本人とお話していると非常に繊細な方だなと感じました。 しかし、楽器を持ったとたん、繊細さと大胆さが両極端にあり、直さんの音の支配力は圧倒的です。 竹内直さんの音楽にも民族的な要素を強く感じる事がありました。 日本海のような波のうねり、松の枝に止まる1匹の鷲。 そういったイメージを私は持ちました。 ミステリアスな一面もあり、ご一緒するといつも何が起こるのかドキドキします。 直さんの音色が今でも夢に出てきます。 齋藤徹さんは横浜エアジンのうめもとさんとサックス奏者かみむら泰一さんよりご紹介頂きました。 徹さんと初めてお会いする前に、徹さんの作品をいくつか聞かせて頂きました。 かみむら泰一さんとの作品「ショーロ&インプロヴィゼー ションライブ」から今の私と同じ歳の時の作品「Tokyo Tango」そして最新アルバム「travessia」。 徹さんの音は夜の森の中を1人で歩いていくような恐怖。またその中で聞こえてくる弦の凄まじい音。 感覚的なところに訴えるものがあり、お会いするのが「怖い」とさえ思いました。 徹さんとお会いする日には靴を履き忘れるほど緊張していました(笑)。 実際お会いしてみると、とても穏やかで、映画の話、舞踏のお話。たくさんの文学。アナログレコード。心が踊る事ばかりでした。 気さくにゆっくりとお話くださる姿と少し掠れて風に溶けるような声がとても印象的でした。 その後、何度かリハーサルする機会に恵まれますが、どのリハーサルも一つ一つが貴重な体験に溢れています。 手からこぼれ落ちるほどたくさんの影響を受けました。 その中から一つご紹介するとしたら、沈黙が音楽を作っていく体験は衝撃的です。 お二人の偉大な背中をこんなに近くで感じることができた事、同じ時代にお目にかかれた事に深く感謝しています。 ---ここからは、一曲ずつお話をお伺いします。 ◆1.Alabama Song(『マハゴニー市の興亡』より) ---チェレスタの美しさ、メロディの切なさで、一気にこのアルバムの世界に惹きこまれます。 この曲をプロローグに持ってきたのは? ayuko:タイムスリップをして欲しい。 チェレスタの音は現代と過去をつなぐ夢心地な音と演奏をお願いしました。 そこで何万年も変わらない月を見て『Oh moon of alabama』 『おお。アラバマの月よ』 という歌詞が出て来ます。 どの時代、どの場所にいても月を眺める瞬間。 みなさんにもありませんか? 今と昔を繋ぐ架け橋のようなこの歌詞を最初に伝えたかった。 ◆2.Lost in the Stars(『星空に消えて』より) ---ワイルの作るメロディは、なんて優しく美しいんだろうと感じさせる一曲。 シンプルな伴奏がayukoさんの歌をさりげなく盛り上げているんですね。 間奏のサックスにもジーンときます。 ささやくようなところから、盛り上がるところまでayukoさんの表現力が素晴らしいと感じました。 ayuko:私はこのLost in the starsが大好きです。 絶望に打ち砕かれる様子を神様に語りながら、夜の美しい星を眺めます。 浅川さんのイントロは死を告げる鐘の音。 そこから物語が始まります。 竹内直さんのサックスの音は温もりを感じると同時に絞りだす声のようです。 涙をグッと堪えた事を思い出します。 実際、この曲を歌った後は全く言葉が出てこなくなってしまいました。 そんな時、やっぱり空を無意識に眺めました。 ◆3.Bilbao Song(『ハッピーエンド』より) ---楽し気な曲ですね。Lost in the Starsとはまた一味違ったayukoさんの歌声が印象的です。 自動ピアノで歌うシーンの曲だそうですね。 ayuko:コロコロと歌の歌詞が早口言葉のように流れていきます。 歌っている時、ラップの要素を感じました。 自動ピアノとは、無人ピアノ伴奏です。 その考え方はもう1904年代のドイツにはあったそうですが、オルゴールの仕組みと同じだそうです。 ピアノロールという長い絵巻のような紙をセットしゼンマイ形式で曲を弾かせたり、空気の力でピアノのハンマーを叩いて曲を弾かせたりという感じです。 蓄音機が出て来た1930年代には製造がなくなり始めたそうです。 浅川さんのピアノの演奏には驚愕です。 テンポがあったり、ルバートがあったりするので、息を合わせるのに苦労するのですが、録音の時はお互いを見ながら息を合わせるとすでに遅いので、感覚だけで演奏しています。 