---このアルバムのトータルサウンドプロデュースを依頼された時、どのように感じられましたか? 経緯やエピソードなど教えて下さい。 高口:元々小林しのちゃんとはHarmony Hatch時代にドラムサポートをしたりしていたので90年代終盤くらいからよく知った間柄で、しのちゃんがソロになってアルバムを作りはじめた時に、自分もthe Sweet Onionsでアレンジを積極的にやるようになっていた時期でした。 なので、なりゆきでというか自然と、自分が色んな曲を手がけるようになりましたね。 自分のバンド以外の音を作っていく新鮮な楽しみもありましたし。 ---14曲とたっぷりの聴きごたえ、沢山のミュージシャンも参加している豪華なアルバムだと思います。 曲順や選曲については、しのさんと二人で決められたのでしょうか? 高口:曲順や選曲については、完全にしのちゃんにお任せしてます。 ただ、作っていっている中で、「雨をひとさじ」は一曲目だよねってのは共通認識としてありました。 ---ここからは高口さんが編曲や演奏を手掛けられた曲についてピックアップしてお伺いします。 1. 雨をひとさじ ---キラキラしたサウンド、切ない歌を盛り上げる素敵なアレンジですね。 どんなイメージでアレンジされましたか? 高口:最初は、Bメロのベースラインのように、ビートルズチックな感じに仕上げようと思って作っていました。 ところがやっていくうちにあれもこれも入れたくなってきて、最終的に収拾がつかなくなってきて、「どこかの街のお祭りでアコーディオン主軸の小編成でパレードしてたら、色んな人が勝手に寄ってきてみんなで好き勝手に歌って弾いて楽しんでるうちに雨が降ってきちゃった!」みたいなコンセプトに変わりました(笑)。 2番のAメロに入っているとぼけたホーンの音なんかが、そんなイメージです。 それから、歌詞にある「ああ今日も街に生きる喜びを」っていうフレーズがすごく印象に残っていて、生きる喜びかあ・・・って考えてたら「raindrops on the street〜」っていうコーラスが自然と浮かんできて、最後の方で追加しました。 あとは、しのちゃんが持ってきたデモテープのコード進行がかなり独特で、これは整合性を取るような方向にした方がいいのか迷ったんですが、基本的には何も変えずにアレンジしていきました。 2. 解放区 ---ギターポップらしい疾走感のあるアレンジが心地いいですね! ベースラインがとてもかっこいいのですが、高口さんが弾いていらっしゃるんですよね。マルチぶりに驚かされます。 高口:この曲は、たしか全パートを弾きました。いわゆるアイドルソングみたいなテイストにしたくて、可愛らしい音色、可愛らしいフレーズをちりばめることを意識してます。 ただ、ベースだけはちょっとゴリつかせたり、ちょっと悲しげな和音を絡めたりして、ただの明るいポップソングにはしまい、という気持ちがありました。 5. 夏の踊り子 ---凝ったサウンド/アレンジですね。 どんなイメージなのでしょう。 エンディングに「展覧会の絵」がオルガンで演奏されるのがものすごいインパクトでした。 高口:この曲は、しのちゃんの頭の中にイメージがあって、各パートの演奏者たちがこんな感じ?としのちゃんとディスカッションしながら作っていった感じです。 しのちゃん独特のセンスが光ってる曲だと思います。 「展覧会の絵」を最後に入れたのは、自分のアイデアです。 なんとなく、西洋のおどろおどろしさみたいなものを曲から感じたので、あ、「展覧会の絵」を入れたらかっこいいかも!という思いつきですね。 しかも左手のベース音をちょっとずらして不協和音にして、余計に不気味さを出してみました。 8. 銀曜日にみた夢は ---しのさんのコーラスワークがとても美しいですが、コーラスも高口さんのアレンジですか? また、エンディングのシンセによって曲のイメージがふくらみますね。 高口:今気づきましたけど、エンディングに何かを付け足すのが、自分はどうも好きみたいです。 コーラスワークについては、この曲に関してはしのちゃんがほとんど考えてます。 あと、間奏のコード進行が曲の主題とは全然関係ない進行で進んでいくんですけど、これはちょっとした自分の中での実験で、脈絡なく転がっていった調が、歌になってギリギリ間に合った感じで戻ってくる、ってのをやりたくて、あんな感じにしました。 11.帰れない鳥 ---この曲ではギターアレンジはadvantage Lucyにいらした福村貴行さん(2003年逝去)の名前がクレジットされています。福村さんのアレンジをそのままfattsさんが再現なさったのでしょうか。 高口:福村君はHarmony Hatchのギターサポートを一時期やってくれていて、たしかハッチ時代にこの曲を演奏していた縁じゃなかったかな?この音源では、fattsさん節がかなり前面に出ていますね。 