2016年にリリースの1stアルバム『Looking for a key』が好評を博し、その後はギターポップイベントを中心にライブも盛んに行って長年のファンを喜ばせている小林しのさんが、2018年秋に7inch『Havfruen nat』を発表した。 美しい楽曲「人魚の夜」、そしてしのさんのファンにお馴染みの人気曲「雪虫」のニューバージョン。珠玉の2曲ともササキアツシさん(ポプリ、ex.melting holidays)が編曲やサウンドプロデュースを行い、しのさんの音世界を盛り上げている。今回は、小林しのさんとササキアツシさんに、この7inchについてのお話をお伺いした。また前回同様、ジャケットのイラストを手掛けている、かみたゆうこさんのイラストを随所に使わせて頂いた。(2019年1月)
<小林しの インタビュー> <ササキアツシ インタビュー>
---2016年2月にアルバム『Looking for a key』を発表し、しのさんの従来のファンは大いに喜び、そして新たなファンも増えたことかと思います。その後、イベントやライブでしのさんをお見かけする機会も増えたわけですが、今回7インチで2曲を発表することになったいきさつを教えて頂けますか? 小林:ありがとうございます。またCheer Up!さんに取り上げていただけてとても嬉しいです。 ササキアツシさんが作ってくださった楽曲「人魚の夜」がとても美しかったので、それを体現したようなパッケージにしたいと考え、レコードへの憧れもあって7インチで発表することに決めました。 ---今回、ササキアツシさん(ポプリ、ex.melting holidays)が編曲やサウンドプロデュースで参加なさっています。どのようないきさつでササキさんが参加なさることになったのですか? 小林:A面「人魚の夜」はもともとササキさんが昔やられていたバンド melting holidaysの「morning star lily」という曲が原曲です。ずっと昔ですが、その曲の日本語詞を書いてほしいとササキさんに依頼されたのがきっかけです。 作詞家の磯谷佳江さんが出版なさった「my charm#9」という小冊子に付属していたコンピレーションCDに入っています。(私は「赤い目のジル」で参加しています) 「morning star lily」は英語でしたので、日本語にするなら夜をタイトルにいれようと思って、そしてメロディから人魚が浮かび上がるようなイメージを抱いていたので、アンデルセンの「人魚姫」の後半を自分なりに解釈して歌詞を書きました。 人魚姫といえば悲劇の終わりしか私は知らなかったのですが、ササキさんから原作のラストを教えていただき、「人魚姫は海に身を投げたあと、精霊になって王子様の奥様になった女性のおでこにキスをする」という場面を読んで涙しました。希望と愛が残る素敵なお話です。 その後、私もササキさんもしばらく音楽活動を休止していたので「人魚の夜」はお蔵入りになっていたのですが、去年philia recordsのイベントで、ササキさんのバンド「ポプリ」と共演する機会があり、その時にライブで歌ったところササキさんもとても喜んでくれて、聴いてくださった方の反応もとても良かったんです。 「いつか形にできたらいいですね」と話していたら、2018年の夏にササキさんからひょっこり「できました〜」と連絡がありまして。 聴いてみたらとても素敵で、すぐ出しましょう・・!となりました。 ---出来上がったササキさんのサウンドをどう感じられたか、教えて頂けますか? 小林:ササキさんはPCで音楽を作っているはずなのに、とても懐かしい感じの音に聴こえました。 美しく洗練された音の中、歪んだギターが鳴っているのが好きでした。 たくさんの音が鳴っているのにどのラインも美しくて、どうなってるんだろうとひとつずつ確かめたくて、何度もそれぞれの音を追って聴き、ギター、ベース、ピアノ・・と好きなところが増えていきました。 人魚が浮かび上がってくるような、夜の海が浮かんでくるような・・ 私は音楽理論のことはあまりわからなくて、自分が好きか苦手か、心を動かされるかどうかだけで色んなことを判断しちゃうのですが、ベースラインひとつ追っていくだけで心が動かされました。 ---しのさんからみたササキさんのお人柄など伺えますか? 小林:ササキさんはすごく優しい方です。他の人の良いところを見つけてくれて最大限に引き出そうとしてくださり、作る音楽は情緒でいっぱいで複雑なのにキャッチーでどうしてこんな風に作れるんだろうと、本当にすごい方だと思います。 ---リリースまでにどのぐらいの制作期間がかかりましたか?