リハーサルの時にはストップウォッチを持ち込みながら秒数で曲の感覚を掴んでいく練習をあみだし、何度演奏しても全く同じ秒数になるまでになりました(笑)。 さて、本番は?(笑) もちろん!感覚通り! ◆4.Mack the Knife(『三文オペラ』より) ---スタンダードナンバーとして、とても有名な曲ですね。ノリのいいアレンジが多いように感じますが、このアルバムでは語り掛けるようなアレンジで、吟遊詩人が語っているようなイメージなのですね。 齋藤徹さんのコントラバスも、近くで聴いているような臨場感がありますし、竹内さんのバスクラリネットが唸るようで心に残ります。 ayuko:これぞ、浅川太平さんのアレンジだと思う一曲です。初めて聞いた時の驚きは凄かったです(笑)。 浅川さんのアレンジによって、クルトワイルという作曲家の美しい骨組みと狂気を改めて見直すきっかけとなった曲です。 齋藤徹さんの最初の出だしの音、たった一音でこの存在感。 一つの音にかける精神性とこの物語の狂気が相まってゾッとします。 そして徹さんのソロでは、コントラバスってこんな音もでるの?音色の可能性に興味が尽きる事がありません。 また弦が震える事によって起こる心の共鳴が詰まっていると思います。 竹内直さんのバスクラリネット。 船の汽笛が鳴るイメージがこの曲にある事、バスクラリネットの独特な音色にそのイメージが重なる事をお伝えしましたが、見事にぶち破って頂きました(笑)。 そんな稚拙な解釈ではダメだよと言われているようでした。 まさに唸る、うねる、という表現がピッタリだと思います。音って生き物みたいだなと思いました。 また、当たり前だと言われてきた壁を壊しながら進み、再構築していく竹内直さんの一面を垣間見たような気持ちです。 ◆5.Johnny's Song(『ジョニージョンソン』より) ---この曲はインストなのですね。心地良く聴きました。 戦争で精神を病みボロボロになりつつも希望を失わないという主人公ジョニーが気になりミュージカルも見てみたくなりました。 ayuko:ジョニーの人間性が見事にメロディーになっていると思いませんか? 素朴でちょっと間抜けなところがあるけれど、とても優しい人。 私はそんなイメージを持ちました。 直さんのリズム感がさらにメロディーを浮き立たせていると思います。 いつも自身に厳しい浅川さんの優しい一面がピアノで聞ける珍しいテイクでもあると思います(笑)。 ホッと一息つく曲ですが、渋い演奏に身を委ねて欲しい一曲です。 ◆6.Alabama Song(『マハゴニー市の興亡』より) ---このアラバマソングを2回登場させたのはどういう経緯か教えて頂けますか? プロローグと違った趣で、ayukoさんの歌声がとても力強い! ayuko:アラバマソングは歌っていると2つの人格が現れてきました。 1つは男を騙す悪い女 もう1つは懺悔する女 この曲の持つ二面性を表現してみたくなりました。 そして、2回登場させる事によってクルトワイルの持つ二面性も表現できるのではないかと思いました。 自分でもビックリするような声が出てきて、隠されていた新たなあゆことの出会いでした。 そんなスリルが音楽の面白いところでもあります。 ◆7.September Song(『ニッカボッカホリデイ』より) ---ピアノのアルペジオが美しいですね。しっとりとした情緒を感じる曲で、後半、ayukoさんの歌に寂しさも感じます。 ayuko:このアレンジをお願いしている時期は真冬でした。2人の老人夫婦が銀座のクリスマスツリーを綺麗ねぇ〜って眺めてました。 私はこの2人の情景に雪を降らせたいな、、と思ったと同時に、お2人の老い=2人の時間のリミットを想像してしまいました。 そうか生きる時間が限られてるから、2人の時間が尊いのか。September songの歌詞はまさにそんな歌詞です。 無性に恋がしたくなります。 この話を浅川さんにするとその場で、雪の音を作ってくださいました。 私はその音が気に入って、踊りだしてしまい、それがたまたまワルツだったので、ワルツになりました(笑)。 浅川さんのピアノの音色が時間を止めてくれるようで日本の細やかな情緒が現れているかなぁと思った一曲でした。 それが伝わりとても嬉しい気持ちです。 ◆8.I'm a stranger here myself(『ヴィーナスの接吻』より) ---バスクラリネットがベースを吹いているんですね。 