自分がドラムを叩いているんですが、録音したのがかなり前なので、ドラム自体も若くて、勢いだけで乗り切った記憶があります。 12.雪虫 ---高口さんがメンバーのバンドthe Sweet Onionsと、しのさんの共演なんですね。 the Sweet Onionsについては、別特集で近日中に詳しくお伺いする予定です。 高口:この曲については、近藤、畠中、高口のオニオンズの三人が作っていった感じです。 出来た当初は正直あまりピンと来てなかったんですけど、月日が経ってから聴くととても味わい深くて、じっくり聴けるいい作品だなと思います。 自分はドラムと、ピアノ・シンセ系の細かいところと、間奏のコーラス等をアレンジしました。 この曲は唯一、ひねりを入れずストレートに音を重ねていったという印象です。 14.記憶のプリズム ---シンプルでノスタルジックなアレンジが、しのさんのアルバムの締めくくりにぴったりと感じました。 アルバムタイトルの「Looking for a key」の意味が自ずと分かってくるようなこの歌を最初に聴いた時の高口さんのお気持ちは? また、高口さんにとってこのアルバム「Looking for a key」はどんな存在でしょうか。 高口:「雨をひとさじ」に始まり、相当情報量の多い曲が続いてくるので、最後は極限まで音を減らしたいなと思って、この音作りになりました。 アレンジしたのも制作過程の終盤で、引き算の美学を覚えだした頃だったような。 これは作曲が近藤さんなんですけど、曲のかもし出すオーラが、ああアルバムを総括するにふさわしいなと感じましたね。 出来上がって通して聴くと、最後にほんのちょっと物足りない感じが、また最初に戻って聴きたくなるようなアルバムになってくれるといいなと思います。 ---今回、このアルバムのサウンドプロデュースをするにあたり、どんな難しさや面白さがありましたか? 高口:ちょこちょこと他のアーティストさんの作品に参加したことはありましたが、ここまでひとつの作品にしっかりと向き合ったのは初めてだったので、最初は「本当にこんなのでいいの?」という迷いがありました。 オニオンズで近藤さんが作ってくる曲としのちゃんの作ってくる曲は、向かってる先が全然違うなという風にも感じましたし。 しのちゃんは、どちらかというと、自分の心の奥底に向かって弓を放っていくようなところがあるので、そのスピードというか鋭さに負けないような音作りをしなきゃいけないなというのが頭にずっとあって、クラシックピアノ出身の自分なんかは、えてして整合性のある世界に戻ってしまいそうになるんですけど、そこを踏みとどまって一緒になって鋭さを追求するような作り方をしてたな、と今になると思います。 ---どうもありがとうございました。 別特集では高口さんの音楽キャリアやthe Sweet Onionsについて詳しくお伺いする予定です。読者の方々にも楽しみにお待ち頂ければ!と思っております。 高口大輔プロフィール the Sweet Onionsのメンバー。ドラム、キーボード、編曲などを担当。 幼少期からピアノを始め、その後ロックやポップスに目覚めてからは、さまざまな楽器を弾くようになる。 サポートミュージシャンとしても、現在the Carawayを初めとしてインディギターポップ界で多数の共演を行う。 2016/2/7(日)に下北沢THREEで行われるGuitar Pop Restaurant Vol.30に、the Sweet Onioons、snow sheepのメンバーとして、また小林しののサポートメンバーとして出演予定。 philia records Official Site http://www.philiarecords.com Guitar Pop Restaurant vol.30 〜小林しの「Looking for a key」Release Party〜 2016年2月7日(日) OPEN 11:20/START 11:40 会場:下北沢THREE 料金:adv. ¥2,200 / door. ¥2,700 (+ 1drink) LIVE:小林しの / the Caraway / the Sweet Onions / ポプリ / snow sheep (opening act、acoustic set) DJ:磯谷佳江 (My Charm) SWEETS:milky pop. http://gprofficial.net/live30.html ※2/7 リリースパーティの前売り予約特典としてsnow sheep とハーモニーハッチのカセットテープ音源CD-Rをプレゼント。 ※当日はアルバムを特別価格1000円(税込)で先行発売。どちらも当日のみの特典となります。予約は上記Guitar Pop Restaurantのサイトよりお願い致します。 |