期待のニューカマー、キモトケイスケさんをご紹介します。今月、3曲入りミニアルバム『arbre livre e.p.』をリリース。良質で普遍的な良さを感じるポップスで、甘い歌声はすっと耳に馴染み心に寄り添ってくれます。コーラスがまたとても美しいんです!そんなキモトさんに、アルバム制作エピソード、曲作りのこと、音楽キャリアについてじっくりお伺いしました。 また、今回のプロデューサー高口大輔さん(the Sweet Onions/philia records)から制作コメントをお寄せ頂きました。併せてじっくりお読み頂ければと思います。(2019年9月)
<キモトケイスケ インタビュー> <高口大輔 制作コメント>
---今回リリースのミニアルバム、タイトルに「e.p.」とつくのが、以前CDをよく買っていた頃のことを思い出してワクワクしました。タイトルの『arbre livre』とはどういう意味なのでしょうか? キモト:フランス語で arbre(木)とlivre(本)で、「アルブル・リーヴル」と読みます。自分の漢字の名前が木本(キモト)なので(笑)。 ---初めての音源をリリースすることになった経緯について教えて頂けますか? キモト:音楽活動を本格的に始めるにあたって、まずは自分の事を知ってもらう名刺のような物を作ろうと思っていて、名刺なので自分の名前が入ってた方がいいと思って。それでフランス語だと、arbre(木)とlivre(本)で韻も踏んでるし響きもいいので、それをタイトルにしました。 作品を発表するタイミングをずっと考えていたのですが、9/16にギターポップレストラン(以下、GPR)という、お客さんとしても何度も通った大好きなイベントに出演させていただく事になり、自分を知ってもらう良い機会だと思って音源をリリースする事にしました。 ---プロデューサーはthe Sweet Onionsの高口大輔さん。ギターポップ・シーンでのプロデュースが多く、Cheer Up!にも何度もご登場頂いております。高口さんがプロデュースすることになったきっかけについて教えて頂けますか? キモト:今回収録した3曲とも、元々は自分一人で作った音源でした。 作品として発表するにあたっては、自分の音源を客観的に判断していただく必要があると思い、高口さんにお手伝いをお願いしました。 高口さんは音楽的な素養もあり、マルチプレイヤーで楽器に関する知識も豊富なので、僕の的を得ない要望にも柔軟に応えてくれました。歌を新しく録音して、打ち込みのドラムを生ドラムに差し替えてもらい、MIXやEQの調整もお願いしました。最終的なチェックは、2人で行いました。 野球中継を無音で流しながらミックスの確認作業を行っていたのですが、高口さんの贔屓のチームが負けている事が多くて、そのおかげで作業がとても捗りました(笑)。 音楽以外の共通の話題が多いのも、スムーズに作業を進める事が出来た要因なのかと思います。 ---高口さんとの出会いのきっかけについてはいかがですか? キモト:SoundCloudにアップしている自分の音源を高口さんの所属バンド the Sweet Onions のレーベル、philia recordsに送ったのが、高口さんと知り合ったきっかけです。 「運が良ければ聴いてくれるかな」くらいに思っていたのですが、翌日のSoundCloudの再生回数が異常に増えててビックリして(笑)。 そのすぐ後に高口さんからメールをいただいて、レーベル主宰の近藤健太郎さんからもメールでお返事をいただきました。その後、自分が出演するギター弾き語りのライブにお二方で観に来てくれたのが初対面でした。 それからはお二方と知り合いのミュージシャンの方々とも繋がりができました。9/16のGPRでは、日頃仲良くさせていただいているその皆さんと共演させていただきます。 ---ここからは1曲ずつお伺いします。 ◆1.光をかぞえる ---きれいな曲で、メロディが切なくて何度も聴きました。前に進みたくなるようないい曲! 3曲ともにコーラスが美しいですが、この曲では特に際立っていますね。一人多重コーラスなのでしょうか。 ドラムは高口さんの演奏ですが、その他の楽器は打ち込みですか?生楽器で弾いているところもあるでしょうか。 キモト:前に進みたくなるような曲…とても嬉しい感想をありがとうございます。 コーラスは1人で重ねてます。 この曲は特にemotionalな要素が強いと思ったので、他の2曲よりもコーラスの音量を若干大きくして、雰囲気を盛り上げています。 自分一人で録音する時は、ギター・ベースは生楽器で、ピアノは音楽ソフトに入っている音源を使って自分で弾いています。ストリングス・グロッケン・パーカッション類は、音楽ソフトの音源を手入力してます。 【セルフライナーノーツ】 全編を通してストリングスが流れる、ミディアムテンポのバラード。 ドラム録音では、後半の変則的なタイミングでのフィルを高口さんに何度も叩いてもらいました。 高口さん曰く、ブライアン・メイ(!!)の後半のギターソロが、MIXとEQの調整によってとても印象的になりました。 ◆2.さよならクロエ ---切なさと温かさがキモトさんの曲や歌の魅力と感じますね。