レコーディングの際のエピソードなど印象的なことがあったらぜひ教えて頂きたいです。 小林:歌詞を書いたのは10年以上前ですが、ササキさんから楽曲をいただいたのが2018年6月後半で、歌のレコーディングは8月の終わり〜9月のはじめ頃に行いました。 夏にThe Laundriesさんの楽曲にゲストボーカルで参加させていただいたのですが、そのボーカルがとてもよく録音できまして、(※ b-flower&The Laundriesのスプリットフレキシ、The Laundriesの「I Call Your Name」に参加しました)The Laundriesさんが使用されているスタジオ(サウンドラボオワゾ)やエンジニア(藤田敦さん)を紹介していただき、そちらでボーカル録音をしました。声に合ったマイクを選んでいただいたり、とてもやりやすかったです。 たまたま見学に来ていたphilia recordsの近藤健太郎さん、高口大輔さんがササキさんの提案でコーラスに参加してくれたのも楽しかったです。 ---B面の「雪虫」はファンの人気も高い1曲。今回white night versionとしてB面に収録した経緯は?ササキさんならではのドリーミーで楽しくなるアレンジにワクワクしました。 小林:ありがとうございます!こちらはササキさんが私の曲の中で1番好きだとおっしゃってくれていて、作りたいと仰ってくださったので大喜びでお任せしました。 既存のバージョンも私は大好きなのですが、ササキさんはまた新たな解釈で、切なさが雪の中で輝くようなドリーミーな曲に仕上がって、間奏がとても大好きです!1番のBメロでは、はササキさんのコーラスも聴きどころです。 ---アルバム『Looking for a key』でもイラストを描かれたかみたゆうこさんが、今回も素敵なジャケットを描かれていますね。 小林:かみたさんのイラスト大好きなのでとても嬉しいです。 かみたさんには曲を聴いてもらい、断片的なイメージワードを伝えて絵を描いてもらいました。 北欧の白夜のような美しい絵を見せていただいたとき、かみたさんに依頼してよかったと思いました。 ジャケットは人魚が岸辺に佇むイラスト、裏ジャケットは人魚が身を投げたあとの海の波と、まとっていたレースです。盤面やブックレットには人魚がいなくなった岸辺に雌鹿を描いてくれました。 特典CDRのほうには人魚が脱ぎ捨てたバレエシューズ、雪の森の動物たちも描いてくれました。 きゅんとするような寂しさと可愛らしさがあるかみたさんのイラストや世界観が大好きで、作品に欠かせない存在です。とても美しいイラストなので、是非手に取って眺めて頂きたいです。 ---デザインもまた前回に続き、いなだゆかりさんがご担当。いなださんはどのような方かご紹介頂けますか? 小林:いなださんはプロのデザイナーさんで色んなお仕事をされている方です。 前アルバム「Looking for a key」を出す時、依頼しようと思っていた方が難しくなってしまい、かみたさんのイラストと自分の構想は決まっていたのでイメージはありましたが、それを希望に沿って形にしてくれる方を探して途方にくれていたところ、ネットでPIGD'-Sのサイトを見つけ、音源を送ってみました。 いなださんのご主人が音楽をされているそうで、私の曲をとても気に入ってくださり、最短納期でお仕事を受けてくださいました。それ以来、色々とお仕事を依頼させていただいています。 今回の7インチのタイトル「Havfruen nat」は、いなださんとの打ち合わせ中に、タイトルはまだ決めていなくて・・と話していたら、アンデルセンの祖国であるデンマーク語にしてみるのはどうかといなださんが提案してくれて、一緒に決めました。 私は森ではなく木に固執してしまう面があり、どうしてもこうしたい・・というわがままや希望を何度も何度も受けてくださり、そしてそれ以上に素晴らしいアイディアを出してくださり、本当に神様のようです。 お人柄は、とてもやさしくてチャーミングな女性です。 ---しのさんには前回、「あなたにとってのCheer Up!ミュージックを教えて下さい」という恒例の質問で、パトラッシュさん(注:諏訪好洋さんのユニット)の「雪のひとひら」を挙げて下さいました。 最近の、しのさんのCheer Up!ミュージックを教えて頂けますか? 小林:Tamas Wellsの「Valour」という曲です。オーストラリアのシンガーソングライターさんのようです。 静かですこし物悲しく、リフレインするメロディが癖になる曲です。 