シンガーの大野方栄(おおのまさえ)さんが、8枚目のアルバム『ちゃぱら』をリリースした。 デビュー40周年、再始動5周年の記念のアルバムだ。 大野さんといえばおなじみの、既存の楽曲に独自の歌詞をつけての歌はもちろん、今回は高田信さんとのタッグによる曲も増えて、ますますバラエティに富み聴き応えあるアルバムとなっている。 このアルバムに込める想い、各楽曲にまつわるエピソードを今回も大野さんに語って頂いた。 また、今回は『Pandora』以来、大野さんの作品に参加されている高田信さんにも主に作曲やサウンド面についてインタビューさせて頂いた。 そしてこれまでの8枚のアルバムのディスコグラフィーをご紹介させて頂くと共に、それぞれのアルバムにまつわるエピソードや大野さんの想いをご披露頂いたので、お読み頂きながら以前のアルバムも聴き返して頂ければいいなあと思う。(2017年4月)
<大野方栄インタビュー> <高田信インタビュー> <ディスコグラフィー>
♪大野方栄インタビュー ---今回のアルバムもまたバラエティに富んでいて、ますます聴きごたえのある内容に驚きました。 制作にはどのぐらいかかりましたか? 大野:制作時間は一ヶ月くらいだと思います。 いつもの事ですが、外国曲の許諾がおりるのに異常に待たされて時間がかかりました。 ---ジャケット写真は千手観音!?可愛らしくユーモアもインパクトもありますね。 ご自身のアイディアですか? 大野:今回はジャケ写にも力を入れました。不謹慎というか罰当たり者ですが千手観音のコスプレです。 私の不真面目なアイディアです(笑)。 ---アルバムタイトルの「ちゃぱら」について、ユニークな言葉ですが、どういう意味なのでしょう。 大野:人気ブロガーである『カータン』さんのお嬢様のお話から、今回のアルバムのタイトルを閃きました。 意味はないのですが 言葉の響きがとっても気に入りました。 ---ここからは一曲ずつお伺いします。 1.ダイアモンドの夢 ---ゴージャスなビッグバンドサウンドで、アルバム全体への期待が膨らむような曲ですね。 曲順を決めるのには時間がかかるほうですか? 大野:こういうタイプの曲はビッグバンドサウンドにするのが一番ゴージャスだと思います。 曲順を決めるのにいつも全然時間はかかりません。即決即断タイプの私です。 ---大野さんらしいユーモアに満ちた歌詞。男を手玉にとるなんて、大野さんご自身の本音も入っているのでしょうか? 大野:一度でいいから、熟女でぶ専門の大富豪の男心を手玉に取ってみたいです(大爆笑)。 2.あらしのよるに ---原曲はブラジルのギタリスト・ボーカリスト、シコ・ピニェイロの「Um Filme」。 ミカ・モリさんのピアノと大野さんの歌唱で、かなり難しそうな曲ですね。 シリアスな歌詞ですが、これは、原曲を聴いて思い浮かんだのでしょうか。 大野:アルバムの中で、この曲が一番難しかったです。 原曲を初めて聴いた時に、雪山で遭難して死んだまま発見されない人達の絵が頭に浮かびました。 そういう人達の彷徨える魂の歌が書きたくなりました。 3. 美しい女性 ---MPBシーンのダニ・グルジェル、タチアナ・ハーパ共作の「そして(Depois)」が原曲。 ブラジル音楽は大野さんにとって特別なものと以前のインタビューでも伺っております。 今回はホーンセクションのゲストも多く豪華ですが、ご自身の人選ですか? 大野:ピアノのミカ(森美佳)ちゃんは 彼女のビッグバンドを持っています。 ですからホーンセクションのメンバーは、彼女のビッグバンドのメンバーなのです。 4. Happy -go- round-journey ---原曲はダニ・グルジェル「デ・カーサ(De Casa)」。旅をテーマにした軽やかな曲。 大野さんはフットワーク軽くあちこちへ旅に行かれるそうですが、特に思い出深い国はどちらですか? 大野:一番好きなのは食事の美味しい香港です。それも30年以上前の昔の、ごみごみとした汚い香港が大好きです。 昔知り合った香港人のお友達と今でも交流があるのですが、香港人達の国民性が好きです。 去年の1月にホーチミンに一人旅をした際に、旅行中この曲が頭の中で繰り返しずっと鳴っていました。 ですからこの曲を新譜に収録する事が出来て夢の様に嬉しいです。 5.