<Japanese>  <English>  <『ファニータ』インタビュー>


本インタビューは2009年発行の雑誌版「Cheer Up! Vol.1」に収録されたものである。
日本ではRoman Andrénのインタビュー記事が少ないため、今回再掲させて頂いた。
Romanが日本で知られるようになった名盤『ファニータ』について、また生い立ちについてもたっぷり語ってくれた貴重なインタビューだ。
今回残念ながら連絡がつかなったが、当時、取材と翻訳に協力して下さったSさんご夫妻に心よりお礼を申し上げたい。


(当時の前置き文章)
2008年初頭、インパクトある髭ジャケ『ファニータ』に心ひかれ、試聴するなり驚いた。
美しいメロディー、新鮮でありながらもどこか懐かしいサウンド。
フェンダー・ローズの音色がデオダートを思わせ、70年代に想いを馳せた方も多いことだろう。
後に、Roman Andrén氏とメールのやりとりをするにつれ、この『ファニータ』が完成までに3年を要したこと、求めるサウンドを得るためにアナログテープレコーダーを通してみたり、ヴィブラフォンの中にマイクを置くなど試行錯誤を繰り返したこと等が明らかになった。
音楽への飽くなき熱い想いが常に燃えたぎっているようなRoman氏。来日を望むファンも日々増えている。そんな彼に、生い立ちからミュージシャン仲間、将来の展望まで語ってもらった。(2009年5月)



---あなたの人生を変えた10枚を教えてください。



Roman:お安いご用さ!

01 Prelude - Eumir Deodato
02 White Gold - Barry White
03 I Want You - Marvin Gaye
04 One - Bob James
05 Rain Forest - Walter Wanderlay
06 The Dude - Quincy Jones
07 Espiritu Sin Nombre - Manzanita
08 Latin For Dancers - Cal Tjader
09 Symphonie No.9 "To the New World" - Antonin Dvorak
10 Empire Strikes Back - John Williams



---あなたの最大のアイドルは?デオダートとクインシー以外のリスペクトする人を教えてください。
あなたのご友人"Emmet"さんは、どんな方なんですか?彼のすごいところを教えてください。



Roman:Emett NorthはLAのギタリスト。Barry WhiteとIsaac Hayesのバックで、70〜80年代にかけて活躍していたんだ。彼はBarry Whiteのたくさんのアルバムの中で、ワウギターの曲をすべて担当していた人。

彼がスウェーデンにツアーで来たとき、私は偶然にも彼のバックを務めることになった。
そのままEmmetと友達になって、リビングのシンプルな録音設備で、"Juanita"のために彼のギターを録音したんだ。
チャンスだったんだ、そんなすごい人と会える機会なんて、中々ないだろ?
僕の中の未完成のグルーヴと曲のイメージを、形にしてもらって録音したんだ。
次のアルバム"Solar Ride"の中でも、彼に何曲か参加してもらうつもり。

他のミュージシャンでぼくがリスペクトしているのは、バンド内の人たち・・・
Elias Kallvik, Zoltan Csorsz Jr, Johnny Aman, Joselo Orellana, Mats Nordenborg, Sussie Ottebring, Sara Sellen, Rickard Lindgren。そしてもちろん、Miriam AidaとFredrik Kronkvist、彼らは最新アルバム"Juanita & Beyond - Live Studio Sessions"に参加してもらった。

憧れてるミュージシャンはたくさんいるけど、いかんせん多すぎてね。
あえて挙げるとすれば、"Juanita"にも参加してもらってるLars Erstrandという、75歳の伝説的Vibeプレイヤー。彼は Lionel Hamptonをはじめとして、たくさんのすばらしいセッションを行っている。



---今日のスウェーデンのミュージックシーンについて、どうお考えですか?
お勧めのアーティストはいますか?



Roman:オウ!ボーイ、そいつは難しい質問だ。
まずそもそも、僕はスウェーデンのミュージックシーンについてよく知らないんだ。
僕が興味あるのは、60年代から70年代にかけてのブラックミュージック−ジャズ、ファンク、ソウル、あるいはブラジルとアフリカの音楽なんだ。だから僕はイマドキ知らずなのさ。
そうは言いつつも、スウェーデンのミュージシャンでTimbukto, Koop, Kleerup と Damnはお気に入りだよ。



---あなたの音楽仲間について、推薦の言葉をいただけますか?
たとえば、ミリアム・アイーダや他の「クラブ系」ミュージシャンなど。



Roman:Miriam Aidaを初めて呼んできたのは、"Juanita"の製作準備をしてた頃のことだった。
試しに一曲歌ってもらったのは、"Bumblebee"。
彼女はいつも僕の好きなヴォーカリストのひとりだった。
そもそもこの曲をレコーディングする前に、僕は彼女の声で歌を思い浮かべたくらいだよ。残念なことに、Miriamはその頃忙しすぎてそれは叶わなかったんだ。そこでSusanne Ottebring と Sara Sellenの二人に歌ってもらった。
レコーディングしてみて、「Ray Coniffばりじゃん!」って出来に満足したよ。

でもMiriam Aidaのことを調べた頃、僕は"ajabu"というレーベルに行ってみたんだ。そこで録ってある素材を"ajabu"に送って、南スウェーデンのマルメに移った。そして"ajabu"で制作することになって、僕はそののちMiriamに会えたんだ。
ライブアルバム(注:"Juanita and Beyond")のために彼女をもう一度呼んだら、なんと彼女すごく喜んでくれたよ!物事の運びって、面白いもんだよね。



---ロマンさんはDJするとき、どんな曲をかけてますか?