ギリシャのビーナス立像が生きた女性に変わるというストーリー!なんだかとても面白そうです。 後半はコントラバスも参加、アレンジもユニークと感じました。 ayuko:アレンジのアイデアは浅川さんからでした。役割をアベコベにして「私にとってはなじみのない場所」というタイトル通りの違和感を演出してみたいと。 ギリシャ像から生身の女性に変わり理髪師に恋をする。 私はストレンジャー【変わり者】 鬼気迫ってくるようなバスクラリネットが女性の熱く燃える恋を代弁しているようで、とても情熱的な曲になりました。 齋藤徹さんの指ではじくコントラバスの音がが生々しく、よりリアルさを表現しているように思います。 そして、この曲はクラシックの発声方法で大胆に強く歌われる事が多いのですが、、私は言葉を囁くように歌い、後半でだんだんと狂っていく様子を表していきたいと思いました。 歌詞も音に聞こえてくるようで、言葉のメリハリがハッキリしているので、歌っていてとても楽しい一曲でした。 最後のコントラバスの一音まで楽しんでいただければ嬉しいです! ◆9.Speak Low(『ヴィーナスの接吻』より) ---マック・ザ・ナイフ同様にスタンダードナンバーとして知られた曲ですね。 「恋を語るときは小声で囁いて」という歌詞。ayukoさんのハートフルな歌声が沁みます。 優しくロマンティックなアレンジで、フルートも美しいですね。 ayuko:日本語というのはペターっとした言語だな、という印象があります。やっぱり英語で歌う曲は英語の発音に気をつけて歌った方が良い? しかし、今回私はこのSpeak lowではペターっと伸ばす日本的な歌にリニューアルしてみたかった。 桜の花びらが散っているようなイメージの中で、竹内直さんに篠笛のようなフルート演奏をお願いしました(笑)。 「恋を語る時は小声で囁いて」 マイケルジャクソンが日本に来日された時、日本人の声の小ささと、のっぺりとした言葉の穏やかさに驚いたという話を聞いた事があります。 私はこの話が大好きです。 スタンダードを歌っていると発音が悪いからダメだという声をよく耳にします。 そう一旦言われてしまうと、私もそうですが、一生懸命英語の発音を勉強します。 でも発音に気をとられるばかりに、その先の表現が疎かになってしまうような気がしてるのです。 グルーヴというのは日本の発音方法を用いても生まれるのではないだろうか。 この曲を自分自身がどう感じ、どう表現してみたいのか、そんなところに焦点をあててみたいと思う一曲です。 ◆10.A Bird of Passage(『星空に消えて』より) ---『星空に消えて』はワイルの遺作なんですね。 内容は哀しい曲ですが、ayukoさんの歌声には澄んだ空気のようなものを感じました。 そして、ワイル作品への愛情も! ayuko:この曲は特別でした。最後の最後までこの歌を手探りで探しました。 クルトワイルの墓石に彫ってある曲ですが、演奏者がとても少なく珍しい曲のようです。 内容は宗教的な香りがするようにも思いますが、作曲家として生み出す苦悩や時代との戦い、またクルトワイル自身が音楽を通じて体現してきた絵画のような美と美から外れる狂気が感じられ、1人の作曲家の人生が歌詞とメロディになったようだと思いました。 最後の歌詞には「Go forward into dark again」という歌詞が2回書かれています。 この5文字はどの歌詞よりも大切にしたかった。 レコーディングは上手く表現したいとか歌いたいとか、聞こえたいとかそういう欲が出てきます。 そういった所を全て諦めたい。 書くのは簡単ですが、これが意外と難しかった(笑)。 私は何者であるか?という自問自答の日々が続きました。 母からもらった声を存分に生かし、アンダーな自分自身も素直に歌える事。それが私のよい所だと思います(笑)。 そしてクルトワイルへ向けてきた愛情を感じて頂ければ非常に嬉しいです。 ---ここからはayukoさんご自身についてお伺いします。 5歳の時、初めて見たマイケルジャクソンの公演で感銘を受け、音楽に興味を持ったとのこと。 そのことについて詳しく伺えますか? ayuko:この話をしたら少なくとも一週間ぐらいの時間が必要ですね(笑)。 兄が最初にマイケルジャクソンにハマりました。 兄と過ごす時間が長かった私は自ずとマイケルジャクソンの音楽に触れる事となります。 そんな中で、父が本物のエンターテイメントを子供達に見せてやりたいという思いで頑張ってくれました(笑)。 