やま ---原曲はブラジルの歌姫エリス・レジーナの「帆かけ舟の競争」。ヤッホー!の箇所がとてもキュート。 今回、山にまつわる曲が2曲ありますが、大野さんも登山なさるのですか? それとも人生を山にたとえているのかな?と想像が膨らみました。そのあたりはいかがでしょう? 大野:登山はやった事がありませんし、一生やらないと思います。だって疲れるし(大爆笑)。 今回は、たまたま山にまつわる歌詞が出来てしまいました。 人生を山に例えている部分もありますね。 6. 幸せのパリ ---夢見心地になれるような美しい曲ですね。生楽器と打ち込みのバランスが絶妙。 『Pandora』以来、大野さんの作品に欠かせない存在となった高田信さんの音作りが素晴らしいです。 高田さんの曲が先で、大野さんが詞を考えているのですか? 大野:この曲は私の歌詞が先でした。イメージ通りの素晴らしい曲を高田さんにお作り頂きました。 高田さんの建築家らしい頭脳のアレンジ能力も、打ち込み能力も、本当に素晴らしいと思います。 7. SA・MI・DA・RE ---高田信さん作詞作曲の美しい曲。打ち込みもとても凝っていて、切ない物語が鮮やかに浮かんできます。 今回高田さん作曲の作品が多いですが、大野さんにとっての高田さん作品とは? 大野:高田さんは非常に能力の高いかたで、またメロディアスな曲を書かれるかたでもあり、私の出す無理難題にいつもお応えくださる有り難いかたです。 今回歌った外国曲もどれも物凄く素晴らしい曲ばかりですが、高田さんの曲もそれに負けず劣らず素晴らしい作品ばかりで、彼は素晴らしいメロディーメーカーだと思います。 彼の作品なくして、私は有り得ないと思います。 8. パラダイス ---ショーロの名曲「カリオカの夜」が原曲とのことで、大野さんの選曲のジャンルの幅広さにも驚かされます。 ショーロはよく聴かれるのですか? そして、無人島に残された男女のストーリーというのがユニークで!この曲を聴いているうちに思い浮かんだ発想なのでしょうか? 大野:この歌詞は何十年も前に書いたものです。当時はショーロもよく聴きました。 原曲を聴いた時に、無人島に残された男女のストーリーが直ぐに頭に浮かびました。 古い曲ですが、素晴らしい曲だと思います。 そして高田さんのプログラミングも最高に素晴らしいと思います。 9. 馬鹿になる私 ---ジュリー・ロンドンの「Cry Me a River」が原曲。復縁を願う恋人に「川のように泣くといい 自分だって沢山の涙を流してきた」と伝えるスタンダードナンバー。 この曲は大野さんのアルバムのご常連、菊地康正さんのアレンジですが、録音は1996年なのですね。 今回年月を経てこの曲をアルバムに収録した経緯を教えて頂けますか? 大野:本来、私は出来れば明るくてハッピーな歌ばかりを歌いたいと思っているのです。 でも今回のアルバム全体のバランスを考えた時に、こういう楽器編成で、こういう世界観の楽曲を入れるとアルバムがバラエティーに富んだ感じになると思ったので収録しました。 古さを全く感じさせない菊地さんのアレンジと演奏は非常に美しくて大好きです。 元々この演奏はサックスソロの為のテイクだったのですが、私のキーに合ったので日本語の歌詞を書いて歌を重ねてみました。 10. 摩天楼のヒロイン ---高田信さん作曲。前の曲がシリアスなので、軽やかなこの曲でホッとします。 大野さんのアルバムには、女性を応援するような曲が入っているのがいつもいいなあと思います。 例えばアルバム『Pandora』に収録の「Joyful Life」のように。 大野:私は、『きっと出来る!大丈夫!』と自分自身に言い聞かせる為に歌っている気持ちもあります。 アハハハ、たまたま昨日久し振りに「Joyful Life」を聴きました。結局私は、自分が聴きたいアルバムを作っているっていう事だと思います(笑)。 11. ふたりのハピネス ---ジョイスの「See You in Rio」が原曲。 大野さんのアルバムのご常連、中村隆志さんのギターの心地良さ、そしてこのアルバムの多くの曲でベースを弾いている川村竜さんの口笛が美しいですね。川村さんはどんな方なのですか? 大野:川村さんは ドラムの吉川昭仁さんの御推薦でお願いしたのですが、あらゆる音楽に対する造詣の深いかたで、また非常にグレートな演奏家です。 