このタイトルはどこから? キモト:ボリス・ヴィアンの「うたかたの日々」から、曲のタイトルと歌詞の参考にしました。 ---キモトさんの曲作りについて、どのように作っているのか伺えますか? キモト:言葉とメロディーが一緒になったフレーズが浮かんでから、曲作りを始める事が多いです。それをきっかけにして、曲調や歌詞の内容、アレンジの方向性を考えます。 完成までの予測がある程度ついたら、ギターで大まかに曲を作ります。ピアノを使って、メロディーやコードのベース音など細かい所を確かめつつ仕上げます。その時点で、所々で歌詞がハマっている事が多いです。 歌詞は、メロディーに無理にはめようとすると上手くいかない事が多いので、言葉だけを考えてからメロディーにはまるかを確かめる事が多いです。 作詞は自宅では集中できないので、喫茶店かファミレスで考える事がほとんどです。 【セルフライナーノーツ】 使用楽器やコーラスなど情報量がとても多く、MIX作業にとても苦労しました。トリッキーなイントロ、サビでの転調、2拍3連のキメフレーズ…アレンジ面では一番お気に入りの曲です。 自ら弾いたベースが予想外に評判が良いので、是非そこにも注目して聴いてほしいです。 ◆3.ミルクはいかが?? ---高口さんがドラム、ピアノとホンキートンクピアノで参加しており賑やかなサウンドが楽しいですね。 歌詞がすっと素直に心に入ってきます。キモトさんの甘い歌声、そして普遍的なものを感じるポップス、もっともっと聴いてみたくなりました。 キモト:ありがとうございます。この曲は高口さんが一番気に入ってくれている曲で、元々は自分が弾いてたピアノも、高口さんが弾き直してくれました。ホンキートンクピアノは特に指定しなかったのですが、まさに欲しかった音だったので思わず唸ってしまいました。高口さんと作業していると、何も言わなくても意思疎通ができている事がよくあります。 時間が経っても色褪せない、普遍的な良さを持つ音楽を沢山聴いてきたので、自分でもそんな音楽が作れればと思ってます。 【セルフライナーノーツ】 自分の好きなバンドにはコーヒーをテーマにした曲が沢山あるので、「コーヒー」をお題にして書いた軽快なシャッフルビートの曲。 高口さんの弾くホンキートンクピアノが、fifth avenue bandの♪nice folks風の雰囲気を出してくれてます。 ハンドクラップ(2人×4回=計8人分)も、とても良い音で録れてます。 ---ここからはキモトさんの音楽キャリアについてお伺いしたいです。 まず、いつごろ音楽に目覚めたのでしょうか? キモト:ミュージシャンには、両親が音楽好きで自然と家に音楽が流れていたという方が多いかと思いますが、僕の場合は音楽とは無縁の家庭に育ちました。 小さい頃は音楽を聴くよりも、外で遊んだりスポーツをする方が好きでした。音楽に目覚めたのは、ギターを弾き始めてからだと思います。 ---楽器を始めたのはいつごろですか? キモト:ギターを弾き始めたのは16歳の頃です。友達の家でギターを弾かせてもらったら、自分のギターも欲しくなって。当時は部活が忙しくて、アルバイトする時間がないけどギターが欲しいと母に話したら、なぜかギターはすぐに買ってくれて…今でも不思議なんですよね(笑)。 ギターを弾くのが楽しくなって、すぐに音楽にのめり込むようになりました。何も言わずギターを買ってくれた母にはとても感謝しています。 ---バンド活動はされていましたか? キモト:ギターを始めてからすぐにバンドを組みたいと思い、ビートルズが好きなのですぐにバンド組めるだろうと思ってたのですが、周りにはビートルズ好きがいなくて、すぐにバンドを組む事が出来ませんでした。 音楽好きな友達はいたのですが、結局バンドを組む事もなく、一人で好きな曲をコピーしたり、楽曲分析をしてました。バンド活動してる人がとても羨ましかったです。 ---シンガーソングライターになろうと思ったのはいつ頃だったのでしょう。 キモト:実は、シンガーソングライターという意識がほとんどなくて(笑)。 作った曲をたまたま自分が歌っているというのが近いと思います。 ギターを弾き始めた時点から、ギターソロや早弾きなどのテクニックには全く興味がありませんでした。メロディーとコードが重なった時がとても気持ちいいと感じていたので、曲のコピーばかりしていました。曲作りで自分の個性を出せればと思っています。 ---学生時代によく聴いていたジャンルや夢中になっていたアーティストについて教えて頂けますか? キモト:ギターを始めてからは、ビートルズを始めとするロックの教科書に出てくるような英・米のバンドをひと通り聴いていました。 高校時代の親友の影響で、大瀧詠一さんや山下達郎さんなどの所謂ナイアガラ系の音楽も聴くようになり、70年代の日本のシティポップやニューミュージックも好きになりました。 大学時代の友達が、カジヒデキさんの音楽を勧めてくれて『mini skirt』を聴いたら衝撃を受けて。そこから当然のようにフリッパーズギターも聴くようになりました。彼らが影響を受けたり元ネタにした音楽を漁ったり、昔の音楽雑誌を古本屋で探し回ったりオークションで買ったり、本当に夢中になってしまいました。