私にとっては生まれて初めてのライブでした。 お客さんの熱狂ぶりも、興奮を煽る大きな要因だったかと思いますが、マイケルジャクソンが現れ、1つの動きで音楽が始まった瞬間、その壮大な音楽とダンス、非日常な世界にただ涙が流れてきました。 そこから毎日、毎日、買ってもらったパンフレットとCDとにらめっこする日々が続きます。 そうです。その熱は冷める事なく30歳になった今もまだ続いています。 ---中学卒業後単身留学されて、ヴォーカル活動を始めたとのこと。留学を決意したきっかけなど教えて頂けますか? ayuko:和太鼓演奏していたおかげで、海外交流の機会や学校意外での人との交流に恵まれました。 そのご縁からカナダに留学をさせて頂けることに。 中学の受験勉強という流れにどうしても乗れない中、塾も頑張って通わせてもらいましたが、この子は手に負えないで破門。 急に踊ったり、歌ったり。気持ちが別の場所にあるとどうしても我慢ができなかった。 父が海外という選択もある。という言葉を発してから私は猛勉強です(笑)。 また、その頃は和太鼓でプロになりたいと強く思っていましたが、体の限界やプロの厳しさを垣間見ることで、少し離れて自分を見つめ、全く別の事をしてみる大きな賭けの時間でもあったように思います。 ---幼少から和太鼓軍団『武蔵流龍神太鼓』に入門されていたとのことですが、これはご自身で「やってみたい!」と思って始められたのでしょうか。 ayukoさんにとって和太鼓の魅力とは? ayuko:姉がクラシックピアノと声楽をしているのですが、リズム感を鍛えるために最初に嫌々入門したそうです。 母が師匠に「太鼓ってどうやって叩いたらいいのですか?」って質問したら 師匠は「浮かれて叩けばいい」 と言ったそうで、これだ!と思ったそうです(笑)。 和太鼓は本当は私の方がやりたくてダダをこねました。 当時4歳くらいだったと思いますが、手が小さいので入門はバチが握れるまで待て、と言われ入門するまで我慢に我慢を重ねました(笑)。 和太鼓を叩く側からの和太鼓魅力といえば、思いっきり力一杯叩いても答えてくれる楽器である所。 また踊りと融合しながら音楽が奏でられる所。 誰でもすぐできる所。 聞く側からすると、太鼓を初めて聞く方には経験があると思うのですが、その音量と体の肋骨が揺れる感覚、お腹に響いてくる音にびっくりすると思います。 それは和太鼓の持つ性質として、空気振動と地震動両方で音が鳴ってくるからだそうです。 その振動がもたらす感動は客席にいても一緒に体現しているような感覚だと思います。 ですから和太鼓奏者が高揚し叩いた音はそのまま観客席へストレートにお客様の骨に振動として届きます。 聾学校にも太鼓を叩きに行きましたが、奏者が高揚すれば同じように観客も高揚してきます。聞こえてくる音があるのだそうです。 音色と精神、舞が融合し、目の前の人を楽しませる、そんなところに魅力が詰まっていると思います。 今は人前で叩く事は少なくなりましたが、小さい子達に太鼓を楽しさ伝えられたらと時々一緒に練習に参加したりします。 子供達より楽しんでいる自分がいます(笑)。 ---ayukoさんが学生時代によく聴いていた音楽、影響を受けた音楽について教えて頂けますか? ayuko:マイケルジャクソンは私の青春を捧げたと思います。 そして、レディスミス・ブラックマンバーゾは飽きる事なく愛聴してます。 学生の頃は、エラフィッツジェラルドやニーナシモン、ウィルソンシモナールやエリスレジーナにもだいぶ影響うけてると思います。 イエローモンキーやおおたか静流さんの曲も大好きです。 ---2006年から本格的に都内各所ライブハウスで活動をスタートなさったayukoさん。 日本語の歌曲をジャズにアレンジした”Jazzpanese"、絵画のようにサウンドを構築する”Drawsongs”など、さまざまなユニットを立ち上げているとのこと。 そういったアイディアはどのように閃くのでしょう? ayuko:「ジャズパニーズ」はお客様の声から生まれました。 『俺のレストラン』で歌うようになってからたくさんの意見を聞く機会があります。 「ジャズが日本語の表現で聞けたら」というご意見をたくさん頂きました。 調べてみると、ジャズを日本語で表現されてきた方達の熱い功績がたくさんありまして、これは面白い!と思いました。 