お身体もとても大きいかたなのですが、ウッドベースと身体が一体になって、身体全体が楽器の様に鳴っているタイプの、ダイナミックでとても繊細なベーシストです。 12. Kiss ---ブラジル音楽で知られる小林治郎さん作曲なのですね。 この曲は90年代に作曲されたものだとか。今回この曲を取り上げた経緯は? ドラムンベース風レゲエというか、遊び心あるアレンジにのって歌う大野さんの歌は切なく初々しくて、そして色っぽくて。やはり大野さんには恋の歌が似合いますね! 大野:シンプルな曲なのですが、昔からこの曲は、ちゃんと録音したいと思っていました。 レゲエのリズムだけど、途中でバッハになったりするアレンジは、流石!高田さん!ですよねぇ。 13. 突然のプロポーズ ---高田信さん作曲。ハッピーエンドな曲。アルバムの1曲目とマッチして心地良く曲が終わり、とても満足感のある内容。 いつも大野さんのアルバムは満足感がありますが、このアルバムは特にズッシリきます。 この曲を終わりにもってきた理由など教えて頂けますか? 大野:アルバムの最初と最後は、重厚な感じの管が入った曲を配置したいと思いました。 ---デビュー40周年、再始動5周年。いま、どのようなお気持ちか教えていただけますか。 また、次回作についてはいかがお考えでしょう? 大野:去年二人目の孫も生まれて、来年私も60歳になります。 年齢に相応しい精神的な成熟とおだやかな老後に向かって、これからは静かに生活をしようと思っています。 今後の事は全く考えていません(笑)。 ---大野さんの最近のCheer Up!ミュージックを教えて下さい。 Eliane Elias/An Up Dawn ---どうもありがとうございました。 この素晴らしいアルバム『ちゃぱら』、ぜひ多くの方にお聴き頂きたいです。 『ちゃぱら』大野方栄 01. ダイアモンドの夢 02. あらしのよるに 03. 美しい女性 04. Happy -go- round-journey 05. やま 06. 幸せのパリ 07. SA・MI・DA・RE 08. パラダイス 09. 馬鹿になる私 10. 摩天楼のヒロイン 11. ふたりのハピネス 12. Kiss 13. 突然のプロポーズ レーベル:HOUEI MUSIC 品番:HOUEI008 発売日:2017/4/15 参加メンバー 森美佳(Piano,Electric Piano,Synthesizer) 高田信(Programming) 中村隆志(Guitar) 川村竜(Contrabass,Whistle) 吉川昭仁(Drums,Percussion) 八巻綾一(Alto Saxophone) 大内満春(Tenor Saxophone) 長野次郎(Balitone Saxophone) 佐野聡(Trombone,Flute) 田中哲也(Trumpet) 大野方栄(Vocal,Percussion,Back Vocal) on track9. "馬鹿になる私" 参加メンバー 菊地康正(Arrangement,Saxophone,Flute) 小野江一郎(Drums) 西直樹(Piano) 高橋ゲタオ(Bass) 沢田一範(Alto Saxophone,Clarinet) 多田誠司(Soprano Saxophone,Alto Saxophone) 葛篭あつし(Bass Clarinet,Balitone Saxophone) 大野方栄(Vocal) ◆プロフィール:
大野方栄(おおのまさえ) どしゅこいの大嘘吐き日記 http://ameblo.jp/dosyukoi/ https://twitter.com/MasaeOhno 「ちゃぱら」サイト(Bridge INC) http://bridge-inc.net/?pid=114535999 <Cheer Up!関連リンク> アルバム『SEVEN』インタビュー http://www.cheerup777.com/oono_seven.html アルバム『Pandora』インタビュー http://www.cheerup777.com/pandora.html 特集 大野方栄 http://www.cheerup777.com/masae.html |