特に1stアルバムは、全曲空で歌えるくらい何度も聴きました。 音楽だけでなく、文化や流行などを含めたメジャーなものに対するカウンター的な姿勢も、自分の性に合っていたのだと思います。彼らと同時代に活躍した他のバンドや、後追い世代の音楽も大好きになりました。 自分が影響を受けた日本のポップスについて調べると、共通して関わっている方がいる事がわかりました。牧村憲一さんを知ったのもその頃でした。 ---その音楽プロデューサー牧村憲一さんが主宰なさる「牧村憲一音学校」に通っていらしたとのこと。 音学校ではどのようなことを学びましたか?教わったことで大きかったなあと思うことは? キモト:学校で教えてもらった事は沢山ありますが、授業では毎回楽曲の提出がありました。他の生徒さんが制作した楽曲を沢山聴かせていただく機会があったので、自分が作った楽曲を相対的かつ客観的に捉えるようになれた事が一番大きかったと思います。 それまではずっと1人で音楽をやってきたので、学校に通わなければ自分の作品の良いところや改善した方が良いところがわからなかったと思います。 ---学校の期間はどのぐらい通ったのでしょうか? キモト:およそ3時間の講義が3週間に1度あり、期間は半年間でした。 ---牧村さんはどのようなお人柄でしょう? キモト:自分のように音楽に興味があるだけの一個人に対しても、質問があればとても丁寧にお話をしてくださいます。 常に新しい出会いを大切にされている方で、その貪欲な姿勢が70年代〜80年代にかけて、あれだけの偉業があるにもかかわらず、その後フリッパーズギターやL⇔Rを、最近では昭和音大出身者の才能を発掘し、今でもご活躍されているのだと思います。 ---キモトさんのプライベートについても、ちょっぴりお伺いしたいです。プライベートタイムではどんなことをされるのがお好きなのですか? キモト:昔は海外に行くのが好きで、短い間ですが住んでいた事もあったのですが、最近は全く行けてなくて…今年こそはと思ってるのですが、まずはパスポートの更新をしないとダメですね(笑)。 休みの日は、ライブやトークイベントに行く事が多いです。毎週末どこかしらに顔を出してるので、年間だと70〜80本になると思います。沢山刺激をもらって、自分の音楽活動のモチベーションにしています。 ---このWEBマガジンの恒例企画です。 キモトさんにとってのCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか? 「Live At The El Mocambo」Elvis Costello & The Attractions キモト:スタジオで作り込んだアルバムも好きですが、ライブアルバムも好きです。これはコステロの初期のライブアルバムで、常に聴き続けている1枚です。 ---今度はフルアルバムを聴いてみたいです。どのようなアルバムを作りたいとお考えですか? キモト:100%のポップミュージック。 ---今後の夢や展望について教えて下さい。 キモト:自分が好きな音楽に対する思いを強く持っていれば、同じ様な思いを持った人達に出会える事を、この数年特に感じています。 今までは与えてもらうばかりだったので、これからは自分の音楽を通じて、そのお返しが少しでもできればと思っています。 お互いを高め合う事ができる人達との出会いを大切にしながら、これからも音楽活動を続けていければと思っています。 ---どうもありがとうございました。キモトさんのフルアルバム楽しみにしております! 『arbre livre e.p.』キモトケイスケ 1.光をかぞえる 2.さよならクロエ 3.ミルクはいかが?? producer & mixing engineer : 高口 大輔(the Sweet Onions) mastering engineer: 上村 量 designer: いなだゆかり(PIG-D’S) 発売日:2019/09/16 ☆ディスクブルーベリーで購入可能です。 http://blue-very.com/?pid=145973970 ◆キモトケイスケ プロフィール 16歳でギターを始める。 古今東西のロック・ポップスを聴くようになり、独学で作詞・作曲・アレンジを学ぶ。 2016年頃より宅録で楽曲制作を始め、2019年 the Sweet Onionsの高口大輔のプロデュースにより、自身初の3曲入り音源「arbre livre e.p.」をリリース。 キモトケイスケ Twitter https://twitter.com/kimotokeisuke SoundCloud https://soundcloud.com/kmt0923 ♪最新Live情報 ★2019/9/16(月祝) 『Guitar Pop Restaurant vol.45』 開場:渋谷HOME [LIVE] ・umbrella march ・キモトケイスケ ・小林しの ・the Caraway ・red go-cart [DJ] ・tarai (Happy Day,Happy Time!) 詳細、予約は下記アドレスから https://gprofficial.net/live45.html |