浅川さんの命名した「ジャズパニーズ」というユニット名もとっても気に入っています。 「Draw songs」はドラムス池長一美さんと出会うことによって閃きました。 池長さんのドラムスを聞いた時に音で絵画を見ているような気持ちになり、ドラムスからハーモニーが聞こえてくるようでした。 コンテンポラリーボイスという考え方がすでに存在してますが、詩を歌うのではなく声や身体を駆使して作るボイスノイズです。 それだけでは伝わりにくい現状もあるので、メロディーや詩とバランスを保ちつつ合わせられないかと思ったのがきっかけです。それぞれが筆や鉛筆、クレヨンになり音を描いていき、知識から少し外れて感覚的にその音を感じとってもらいたいなという思いからでした。 ---このWEBマガジン恒例の質問です。 ayukoさんにとってのCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか? マイケルジャクソン『デンジャラス』 ---今後の展望や夢について教えて頂けますか? ayuko:できる限り歌っていたいなと思いますし、閃いたことをその都度紹介していけたらと思います。 まだまだ共演してみたいミュージシャンもたくさんいますし、身の丈に合った範囲でアナログオーディオもやりたいです。 ---どうもありがとうございました。この素晴らしいアルバム『Naked circus』、ぜひ多くの方に聴いて頂きたいです。ayukoさんの活動の更なる拡がりも応援しております。 『Naked Circus』ayuko 1.Alabama Song 2.Lost in the Stars 3.Bilbao Song 4.Mack the Knife 5.Johnny's Song 6.Alabama Song 7.September Song 8.I'm a stranger here myself 9.Speak Low 10.A Bird of Passage all songs written by Kurt Weill 発売日:2017.5.6 規格番号:AFD117 発売元:Audio fab records Ayuko(vo) 竹内直(ts.bcl.fl) 浅川太平(p.celesta.arr) 齋藤徹(wb)4.6.8に参加 竹内直 Official Website http://dp24001847.lolipop.jp/ts_nao/index.html 齋藤徹 Official Website http://travessiart.com/ 唐澤龍彦のサイト http://tatkar.info/ 唐澤龍彦 Instagram https://www.instagram.com/TATKAR0420/ ◆ayuko プロフィール:
5歳の時、初めて見たマイケルジャクソンの公演で感銘を受け、音楽に興味をもち、中学卒業後単身留学。カナダでジャズピアニストPeter Taylorのグループに参加し、カナダの都市を巡りホールコンサート、教会、クラブなどでヴォーカル活動を行う。 ayuko official web http://ayukojazz.wixsite.com/ayuko ayuko official blog http://ameblo.jp/ayuko0828/ ♪最新Liveインフォーメーション 詳細・予約につきましてはayukoさんのサイトで確認をお願い致します。 http://ayukojazz.wixsite.com/ayuko/schedule ◆2017年7月8日(土) 札幌Cats & Dogs naked circus発売記念ライブvol.4 ◆2017年7月14日(金) 銀座Deep naked circus発売記念ライブvol.5 ◆2017年7月22日(土) 「Live× Projection series 2」新潟新発田ジャズ喫茶BIRD ◆2017年7月23日(日) 「Live× Projection series 3」新潟新発田藤塚浜海の家「パンの木」 ◆2017年8月26日(土) 水戸Cortez naked circus発売記念ライブvol.6 ◆2017年8月28日(月) 日吉Wonderwall naked circus発売記念&ayukoバースデーライブvol.7 ◆2017年9月17日(日) 多摩センターWarp naked circus発売記念ライブvol.8 |