Roman:DJするときかけるのは、聴くのが好きなものだよ。
まずDJがいい気分でかけたら、みんなやっぱり聴いたり踊ったりするものだと僕は思う。
僕にとってDJは楽しむための行為であって、自分で感じて行動に出るもの。

もしヒット曲、例えば「ABBAかけて」とか「テクノを」とか強いられたら、もううわの空だね(笑)。
音楽への情熱なんか奪われてしまうよ・・・。
僕は主に60's、70'sと80'sのソウル/ファンク/ジャズ/ブラジリアンをかける。それが最高!!



---あなたの子供時代について聞かせてください。どんな少年が今のロマン・アンドレンに成長したのか、すごく知りたいです。自由に語ってください。
スカンジナヴィアっていうと「メタル天国」(おわっ!)ってイメージがどうしてもあるんですが、子供のころは好きだったりしたんですか?




Roman:も〜メタルなんて通ってないよ!!
僕は幸運にも、父親が60年代にシカゴに住んで働いていて、(彼は休日にトランペット・プレイヤーをしていた。僕のレコーディングには全て参加してもらっている)僕が生まれる前に父の持ち帰ったLPを、僕は聴いて育ったってわけさ。
チビの頃はおとなしかったり、時にはクラスのお調子者だったり。
でも、たいていのことは頭の中で動かしていた。いつでも何か想像したり、白昼夢を絵に描いたり、音楽を聴いたりしていたんだ。
僕の最初の夢は、指揮者になることだった。スター・ウォーズのサウンドトラックを聴きながら、指揮者ごっこをしていた。ホーンとストリングスのパートを完璧におさえたとき、何時間も経ってたのを覚えてるよ。

5歳くらいのとき、母親の友達に「将来何になりたいの?」って聞かれて「サミー・デイヴィス・ジュニア!!」って答えたらしいんだ。ハッハッ、そう、そのくらいのめり込んでたんだ。
大きくなると、ピアノを始めて、これで耳(音感)をつくったんだ。でもこれは悪いことでもあった。
弾いたものは何でも覚えてしまうから、それで音楽をわかった気になってしまったんだ・・・。
今でも楽曲に必要なパーツは読めない。レコーディングのときは、まず仲間にあわせて歌ってみる。
最初に音楽を習ったのは、クラシックだった。先生は遊びに行かせてくれないくらい練習させたんだ。泣きながら、絵を描くか何かしたがってたのを覚えてるよ。でも、両親は僕にレッスンを続けさせたんだ。
13歳のころに、違う先生のレッスンを受けることにした。
人生とは皮肉なもので、両親がレッスンを続けさせてくれたことに感謝しているよ。
ウプサラの学校に行くために引っ越して、それからファンクとジャズの演奏を始めた。
そこからはノン・ストップさ!!



---今後のリリース予定を教えて下さい。それから、今後どんなことをやっていきたいですか?


Roman:父親のレコード棚ごとカヴァーしていきたいんだ!それが本当にやってみたいこと。
ファーストアルバム"Ambessa's Dream"(2004年、Blue Beat Productions)はジャズファンク、フリー・ジャズとソウルにとても影響を受けている。
セカンドの"Juanita"(2007年、ajabu)は、よりブラジル音楽、ボサ・ノヴァ、ラテン・ジャズの影響が濃い。
サード"Juanita and Beyond"(2008年、ajabu)はファンク色を強めた。
次回アルバム、仮題 "Color Green"は更にファンク色と同じくらいにブラジリアンとラテンのグルーヴで満たしていくよ。
いまフル・レングスの "Color Green"プロジェクトが卓にあるんだけど、80年代初期のファンク・ディスコヴァイブスっぽい出来になっている。

将来は、フリー・ジャズとクラシックをやりたいね。まあまだ夢なんだけど。
何しろ創作好きだから、ずっと音楽をやっていくよ。でも悲しいかな完璧主義者でね、今までもずっと、そしてこれからも勉強中だと思うな〜。
ライブ・アルバムがあと2か月で出るんだ。レコーディングとミキシングをしているところ。
いよいよだ!!"Juanita"から3年かかってる・・・。(注:"Juanita"の録音は2006年)
"Color Green" は2009年秋か2010年春、"Solar Ride"は2009年秋に予定してます。








『Juanita』 Roman Andrén

1. Let's Live Forever, Love
2. Bumblebee
3. Juanita
4. O Sapo - The Frog
5. It's Nice
6. Long Ago And Far, Far Away
7. Til Another Day
8. If Tomorrow Will Come (I Don't Know)
9. O Mundo e Seu - The World Is Yours
10. You Never Told Me
11. Vasto Como O Ceu - Vast As The Sky
12. Vento Do Verao - Summer Breeze
13. Love Has A Name


規格番号:PCD-93064
レーベル: Ajabu!/Mconnexion
発売日:2008年1月9日






『Juanita And Beyond - Live Studio Sessions』 Roman Andrén

1. Let's Live Forever, Love
2. Bumblebee - featuring Miriam Aida
3. Nawana
4. Felaflight - featuring Fredrik Kronkvist
5. Long Ago and Far, Far Away - featuring Miriam Aida
6. Juanita
7. If Tomorrow Will Come - featuring Miriam Aida
8. O Mundo e Seu - featuring Fredrik Kronkvist
9. It's Nice
10. Vasto Como o Ceu - featuring Fredrik Kronkvist
11. You Can Do It
12. Long Ago and Far, Far Away (Alternative take) - featuring Miriam Aida *bonus


規格番号:PCD-93169
レーベル: Ajabu!
発売日:2008年8月22日




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