元気になるような感じの曲ではないのですが、聴いていると心が落ち着くというか、、無になって悩みとか不安とか、自分も宇宙に溶けていくような、うまくいえないけどそんな気持ちになる曲で、集中して聴き終わるとなんだかすっきりしています。 「A Plea En Vendredi」というアルバムの7曲目で、apple musicでも聴くことができます。 尊敬する方にオススメいただき愛聴しています。 ---2ndアルバムを待ってるファンも多いのではないでしょうか? また、今後の展望や夢についても教えて頂けますか? 小林:今後は2ndアルバムを作るための曲を作ることが目標です。メロディだけだと9曲くらい出来ています。 楽器も下手だし、音楽理論もわからないし、上手い方に自分の意見を伝えるのはおこがましいのでは・・と悩むこともありましたが、自分のイメージややりたいこと、好きなことを心に従ってやってみようと思っています。 サポートしてくださる皆さんのおかげで今まで楽しくライブ活動ができていたので、今後も一緒に楽しくやってくださる方、感性が近い方、この方の演奏が好きだと思うミュージシャンの方に協力をお願いすることになると思うのですが、自分の好きという気持ちを信じて、今はまだ自分の中でしか鳴っていない音を形にしていけたらいいなと思っています。 レコードの特典CD‐Rにはパトラッシュの諏訪君と一緒に作ったHarmony hatch(自分の前身バンド)のセルフカバーも収録されています。 本編とともに、ぜひたくさん聴いていただけたら嬉しいです。 ---どうもありがとうございました。2ndアルバムや、しのさんの新しい挑戦を楽しみにしております。 「Havfruen nat」小林しの A面 人魚の夜 B面 雪虫(White night version) A面「人魚の夜」 作詞 小林しの 作曲 ササキアツシ 編曲 ササキアツシ Vocal,Chorus 小林しの Programing,Bass,Electric Guitar(Backing) ササキアツシ Electric Guitar(Leading) タサカキミアキ Chorus 近藤健太郎 B面「雪虫(white night version)」 作詞 小林しの 作曲 小林しの 編曲 ササキアツシ Vocal,Chorus 小林しの Programing,Bass,Electric Guitar,Chorus ササキアツシ Chorus 高口大輔 STAFF Sound Producer ササキアツシ Mixing Engineer 藤田敦(サウンド・ラボ・オワゾ) Mastering Engineer上村量 Illustrator かみたゆうこ Designer いなだゆかり(PIG-D'S) Label Procucer 近藤健太郎(philia records) ◆小林しのプロフィール 1999-2002年 Harmony hatch というバンドで作詞、作曲とボーカルを担当。 2000年、coa records より 「ケーキケーキケーキ」「苺苺苺苺」の2枚のアルバムをリリース。 2002年からソロ活動を始め、コンピレーションアルバムに多数参加。 2010年から活動休止していたが、2016年2月、14曲入りフルアルバム 「Looking for a key」を発売。 その後はライブ活動を中心に音楽に携わっています。2018年10月、The Laundries「I Call Your Name」という曲にゲストボーカル参加しました。 小林しの Official Web http://kobayashi-shino.com/ 小林しのブログ「小さな夜のつづき」 http://kobayashi-shino.com/blog 小林しの Twitter https://twitter.com/shinopotitan SoundCloud https://soundcloud.com/shino-kobayashi philia records Official Site http://www.philiarecords.com ♪最新Live情報 ★2019年1月20日(日) [Add Some Music To Your Day Vol.20] 場所:代々木Zher the Zoo 開場開演/17:30 前売3,000円 当日3,500円 スウィンギング・ポプシクル 小林しの POLTA ザ・ペンフレンドクラブ DJ:aco <Cheer Up!関連リンク> 小林しの『Looking for a key』インタビュー(2016年) http://www.cheerup777.com/shino1.html |